手助け
夫は現在、埼玉県熊谷市の実家で、両親の生活と農業を支えている。
家で暮らすちち、リハビリテーションのできる施設で過ごしているはは。ふたりは、ことしのはじめごろから日日少しずつ弱ってきて、いまでは記憶も不確かになってきた。
実家で映画製作の仕事ができる仕組みを夫はつくっているけれど、仕事よりもいまは介護と農業を噛み締めているのではないか。週末帰宅するたび、夫の全身から覚悟のようなものを感じる。
覚悟。
しかしそれは、やわらかく、両親の人生の変化を見届けようという覚悟だ。おもしろがっているように思えることもある。
先週、ははを施設から家に受け容れる「ひと月」がはじまった。デイケアサービス、ショートステイを組み合わせてのひと月だが、朝と夜は家で過ごすことになる。また、介護サービスが休業となる暮れから正月三が日にかけては、全日家で過ごすのだ。ははには左半身に麻痺があるため、車椅子と、そのほかいくつかのケアが必要となる。
「してみようと思うんだ」
そう云って夫は、介護ベッド、室内用の車椅子、手すりやスロープなどを借りたり、ケアの練習をしたりして準備をすすめた。
その生活が始まって1週間。
先週末帰ってきた夫は、少し眠たそうだったが、自分で決めた任務を遂行するひとらしく、余計なことは考えていないようだ。こうなると、わたしのほうでも余計なことは云えない。
お互いに仕事に出かけなければならなかったから、ゆっくり話をする間もなかったものだから、夫が熊谷に戻るまでの1時間、駅前の喫茶店に出かけて、向かい合って珈琲を飲んだ。
「このひと月を終えたら、おふくろはまたこれまでいた○○苑にもどることになるんだけど、そのことに対してもあらためて確認できると思うんだ」
と、夫。
「……そう」
「それにね」
「……それに?」
「ぼく自身の鍛錬でもあるんだ」
「そっか」
……そう、とか、そっか、と短く受け答えをするわたし。
夫のいまの生活を直接的に手助けしないでいるわたし。
これでいいのだ、と思う。
少し前、こんがらかっていた時期もあったが、そのこともなつかしく、いまのわたしからすれば、そのこんがらかりも無駄ではなかったと思えるのだ。
どんなふうなこんがらかりだったかと云えば……、ひとり置いてけぼりをくったような情けなく、つまらないという感覚。
そうだあのころは、自分のことを「残された家族」と表現して夫を困らせていた(白状)。
「つまらないじゃないかー」
とね。
そんなお粗末な時期を経て、いまに至っている。
東京の家を守ること、機嫌よくあること、仕事に精出すことがすべて、いまの生活を選んだ夫への手助けだと信じている、いま。
友だちからタネをもらって、
育てているのらぼう菜。
大きくなってきました。
間引きしないといけないけれど、
愛しくて、ついこのままにしてきました。
それではいけないから、明日にでも、
間引いて、摘んだ菜を汁ものにして
食べようと思います。
〈お知らせ〉
対談 : いまを生きるという発見
細谷亮太せんせい(聖路加国際病院・小児科医・文筆家)と
山本ふみこ
2019年1月19日(土)
13:00 ー 14:30
池袋コミュニティ・カレッジ
(西武池袋本店別館 8階)
受講料 : 会員 2,808円 一般 3,348円
お申し込み・お問い合わせ
でんわ 03 (5949) 5481(直通)
パソコンから 池袋コミカレ → 検索
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コメント
ふみこさま。おはようございます。
ふふ。「えー。僕も残りたーい。」なんて言う声がきこえそうな
のらぼうくんたちもふみこさんをそっと支えてくれていたのでしょうね。
わたしも。。半年くらい前第九をやるかやらないかで
暴走者たちをながめながら。。年末過ぎて無理だろうとおもいながらも
やると決めてからがなんだか楽しかった。この人数でできちゃうんだ
とおもっていたら。。あちらこちらから集まってきてくださる人々。
4団体にふえて趣旨も年齢もことなる合唱団の人々。。
先日のリハーサルでも「寒くてこたつに入っていたい気分だったけど
第九歌いだすとここがこたつみたいなんだよ。。」っておじいさん。
「今回はさー。。無理じゃない?。。」なんてあの時記者にいって
ごめんなさいねー。いつでもどんな形になってもその場をひらこうと
する姿勢に頭がさがりますー。(こんがらがりを混沌をおそれないんだよね。)←わたしにはまだむりだなー。。ふふ。
おかげさまで年末まで楽しくすごせそうです
先日あった高校のクラス会の友人も面白がって見に来てくれることに。。。
ふみこさん。いつもそっと支えて下さって心から感謝です。
(参加されたおばあさんに昆布巻きのこと話したらその方は鯛とゆず
が定番だそうで。。こんな話もたのし。。ふふ)
投稿: 真砂 | 2018年12月18日 (火) 08時54分
ふみ虫さま
その大きくて重い
「覚悟」に
家をまもり、黙って
応援するという
「覚悟」に
心からの応援と拍手を
送ります!
