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2015年9月22日 (火)

100年早い!

 やるべきことが積もって山のように、例を挙げれば富士山(3,776m/静岡県・山梨県)ほどにも、K28,611m/パキスタン・中国)ほどにも、いやエベレスト(8,848m/ネパール・中国)ほどにも積もって……、目の前に聳(そび)えている。
 山が好きなので、山の名前を挙げてゆくと、大袈裟は、ますます大袈裟になってゆく。
 みずからの脚で登ったもっとも高い山は仙丈岳(せんじょうがたけ/3033m/山梨・長野県)。秋の登山だった。入山したときには気づかなかったが、夕方、山小屋にたどり着いたときには、驚いたなあ。山小屋が登山客でふくれあがっていた。つづけざまに台風の到来があり、天候に裏切られていた登山客が久しぶりの晴天のその日、やっとの思いで押しかけたというわけだった。
 夕食にはありつけたが、就寝のときの有りようはものすごかった。わたしの顔の横には誰かの足先があり、誰かの足の横にはまた別の誰かの顔があるといった案配だった。そうだ、足先、顔、足先、顔、足先……という具合にからだの上部と下部がたがいちがいにならんだ、就寝風景。それでも、わたしは眠った。
 つぎの朝、忙(せわ)しなく山小屋の朝ごはんを食べ、弁当のおむすびまで持たせてもらって仙丈岳頂上に向かって歩みをはじめた。

 さて、そのときの仙丈岳登山のはなしは、またいつか聞いていただくとして(たがいちがいのあとも、同行の二女が高山病になりかかったり、別のグループの喧嘩をとめたり、いろいろなことがあった)。

 ここでは、これ。やるべきことに押しまくられ、山の麓でげんなりしているわたしの登場だ。落ちついて机に向かっているわけにもゆかず、何とか仕事をひとつ仕上げてはそこを離れて、別のことをしなければならなかった。いつもなら、仕事を終えた机でそのまま便りを書いたり、ぼんやり本や雑誌を開くことができるが、このところの運命はやけに時間が小刻みである。
 そんなことがひと月半もつづいたある日、自分の時間の配分がまちがっているのではないか、という疑念が湧いた。
 わたしは欲張り過ぎているのではないか……。
 ひとつでもふたつでも荷をおろすという選択肢もあるのではないか……。
 わがルーティーンをひとつひとつ見直してゆく。仕事あり、しごと(家の仕事を「しごと」と記すことにしている)あり、趣味あり、遊びありのルーティーン。辞めていいものはひとつとしてみつけられない。が、そうなるといっそ全部辞めてしまおうかという乱暴な思いが湧く。この見直しはじつに……、精神的に辛いものだった。
 そんななか空白の3時間が生まれ、映画館に向かう。こうでもしないと、ぱん、と胸がはじけてしまいそうだった。映画館の座席にすべりこんだ途端、頭のなかで声がした。
「荷をおろそうなんてさ、100年早いんじゃない?」

 90
分の映画の世界にどっぷり浸ったのち、早足で家に向かう。
 いかに小刻みに予定をこなさなければならないとしても、やがて、そんなのは落ちつくだろう。落ちつくというよりも、慣れる、かもしれないにしても。
 予定はすべて、わたしの人生の課題だ。
 課題をこなすこともしないで、荷をおろそうと考えるなど……、ほんと、100年早いや! 登りはじめてもいない山の麓で、登山の行程を考えてこんがらかっていたんだ、わたしは! どんよりしていたこころが晴れた瞬間である。
 だいいちわたしは、いまのところ何ひとつ仕損なってはいないのだ。
 もっと時間をかけたい、回数をふやしたい案件は少なくないけれど、とりこぼしはない(はず)。
 三鷹駅の構内で、ちょっとスキップ。

Photo

この夏、つくった弁当です。
熊谷の実家の畑仕事を手伝いに行けず、
ありあわせの材料で弁当をつくって
(夫に)持って行ってもらいました。
・鮭、しそ、きゅうりのまぜ寿司
・煮もの(豚肉、高野豆腐、にんじん)
・卵焼き
行けなかったことは悲しかったけれど、
できることはあるんだ、という発見をしました。
土用の丑の日に熊谷で食べた
鰻弁当の容器をとっておいて

弁当箱として使いました。

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コメント

ふみさま、みなさまおはようで~す

いつもはしんがりだけど今日はトップバッター!かな?(笑)
シルバーウイーク、毎日よいお天気でとてもうれしい
けっこう予定はたてこんでいてそこに傘をささずでかけられると助かります。

今日も夕方から高校の同窓会。

それまではのんびりしたいのだけど

家は荒れ果て、食器はシンクに、庭の枯葉もなんとかしたい、洗濯機もあと一回まわしたい、夕飯をむすめとだんなさにんにしこまなくてはいけない、
元気のない母に電話もかけておかないと、昨日の次女の演奏会にきてくださっただんなさま母様にも電話だ、発表会準備の仕事も今日明日でめどをたてようとここまでさぼってきてしまった、
そんな時に、通販で頼んでいたでっかいラグマットが到着~!え?これ今日敷くの~?

