読む
きょうは日曜日。
朝起きて、するべきことをして、するべきことをして……、そうなのだ、何となく手順わるく動きまわって、ここ、わが机にやっとのことでたどり着いた。
熱いさんぴん茶を飲みながら、考えてみている。
きょうの朝の時間、手順もわるく忙(せわ)しなかったが、おもしろかった。どうおもしろかったのか、みずからの行動を読み返そうというわけだ。朝起きたところから、ゆっくりゆっくり読んでゆく。朝からこれまでの2時間半の自分など捨て置いて、とっとと先に進むがいい、という見方もある。が、捨て置いてばかりいる自分を、たまには読んでみたくなったのだ。
朝起きたときには、何となく疲れていた。
眠りが足りなかったかというとそんなことはないが、おかしな夢を見た。
何かの会議に連なっているが、いっこうにはなしが進まず、会議は終わる気配さえない。わたしは、誰かが発言するたびに、「ああ、またそんなこと云いだして……!(これでは、意見を集約できない)」と焦っている。会議のあとには、つぎの用事も待っているらしく、わたしはそわそわし、絶望しかかっている。大袈裟なようだけれども、夢のなかの自分は、絶望しか道が残されていないような深刻さを抱えている。
つぎの場面で登場したのは、虫だ(虫の出てくる夢は、ときどき見る)。黄色い太った蛾(が)のようなのがいて、わたしは手もとでそれと闘っている。わたしが長細い棒でつつくと黄色い蛾はいなくなるが、またすぐ別のが出てくる。わたしは怖じ気づいており、動作もにぶって、気がつくと黄色い蛾はふえている……。
こんな夢を見たおかげで、寝覚めはよくなかった。
「日曜日です」とわたしは口に出して云い、えいっと起き上がって、つま先立ちで階下へ。裸足のまま、何も履かずにオイルヒーターのスイッチを入れ、灯油ストーブを点ける。オイルヒーターのやわらかい熱が居間のなかに伝わるまで、灯油ストーブに働いてもらう。本物の火のそばでちゃっちゃつと着替えをする。「こころを寄せる場所」と呼んでいるコーナーの水を換え、灯明に火を灯す。線香も供える。猫のいちごのコーナー(一昨年逝った黒猫)の水も換える。
湯を沸かす。洗濯機に洗濯を頼む。大鍋をとり出してきて、スープをつくる。昨日泊まりにきた長女が持ってきたきのこ類が仄(ほの)かに怪しさを放っていたので、細切りにし、炒めてから鍋へ。ついでにベーコンも炒めてから鍋へ。そのほかは、にんじん、大根、長ねぎ、きゃべつを刻んでは入れてゆく。「あ、忘れた!」と小さく叫んで、昆布とベイリーフを入れる。コンソメ顆粒のスティック(4,5g入り)と塩を加える。「大急ぎでスープになあれ」
洗濯ものを干す。
三女登場。オレンジ入りのパン、スープ、りんご、ヨーグルトという簡単な朝ごはん。三女、外出。
夫と長女登場。とっておいたグラタンソースでグラタンをつくる。なかみは鱈と菜の花とじゃがいも。いい焼き目がつく。パン、スープ、りんご、紅茶。夫、外出。
後片づけをしながら、長女と会話。
ふ「さっきS(三女)が家を出るとき、ダイチー(夫の呼び名。わたしも子らも皆、こう呼ぶ)が朝風呂に入ってて助かった。きっと『どこ行くの?』とやっただろうから」
A(長女)「ダイチー、最近突っこむよね。わたしも昨日やられた。高校生・娘にいきなり『どこ行くの?』はだめだと思う。行き先を隠して出かけるわけでも何でもないんだけどさ」
ふ「いまね、ダイチー、ものすごく油断してるの。脇目も振らず映画をつくってた時期が終わって、いま、忙しいは忙しいんだけど、家に帰ってきてほっとしてる感じなの。で、油断してるの。可笑しくて」
A「油断して、うざったい父親やってるんだね。そんな感じ、そんな感じ。あはは」
ふ「でもね、フォローしなくちゃならなかったりして、大変。わたしの仕事ふやさないでくれーって、叫びたくなる。とくにSは早起きだけど朝、機嫌わるいからね、『どこ行くの?』とやられたら、ぶすっとして『は? 予備校ですけど』って答える。すると、その場の空気が一瞬凍りつく……」
A「しあわせな油断だあ。でもさ、K(二女)とSには、油断注意報出しといたほうがいいよ。しばらくつづくでしょ、ダイチーの油断は」
ふ「そだね。そうする」
机に向かって、「読む」ことの大切さ、もっと云えば、「読む解く」ことの必要性について書くつもりだった。ほんとうだ。
それが、まったく異なる「読む」について書いてしまった。
夫の油断など、笑えたものではない。
ただ、書き手と出会うという「読む」ことの持つ宿命については、ちょっぴりだが、書けたかもしれない。
ダイチーの仕事場は2階です。
1階で受けとった郵便やファクスを、
階段下のこの小机の上に置くことにしています。
一度、ダイチー宛てのファクスが
わたしの資料に紛れこんで、
大騒ぎして探したことがあってからの決まり。
こちらは「るすばんファイル」。
旅仕事で長く家をあけるときには、郵便物ほかを
これに入れておきます。
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