投稿: 寧楽 | 2018年12月18日 (火) 10時43分
真砂 さん
混乱もこんがらかりも、
具象化に向かうための、
大事な存在ですものね。
「第九」
耳をすませています。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2018年12月18日 (火) 15時10分
寧楽 さん
寧楽さんにそう云っていただくと……、
うれしくなります。
勇気凛凛。
お父さまの気配を感じながら、
おだやかな年越しを、どうか。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2018年12月18日 (火) 15時12分
ふんちゃん皆様こんにちは。
ふんちゃんとご主人は強いですね。
そして、こんがらがりを脱出したふんちゃん
すごいです。
私も先月より、すこぉしできることが増え
それでも焦り時間が足りない毎日。
時間を作ること落ち着くことがとても難しいです。
私の許容範囲がせまく仕事と仕事の繋がりがもてず
なんと欠落した人間なんだと落ち込むことも多々。
それでも神様が
あなたならどうあれ、投げ出さない!これを糧にする!と言ってくれたからここにいると信じまた明日から
頑張ります。
投稿: たまこ | 2018年12月18日 (火) 21時54分
たまこ さん
「どうあれ、投げ出さない!これを糧にする!」
という神様のことば、わたしもこころに
刻みました。
ありがとうね。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2018年12月19日 (水) 11時11分
ふみこさん
寧楽さんのように上手に書けませんが、同じ想いです!
お2人のやりとりに うっとりしている大野でした。
投稿: 大野 | 2018年12月19日 (水) 12時40分
ふみこさま。
お二人の決心、すてきだなぁ~と思い読ませていただきました。
私は、またまた、じんましんがでて、寝込んでいます。
ちょっと調子にのると、すぐに体調がくずれることの
繰り返しです。
でも、この間、はるくんの保育園での読み聞かせは、
とっても楽しかったです。
ヴェノーヴァも、なんとか成功!
子どもたちの笑い声に包まれ、しあわせなひとときでした。
それと、ちょっとこの場をお借りして。
「絵本ひろば」
というサイトに絵本を投稿しています。
「はるくんパンツいっちょう」
というお話です。
「こぐまのノート」から入れますので、
よかったらのぞいてみてください。
では、またぁ。
投稿: こぐま | 2018年12月19日 (水) 19時14分
大野 さん
ほろりとしました。
おやさしいことばに、ほろりです。
ありがとうありがとう。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2018年12月19日 (水) 20時27分
こぐま さん
自分の心身の声を聴く。
これは、大事。
少しペースを落として、
ゆったりね。
大事なこぐまさんですから、ね。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2018年12月19日 (水) 20時28分
ふみこさま、皆さま
ご両親を支えながら、お仕事、農業に取り組むご主人の日々のチャレンジに脱帽です。
後方支援のふみこさん、こころの「こんがらがり」を見て見ぬふりをせず、ゆっくりほどいてこられたのですね。
ふとリンドバーグ夫人の「海からの贈り物」を思い出しました。
「・・・妻も夫も、一緒に同じ方向を眺めているだけではなしに、
外に向かって一緒に働きかけているのであり
(牡蠣が岩の上に次第に繁殖していく有様を見るとよい)、
そうすることで他の人間との繋がりもできるし、
また社会にしっかり根を下ろすことになって
(牡蠣を岩から剥がすのは大変な仕事である)、
それで二人は本格的に人間の社会の一部をなすに至る・・・。」
様々な思いを抱えつつ、何はともあれ機嫌良く、「今」を過ごしたいと、改めて思いました。
ふみこさん、ありがとう。
また、東京で1月にお話会があるのですね。行きたいですが、やっぱり遠いなぁ・・・。
私は上京叶わないですが、長男がクリスマスに開催される吹奏楽コンクールの本選で来週そちらに参ります。
与えていただいたチャンス、満喫してきておいで!と思ってます。
こぐまさん、
「はるくんパンツいっちょう」
読んでもらいながら、子どもたちがいろいろ話さずにはいられないような楽しいお話!
ありがとうございます。
投稿: 円 | 2018年12月21日 (金) 11時31分
円さま。
「はるくんパンツいっちょう」
読んでくださり、ありがとうございます!