はるかにそびえるチョモランマみあげ、茫然としていて、でもお外は本当によいお天気でさわやかな風が吹いてて・・・

「あ~~んもう今日はやめちゃおうかな、のんびりするためのお休みじゃないのぉ?」

と、まずはアイスコーヒーいれてパンをかじりふみさまのところにきてみたら~~

『100年はやいぜ!』

とエールをいただいてしまったので、これから頑張ります
がんばりエネルギーいただきました~~

ここにもものすごい急な山を、流行りのボルダリング様にように、
えいやっえいやっ
と登っているおばさんいますからね。ふみさまもファイト~!

投稿: おきょうさん | 2015年9月22日 (火) 10時43分


ふんちゃん皆様こんにちは。

登りはじめてもない〜の部分
すごく共感しました。
まさしく私がその典型なので笑

私おっちょこちょいな面があって完璧にしたつもりが後から指摘されることが多く落ち込む毎日です。
まだ失敗もしていないのに
失敗するんじゃないか
今周りは私の話をしているんじゃないかと疑心暗鬼になってしまっています。
その上もう2年目なのになんでできないんだ、という焦りも。

私はいわゆる校正の作業が苦手で一生懸命もちろんやっているのに
どうしてもとりこぼしてしまうのです。

ふんちゃんもこんな時期ありましたか?


でも、今回のお話を読んで
何かが見えた気がします。
ありがとうございます

投稿: たまこ | 2015年9月23日 (水) 11時21分

ふみこ様

「荷をおろす」
この言葉にあこがれたこともありますが、
今は背負える分だけ荷をかついで行こうと思っています。
だから、何度か同じところにもどっては
残していたのをかつぐという
繰り返しが時々あるのですが、
やっておいた方がいいと思うことを
時間がかかってもやっちゃってるのはいい気持ちです。

お弁当美味しそう!
ラッピングもすてきですね!

投稿: ゆるりんりん | 2015年9月23日 (水) 13時48分

ふみこさん みなさん

こんばんは。

弱音を吐きにまいりました。
小学校を来春卒業する娘。急にしめきりが見えてきたような焦りを覚えて、地面がぐらぐらしているような気持ちになる母です。あれも、これも、教えてない、経験させてないから、出来ない子になっているんじゃないか、そもそも、叱り方が下手だから、母に気を使い過ぎな子どもにしてしまったんじゃないか、と、今までの付き合い方を振り返り、見直し、なんだかダメだしを受けているような、そんなこのごろです。

不器用かもしれないけど、ぼんやりしたところがあるかもしれないけど、一生懸命だし、おこりんぼだけど、人の悪口は言わない(聞いたことがない)、お友達を横取りしない(だからひとりぼっちにはしょっちゅうなるけど)。

ホントに丸腰だけど、いい子じゃないか、というところまで来たときに、
「100年はやいぜ!」は、まるでお告げのようでした。

おかあさんになって、まだ11年なのだなあ、私、と。

元気出して、機嫌よく、明日からもおかあさんをやります。

投稿: cohata | 2015年9月23日 (水) 22時28分

ふみこさま みなさま こんばんは。

連休最終日はこの秋イチバンの青空で、ホントに美しい一日でした。

「100年はやいぜ!」を読ませていただいて、ふぅ~と深い息を吐きました。

いつの頃からか、あの頃はもっとたくさんのことをできたのに。。。と思うようなことが出てきました。
確かに、仕事に家のことに遊びも。。。よくできていたなぁ~と。

では、今はどうなのか?足したり引いたりの毎日だけど、譲れないものは譲れない。どうやら、その優先順位が変わってきているようです。
あの頃はそれがあることにさえ気づかなかったことにあたって、それを何とか乗り越えることができるようにもなりました。
多分、それは「荷」をおろしたのではなく、荷をその時の自分が持ちやすいように詰替えてきたからここまで来たような気がします。それから、誰かに手伝ってもらっちゃうのもうまくなってるような~(年の功ともいう?(笑))

