« あたらしい一年 | トップページ | 嫌われ者 »

2018年12月 4日 (火)

率直

 60歳になったとき、ふと伊藤野枝のことを思いだし、当然大杉栄のことも思いだした。伊藤野枝の本をむさぼるように読んだ若かりし日の記憶がよみがえってきたのだった。

 伊藤野枝、社会活動家。

 辻潤、ダダイスト(野枝の最初の夫)。
 大杉栄、アナーキスト。

 この3人に傾いていった日のわたしは、自立したい、自立したいと、希ってやまないわたしだ。

 そうだ、平塚らいてうから「青鞜」の編集権を譲渡された人物として、伊藤野枝を識ったのだった。はじめは、平塚らいてうはどうして、こんな小娘(20歳だった)に「青鞜」をまかせたのだろう、と思った。
 当時の野枝から、稚拙で野暮ったい印象を受けたからだ。しかし、ここからの伊藤野枝がすごい。学び、吸いとり、成長し……その勢いは音がするほどだった。バリバリ? あるいはグングン? ガツガツ、かもしれない。

 とにかくいまの気持ちで、伊藤野枝のことを書いておこうと思った。

 持っていたはずの『美は乱調にあり 伊藤野枝と大杉栄』『諧調は偽りなり 伊藤野枝と大杉栄 上下巻』(瀬戸内寂聴/ともに岩波現代文庫)は、誰かに譲ったらしくうちにはなく、図書館に行って抱えるほどの本を借りて帰ってきた。
 片端から読んでいるうち、おや、と気づいたのだが、いまの時代に、大杉栄のごとく、揺るぎなく堂堂と意見を発する人物があるだろうか。ある意味単純なのだが、単純、いや率直と云い直そう……、率直だからこそ、揺るがないのだとも云える。
 伊藤野枝について短いものを書き上げて、わたしはほっとしている。しかし、きっとこのひととの再会はこれで終わらないだろう。この一連の読書はわたしへの60歳の誕生日祝いとして、天から降ってきたもののように思われる。

 生前みずから「わたしは畳の上では死ねないかもしれない」と語ったという野枝の予想は的中し、さいごは大杉と大杉の甥(幼子だ)とともに憲兵に扼殺(やくさつ)され、茣蓙(ござ)に巻かれて古井戸に投げこまれている(甘粕事件)。社会問題、ことに女性の解放のための活動をするなか、激しい恋に身を投じ、7人の子どもを生んだ野枝。
29年間の生涯であったから、ほぼ常に妊娠していた計算になる。
 子をひとに預けたり、夫の手を借り(大杉は子煩悩であった)たりしながら、子育てとみずからの仕事とのあいだで葛藤しながら生き抜く姿にも、わたしは「率直」を思うのだ。

 それで、いまのわたしはどのくらい率直であろう。

 少しも率直でない、というのが、答えである。
 あちらからの要請、こちらから出される課題、自分自身の都合のあいだで揺れながら、云いたいことなどほんとうには云っていない。云わなければいけないことも、云っていない。

 ときどき、早く生まれ過ぎたと云わざるを得ない人物が、この世には登場する。伊藤野枝や大杉栄も、そうだ。そのことをふたりに伝えてみることができたとして、どうだろう。

「何のはなしだ」
 と大杉は笑い、
「どの時代に生まれようと、するべきことをするだけ」
 と野枝は云い放つのではないか。

 40
年ほどの時を隔てて、ふたたびおそわる日が巡りくるなどとは、小娘だったわたしは想像もしていなかった。

2018_2

密かに「肉叩き」と呼んで
あこがれていました。
ミートハンマーともいうんですってね。
誕生日の夜届いたので、まるで誕生日プレゼント
みたいでした。
ちょっと前、1枚しかない豚ロースの切り身を
瓶で叩いてのばし、2人分のカツレツにしたのです。
これがなかなかうまくできたので、
気をよくして、ミートハンマーを注文。
ええ、わかっていますとも、
叩いて薄くのばすだけの道具でないことは。