今年は、イラストレーターのかわさきさんとの素敵な出会いが
あって、絵本を作ることができました。
こうして、ご感想をいただけると、励みになります。
これからもよろしくお願いします。
投稿: こぐま | 2018年12月21日 (金) 15時17分
ふみこさま みなさま こんばんは
何年か前の自分を思い出しました。
義両親のことで
その中で一緒に闘いたいととか、
その中に一緒にいたいとか
離れた所にポツンといる自分。
つまらないという感覚。
「残された家族」
「つまらないじゃないかー」
そのものでした。
でも、その時の自分の
望まれた?できるかぎりの?在り方だったのだと思います。
フルタイムの仕事が始まった今年。
やっとここまで来た!感、満載の今日です。
少し前のふみこさんからの
仕事で受け取るもの、受け取らないでおくもの、の言葉を
時折思い出しながら、がんばっています。
仕事は楽しい。やりがいもある。 でも、
それでなくしたものもある。
そんなことを考えているこの頃です。
そのことを気づけたことは大きいと思っています。
ふみこさんのおかげです。
投稿: さのまる | 2018年12月21日 (金) 20時59分
ふみこ様 こんにちは
今日は 少し暖かめの穏やかな冬の日でした
これから 明日にかけて 吹雪になる・・
天気予報なのですが
まだ その気配はありません
今日は 一日かけて 年賀状書き
先ほど 終わって ホッとしました。
ふみこさん 私は思うのですが
実家で、ご両親の生活と農業を支えている
ご主人。一番 心がほぐれるのは
「そう」とか 「そっか」の短い言葉
そして ふみこさんが 家を守り
自分の仕事を いつものようにしてくれること
本当にそれが 一番と思います
介護に関する 一般的なアドバイス・・・いらない
文例に出ているような いたわりの言葉・・・ピンとこない
ただ ただ いつものように そこに居て
「うん うん」と聞いてほしい
そう思います
昔 中村雅俊が歌っていた 歌詞みたいなことを
言ってしまいました・・・。
「ぼく自身の鍛錬でもあるんだ」
そっか・・・・。
投稿: えぞももんが | 2018年12月23日 (日) 16時44分
円 さん
つまるところ、わたしの目標も。
それなのです。
機嫌よく生きる、暮らす、仕事する。
王子が東京で演奏をね。
素敵です。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2018年12月23日 (日) 21時18分
ふんちゃん
4番目ちゃんと、5番目ちゃんが、たぶん、
インフルエンザにかかり、あっという間に一週間が過ぎていました(^^;)
たぶん。
というのは、今回、病院へは行かなかったので、
正式に診断されたのではないから…です。
ん〜。
基礎疾患があるわけでなし、
健康的な子は、しっかりと自分で治るチカラがあると思っていたので、
保育園や学校は、そのつもりで(インフルエンザのつもりで)
休めばいいんだわ…と思って、
病院へは行かずに、しっかりとかかってもらいました(^^)
二人とも、高熱でぐったりすることもありましたが、
しっかりとインフルエンザと向き合って、自分のものにしてくれました(^^)
そんな風にしていたら…、
母もかかってしまい…。
母の場合は、同居してからというものやせにやせてしまっているので、
心配で病院に行ってもらいました。
インフルエンザでしたが、本当に弱い薬だけいただいて、
寝込んでいました。
母も、ようやく今日あたりから起き上がれるようになり、ホッとしているところです。
うつったら…、即、病院だな…と思っていた2番目ちゃん娘には、
全然、影響がなく、いつも通り元気で過ごせていて、
これが何より、ホッとしています(^^)
先日、大きな病院へ行き、
やはり入院治療が必要なことを告げられました。
もしかすると、半年くらい?とのこと。
ベッドの空き待ちですが、年明けくらいに連絡がくるかもしれません。
「冬眠」
と思うことにしました。
じっくり「冬眠」して、いろんなエネルギーを蓄えて…。
細谷先生との対談。
これもまた、本当に聞きに行きたかったです。
東京〜。どこでもドアが欲しいです(^^)
細谷先生のね、「いつもいいことさがし」
とても好きな本で、いつもそばにあります。
ふんちゃんとだんなさまのやりとり。
いつも温かだなぁと思います。
それは、ふんちゃんがそのように受け止めて、
ここに書いてくれるから…なんですね…きっと。
そのおかげで、家族との上手な距離について考えさせてもらうことが
できている気がするのです。
ちゃんと、それぞれ自分の軸みたいなものをもっていて、
それぞれ、自立している…感じ…でしょうか…。
私も、娘のおかげで、自分の自立…。
すこ〜し、意識できるようになってきました。
不安定な感じがするのかと思いきや、