さてさて、明日からいつもの毎日が再開します。
さっき、息を深く吐いたので、新しい空気をたくさん吸い込めそうです。

投稿: かえるのしっぽ | 2015年9月23日 (水) 23時21分

ふみこさま、みなさま

おはようございます

わたしも先週山の呼ぶ声を聴いて高尾山へ
黄色いれんげしょうまたちに迎えられました
雨あがりなので人も少なく、こころがどんどん広がって
ほどけていきます

ここはいろいろなコースがあって好きです
去年娘の受験で不安だったとき
その不安がエネルギーになり
頂上超え、一丁平超え城山から相模湖まで
歩けてしまい、自分でもびっくり

ふらっと一歩踏み出すと生まれてくる気持ち
そこへいくと見えてくるもの大切にしたいです。

投稿: 真砂 | 2015年9月24日 (木) 08時44分

ふみこさま。

わたしも、元気になりました。
孫の世話をしていると、自分のしたいことができないような焦りとか感じることがあるんですが、まだまだ百年はやい、ですよね!
孫との時間をゆっくり楽しんで、それからでも遅くない。
それに、無駄なように思えて、実は、とっても大切なものを孫からもらっているのだし・・・。

今日は、雨降りで、はるくんとおさんぽできないのが、残念です。

では、またぁ。

投稿: こぐま | 2015年9月24日 (木) 10時57分

おきょうさん さん

わたしのは おきょうさんほどの
山ではないな、と思います。
容量が小さいので、つい、
げんなりしてしまいました。

することがあるという、
時にげんなりしながらも
それに向かえるという幸いも、
感じています。

100年たっても山登り。
といきたいものです
(小休止しながらも)。


投稿: ふみ虫 | 2015年9月25日 (金) 09時39分

たまこ さん

校正のこと。

わたしの目は、ザルです。

決してえばれるはなしではありませんが、
校正の力はないままです。

けれども、いろいろな力が要りようで
(そのなかには思いがけないような
へんてこな力も)、わたしは、
反省し過ぎない力はあるようです。

何の慰めにもならないですね。
ごめんなさい。

投稿: ふみ虫 | 2015年9月25日 (金) 09時44分

ゆるりんりん さん

目の前に置かれたものは、
たいてい何でもやってみることにしています。
一方、終わってゆくことをあたりまえに
受けとめられるように、と思っているんです。

はじまった連載が終わったり、
関わっていた雑誌が休刊になったり、
任期が終了したり。
いろんなことがありますから、ね。

高3になった末娘を見ていても、
ああ、ある時代の終了が近いなと
感じます。
すると、また、あたらしいものがやってくるはず。

投稿: ふみ虫 | 2015年9月25日 (金) 09時51分

cohata さん

そうですとも、
すごく魅力的なひとじゃないですか!

ぼんやりしたところがあるなんて、
それだけで素敵だー。

中学生になられたら、
しっかり当たられてあげればいいんだと
思います。
いい子にも、はけ口は必要ですから。

そうして cohataさんは、
ここに弱音を吐きにきてください。

投稿: ふみ虫 | 2015年9月25日 (金) 09時54分

かえるのしっぽ さん

荷の詰め替え。
それ、名言!

わたしもちょっと詰め替えをしようと
思いました。
ありがとうございます。

さてと。

投稿: ふみ虫 | 2015年9月25日 (金) 09時56分

真砂 さん

高尾山から相模湖に下りるコース、
大好きです。
年に一度は歩きます。
そうして、相模湖でわかさぎのフライを
食べるんです。

じつは本日、
仲間たちと夕方から高尾山に行きます。
ビアマウントで、ビール!です。

投稿: ふみ虫 | 2015年9月25日 (金) 09時59分

こぐま さん

するべきことはちゃんとできていて、
したいことも(ほんとにしたかったら)
きっといつかできる日がめぐってくる。

それは信じていいと思うんです。

お孫のはるくんが、
またあたらしい世界を運んでもくれる!

投稿: ふみ虫 | 2015年9月25日 (金) 10時01分

ふんちゃん

 あ~、ふんちゃんが、ふんちゃんがそんなこと言うと、
 私も頑張らなくっちゃいけなくなる~と、
 もしも、目の前にふんちゃんがいたら、ふんちゃんのお口を覆ってしまいそうな気持ちで読ませていただきました(^。^;)

 昨年、今年と、だんだん目のまわりそうな日が増えてきているような気がして、これは、私が欲張りのせいなのだと思うことにしていました。
 自分ができることと、しなきゃならない(と思い込んでいる)ことの差が大きくなりすぎてるんだと。
 なので、荷を下ろすということを思い切ってすべきなのじゃないかと思っていました。
 それで、考えてみても、どれも下ろすわけにはいかないような気がして、もやもや過ごしていました。
 その上、なんだかやるべきことが増えてしまったりして…。