〈お知らせ〉

127日(金)午後2時4時
入間市健康福祉センター(3階301302会議室)で
講演会をいたします。
「台所でやさしさをつくる」
お近くの方で、ご興味のある方、
どうか下記へお問い合わせください。
(お知らせするのが遅くなり、申しわけないことです)。

入間市健康推進部地域保健課

04-2966-5513

|

「日記」カテゴリの記事

コメント

ふみこさま。おはようございます。


40年前といえば。。ふふ。
高校生でもっともピアノに夢中になっていたころです。
音大にいかなくても高校生の間にベートーベンソナタを全部ひく
なんてなぜ思ったのか不思議なくらいですー。(実際は半分くらいかな)
最後に弾いた横浜の洋館でこれでいいやとばいばいしたのに。。

今年40年ぶりに洋館で室内楽を演奏するなんてびっくりでした。
ここはお借りした練習後掃除機をかけて出ることになっているので
なんだかもう自分の別宅みたいに愛着がわいてしまいました。

「まってたよー」なんていってくれないけど。。
なかなか利用者がおおいのでとれないのにまた来春利用
できることになり。。嬉しいご縁に感謝なんです。
(ブツブツ言っているけど記者に感謝。あなたは誰の使いなの。。)

だからわたしもね。ふみこさん。話がそれてますが。。こんな日
くるとはおもってなかったのです。中心になる人をおかないでそこに
集まってくる人を尊重してつくりあげていくって。。めちゃくちゃ
に思えることも多々ですが。。楽しんでまーす。
では皆様いい一日をです。

投稿: 真砂 | 2018年12月 4日 (火) 09時22分

真砂 さん

そうか、真砂さん40年前は高校生。
……わたしは出版社で、駆け出しの
記者でした。

起点は、やはりおもしろく、
何かを物語っています、ね。

投稿: ふみ虫。 | 2018年12月 4日 (火) 10時49分

ふんちゃんへ

40年前......。
私は尖った中1生でした。
何だか苛々してました。思春期特有のモノだったのかもしれません。

来週 夫がカナダからの勤務を終えて帰国します。
次の赴任地はここの前に7年住んだ山口県岩国になりました。
帰って来たら私も赴任先に付いて行こう 夏にカナダに行きそう考えるようになりました。
でも、いざ帰る事が決まり色々な事を選び決めなければいけないのに考えがまとまりません。
とりあえす単身者用の社宅に住む手配を夫はしたようです。
パートですが私の仕事も直ぐには辞められないし、施設には入ってますが北海道の父の
事も気になります。息子の事も...。
「率直」今の私に響く言葉です。
考えつつ、進めたら....そう思います。

投稿: ハチミツ | 2018年12月 5日 (水) 08時26分

ハチミツさん

あたらしい道ですね。
よし!と決めたら、
その道はひらかれる……
のではないでしょうか。

人生100年時代ですもの。
あと幾度だって変化し、
変身する機会が与えられる
はず。

うらやましい気持ちで、
ここからエールを送ります。

投稿: ふみ虫。 | 2018年12月 5日 (水) 10時53分


ふんちゃん皆様こんにちは。
率直、まっすぐということでしょうか?
遠まわりせず素直に言葉を伝える練習したいものです。


さて、私の復帰して3か月。ほぼ月一仕事なので
だいたいやっと3回目という所でしょうか。

前回できなかった所の一部できた。
ほんとうにゆっくりゆっくり成長です。
メモの取り方や理解力がないのか
見返してわかるように書くというのは難しいですね。

初めていうくらい仕事に追われ気味。
ゆっくりゆっくり成長だけど
また成長してる所を報告しにきますね

投稿: たまこ | 2018年12月 5日 (水) 21時08分

たまこ さん

成長ということばが、
やけにまぶしく感じられます。

それは成長の機会を逃しがちに
やってきたとの思いが拭きれないからですが……。
それでも、いくつになっても成長はある!
と信じてはいます。

(がんばります)。

投稿: ふみ虫。 | 2018年12月 6日 (木) 10時14分

ふみこさま。

「率直」に言うこと、若いときは苦手でした。
今、なんとなく自分の思っていることは言えるようになってきたかなぁ、
と思います。まぁ、私のまわりにいる人は、家族とか気をつかわなくていい仲間ばっかりなので。
 昨日は、はるくんの五歳の誕生日でした!
あっという間に五歳です。はるくんが生まれてから、私も楽しいことがいっぱいありました。
 「はるくん、ありがとう」