これが安定というか…、夫との関係が、より心地良くなった気がします。
甘えるけれども、自分の軸はちゃんともてるように…。
これが、ちょっとの私の目標です(^^)
投稿: もも(^_^) | 2018年12月23日 (日) 21時20分
さのまる さん
わたしは……、
そのなかで一緒に闘いたい。
と考えたことはなく……。
そのなかで一緒に闘える。
と考えたこともなく……。
一心同体ではなく、
一心別行動だなあと思ったんです。
その感覚には、ちょっとよろこびというか、
誇りも感じたのでした。
さのまるさん、
お仕事の世界がひらかれたこと、
ほんとうによかったですね。
ご苦労なこともたくさんあったことでしょう。
ご褒美をね、ご自分に。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2018年12月23日 (日) 21時25分
えぞももんが さん
とてもうれしいことばを。
どうもありがとうございます。
そっか。
と云ってる自分を、
なかなかよろし、と
思うことにしようと思います。
年賀状、わたしはア行→
カ行→ というふうに1日1日書いてきて、
きょうハ行を書き終えました。
年賀状書きながら、ときどき、
こころがひりひりします。
ご無沙汰を申しわけなく思うこと、
申しわけなく思い過ぎていることに
対して。
反省会みたいになっちゃって、
ひりひり、です。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2018年12月23日 (日) 21時30分
もも(^_^)ちゃん
そっか。
入院は冬眠だし、旅行だし、
冒険ですね。
記録をつけてね。
2番目ちゃんも、ももちゃんも。
そしてら、ファンタジー大作が
生まれるかもしれません。
少なくとも、その、タネは
生まれます。
今週『秘密の花園』
(バーネット)を読み終えました。
読みながら、ももちゃんのことを考えていました。
今晩から『床下の小人たち』(アメリ・ノートン)を
読みます。
小人シリーズは、わたしになにをおしえてくれるだろう。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2018年12月23日 (日) 21時35分
ふみこさん
場所をお借りします。
もも(^^)さん 私がふみこさんのブログのコメント欄に投稿したのは 次男の入院の時でした。どれだけ励まされたか わかりません。入院は 大変だけど 幸せな親子の時間だということは ふみこさんの本に教えてもらって…。
応援しています!
大丈夫 大丈夫…と 祈ってます。
投稿: 大野 | 2018年12月24日 (月) 08時01分
大野さん
ありがとうございます!
「冬眠」は、
子離れができない私が、さみしいだけ…
という感じもしています(^^)
危ない治療をするでもなく、
ふっくらと太るまでの
まさしく、「冬眠」です(^^)
いろんな人に出会って、
食べものだけでなく、
人からも、
たくさんの栄養をもらって
帰ってくることを愉しみにしています。
冬休み中に、
入院中に着る、「もんぺ」作るんです。
動きやすいし、かわいいから〜。
大野さ〜ん、
ありがとうございま〜す♪
ココロより、感謝をこめて…。
ふんちゃん。
「秘密の花園」
子どもの頃に読んだはずなのに、すっかり忘れてます。
また、注文しちゃいました!
「床下の小人たち」は、子どもたちの本棚にありました!
愉しみです。
投稿: もも(^_^) | 2018年12月24日 (月) 16時47分
ふみさま、みなさま、メリークリスマスです、
去年は月曜日。気がついてびっくりしました。
一週間、早すぎー!!
みなさんの近況報告にみえない力をたくさん注入されています。
今日24日は弟の月命日。
部活でいない次女以外の家族と、弟お嫁ちゃん(もちろん彼女も家族。)とお墓参りに行ってきました。静かでおだやかでやさしい時間のクリスマスイブでした。
会話、対話、大切に。
わかっちゃいるけど、『あうんの呼吸』といのも日本人は大切に出来る人たち。
表情、しぐさ、目の力、さまざまに気配をよみとれる力。
信じてよい直感もたくさんあるはず。
喫茶店で流れいたただんなさまとふみさまの時間は、他のカップルより甘く、あつーい、時間だったのかもなー。ウフフ。
投稿: おきょうさん | 2018年12月24日 (月) 21時57分
おきょうさん さん
お墓参り。
が、おきょうさん さんにかかると、
ピクニックのように響きます。
弟さんも笑顔でしょう。
皆さんも涙の笑顔。
2019年も大切なひとを感じながら、
会話しながら……。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2018年12月25日 (火) 11時29分