 でもね、でもね…。
 そうなんだなぁ、「100年はやいぜ!」なんだなぁという気持ちがどこからか…(^^)
 最近、増えてしまった、やるべきこと。
 このひとつは、小学校の図書ボランティアです。
 いずれ…いずれ、ね。いずれしたいけれど、今はなぁ…と思っていたのだけれど、「都合のいい時だけでいいからね~」という素敵な笑顔に、ついつい月1くらいからのスタートではじめてしまいました。
 これが愉しいのです。
 やっぱりなぁ。キラキラした顔で本を借りに来る子がいたり、ちょっとしょんぼりして借りに来る子がいたり…。
 借りようとしている本について、ちょっとお話ししたりして…。
 他のボランティアのお母さんともお話をしたりもして…。
 ゆっくりスタートをしました。
 ずっとやりたいことではあったのです。これは、おばあちゃんになるまでやろうとひそかに思っています(^。^)

 「100年はやいぜ!」
 はい。私も頑張ります!

投稿: もも(^-^) | 2015年9月26日 (土) 15時13分

たびたびすみません…。

 かえるのしっぽさん

 「荷を積み替える」ということ。
 学びました!
 感動です。
 自分の体(容量)に合わせて、積み替えてみようと思います。
 
 ありがとうございます(*^。^*)

投稿: もも(^-^) | 2015年9月26日 (土) 15時15分

もも(^-^)さん

やりたいことは、
やらないとね。
(小学校の図書ボランティア、よかったね)。

それはできるだけ、「いつか」……とか、
「今度」……、「いまに」なんて云わずに
すっとやってしまわないと。
と、思っているんです。

というわけですから、
わたしの「100年早い!」は、
「しなげればならない」を「やりたいこと」に
換えてゆく意味も持っています。
現実にそうなったことは少なくない。
でも一方で、
「やりたいこと」のはずが、
義務感におそわれたりすることもあって、
みずからを恥じるというわけです。

やりたいとか、しなければならないとか、
区別せずに、さくさく生きてゆければいいのに。
とも思うのでした。

投稿: ふみ虫 | 2015年9月27日 (日) 07時25分

ふみこ様

おはようございます。
仙丈岳登山のはなし、今度 詳しく聞けるのを
楽しみにしています。

ふみこさんの 足元にも及ばないのですが
札幌の真ん中にある 藻岩山に登るのが 好きです。
(笑わないでください)標高531M
できれば 年に3回は登りたいのですが
今年はまだ1回。
少しずつ 紅葉が始まって かなり 焦っています。

ふみこさんの つぶやき
「いっそ全部辞めてしまおうか・・・」に、えっ!!とかなり
驚いたのですが、ある日 自分の背負っているもの全てを
一旦 道のわきに 置いてみたくなる時あります。

でも いったん置いてしまうと 再び背負えるかどうか
自信が無いので 私も「100年早いや!」です。

ふみこさん お弁当、凄く美味しそうです
藻岩山の山頂で広げると 感動ですね。

投稿: えぞももんが | 2015年9月27日 (日) 07時28分

えぞももんが さん

いいな、北海道の山。
登ってみたいです。
海抜であらわすと、海抜というわけだから、
思わぬ山が低山になったらいしますね。
藻岩山のはなしは、
父も母もよく聞かせてくれました。

いっそ……なんて、
乱暴なことをつぶやいてしまって。
許してください。
そんなことをつぶやく瞬間が、
リセットの役をしているんでしょうね。

ほんとうにリセットしたら、
それこそ、大大変なのにね。
荷のありがたさを思いつつも、ついね。
100年早いです。まったくのところ。


投稿: ふみ虫 | 2015年9月28日 (月) 07時54分

ふみこさん、こんにちは。

前回のシルバーウィークは、娘がまだ保育園で、
保育園のお仲間と高尾山に一緒に登りましたっけ。
今年の連休は、娘が塾通いだったので、
家族全員そろった休みに、実家のお墓参りに行ったのが
お出かけらしいお出かけでした。

子どもの予定が忙しくなると、私の時間もぽっかり空くことがあり、
最近はそれに戸惑っています。
「時間がないー!」とずっと思っていたのに、
「あっ、迎えに行くまで3時間ある」とか、
「今日の休みは、半日空いた」とか。
これから、こういう時間を楽しめるようになりたいな…と思っているところです。
(まだまだ慣れてなくて、今はあっという間に自由時間が終わっています)


投稿: 焼き海苔の の | 2015年9月28日 (月) 08時44分

焼き海苔の の さん

少しずつうつろってゆきますね。
うつろうことのありがたみを
忘れずに、しっかり歩いてゆきたいですね。
ちょっぴり寂しいことがあるにしても。

学習はつづきます。

投稿: ふみ虫 | 2015年9月29日 (火) 21時04分

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