では、またぁ。

投稿: こぐま | 2018年12月 7日 (金) 15時54分

こぐまさん

はるくん、もう5歳!
大きくなりましたね。
ほんとうに、お幸せでしたやね、
はるくんの登場は。

わたしも楽しませていただいてる。
感謝。


投稿: ふみ虫。 | 2018年12月 7日 (金) 16時46分

ふみこさん

東京へ向かっています。明日は一日、圭梧の学校の用事です。
「指 骨折してから、掃除機かけてないから、掃除よろしく!」とういう元気な声に 嬉しい母ちゃんです!掃除、します!します!と 張り切っています。

学校に近い池袋に泊まるんです。
ふみこさん、来週は池袋なんですよねぇ

池袋つながりで、お会い出来た気分になっています。

投稿: 大野 | 2018年12月 7日 (金) 19時06分

昨日はありがとうございました。
よもや壇上で話をさせていただけるとは思いませんでした。
かつて市内のグリーンヒル商店街のアーケードの下で研磨サービスを行っていましたが、その時のお客様も来ていました。
包丁は使うほどに切れなくなりますので研ぎながら使う道具です。
鋼がなくなるまでには何百回と研ぐことになるかもしれません。
ええ、包丁を研ぎに出しますと包丁の何倍もの研ぎ料金を支払うことになります。 そこで今は包丁の研ぎ方をお伝えすることに重点を移行しました。 そして講座の終了時には「疑問を解消できましたか?」が決まり文句になってしまいました。(^_^;

投稿: 西岡有二 | 2018年12月 9日 (日) 10時49分

ふんちゃん

 「台所でやさしさをつくる」
 というタイトルに、うっとりしました。
 お話…、すごくすご〜く聞きたかった!です。
 あちこちでお話ししたこと…、いつか文字にならないかなぁ…。
 うっとり。

 「率直」でありたいなぁと、私も思います。
 毎日、感じ、考えることに素直に向き合うということを
 意識してやってみようかなぁ〜と思いました。
 はた…と感じたことをしっかりと受け止める。
 自分の内にも、外にも、ちゃんと反応できるように…。
 何かに追われてばかりだと、
 せっかくのあれやこれやをつかみ損ねているかもしれない…と思って(^^)

 病院からは、全然連絡が来ないのですが、
 とてもゆっくりとした気持ちで待つことができています。
 娘も、私も…。
 慌てて入院とならず、こんな時間があるのは、
 まあ、ゆっくりいきなよ…と
 言われているような気がして、
 毎日のことごとをひとつひとつ受け取っている感じです。

 今日は、娘とジンジャーマンクッキーを仕込みました。
 今は、生地を休ませているところです。
 これから形を作って、焼いてみます。
 クリスマスの香りが漂ってきました〜(^^)

投稿: もも(^_^) | 2018年12月 9日 (日) 14時26分

ふみこ様 こんにちは

告白すれば 伊藤野枝、大杉栄・・・
だれひとり知りませんでした
かろうじて 平塚らいてうを さらっと知っているだけです。
ふみこさんが ここに書いてくれた 
伊藤野枝のことだけでも 息をのみました

「早く生まれ過ぎたと云わざるを得ない人物」
が過去には 本当に たくさんいる・・・
そして 知らないこともたくさんです

せめて 今を 素直に懸命に
暮したいと思いました

ありがとうございます! 
 

投稿: えぞももんが | 2018年12月 9日 (日) 15時33分

大野 さん

そうか、とふと、思い出したことが
あります。

わたしが20際代前半のころのこと。
青柳昌宏せんせいに、
アデリーペンギンについての記事を
書いていただきました。
当時せんせいは、
東京筑波大学付属盲学校
(現在の筑波大学付属資格特別支援学校)の
生物の教諭でした。

とても素敵な方で、
いろんなことをおそわったもです。
もしかしたら、王子さまの学校と
つながるかな……?


投稿: ふみ虫。 | 2018年12月 9日 (日) 17時27分

西岡有二 さん

入間市の会にいらしてくださり、
どうもありがとうございました。

包丁の未来が明るんで感じられました。

投稿: ふみ虫。 | 2018年12月 9日 (日) 17時28分

もも(^_^)さん

クリスマスですね。
12月1日にドアにクリスマスリースを、
部屋にオーナメントを飾って。
……それだけで、クリスマスの準備は
止まっています。

わたしも、何かおいしいものをつくろう。
ももちゃん、ジンジャークッキーって、どんな?

投稿: ふみ虫。 | 2018年12月 9日 (日) 18時00分

えぞももんが さん

いま、野枝さんがいたら、
決して黙ってはいないと思います。

原発のことも、
外国人労働者のことも、
ひとの働き方のことも。

未来を思うとき、
過去の先輩たちが応援してくれる。
そんな気がして、自分自身が
どんな先輩になれるだろう……と
思うのです。

投稿: ふみ虫。 | 2018年12月 9日 (日) 18時03分

ふんちゃん!

お知らせしたくなって、板切れから〜😊

ジンジャークッキーって、
シナモン、カルダモン、クローブ、ジンジャーパウダーを入れたクッキーです。
私が、クリスマスを過ごしたことのあるアメリカと、スウェーデンでは、このクッキーを人形の形に作って、ツリーに飾っていました。
スパイスたっぷりのクッキーは、本当に美味しいんです!
この香りがすると、クリスマスな気分になります😊

今年は、ツリーは飾らず、3番目ちゃんにリースを作ってもらい、4番目ちゃんに折り紙付きの絵を描いてもらって、クリスマス〜🎶にしました。

投稿: もも(^_^) | 2018年12月 9日 (日) 21時16分

ふみこさん

そうです!圭梧は今 その学校に通っています。歩行訓練で覚えた池袋を案内してもらいました。手引きをして 一応 私が前を歩いているけれど、実は 圭梧に連れられて 都会を歩きました!

長男は 卒業したら ふみこさんの近くで 小学校の先生になるかもしれず…
ふみこさんと 大野君は きっと近いうちに バッタリ出会うのではないかと思うこの頃です。

投稿: 大野 | 2018年12月10日 (月) 12時46分

もも(^_^)さん

ジンジャーブレッドともいう、あれですよね。
焼いたことはないけれど、
いんちきジンジャーを焼いてみようと
思います。

ありがとうございます。

投稿: ふみ虫。 | 2018年12月10日 (月) 21時42分

大野 さん

なんだかわくわくします。
おふたりとも、はばたきますよー。

大野さん、しっかり鍛えて、
たのしまないとね。

ありがとうございます、
佳いお知らせを。

投稿: ふみ虫。 | 2018年12月10日 (月) 22時00分

『師走』ではなく
『師スキップ』
と心にきめていたのに、
12月に入ってから、仕事がはじまる時間まで自宅にこもって家事をしていてよい日がただの1日もなくー
『師ボルトの100メートルダッシュ』
みたいなくらいの目まぐるしさです。
とうとう、ふみさま、みなさまと語らえる月曜日17時の時間も本日から生徒さんがいらっしゃるようになってしまいました。→あらま、おきょうさん、生徒さんが増えてこのご時世では喜ぶべきことなのよ。笑笑。
そんな忙しさの中でもふと、車運転しながら弟の好きな音楽がかかるだけで、まだツーンとなっちゃう私です。ボルトダッシュしながらも今年の冬はなかなか体があったまらないなぁー。
えぞももんがさんと同じく野枝さんのことは存じ上げてませんでしたが、大きな力と、自信と、強さと『愛』をもっていた方なんだなぁーと。

そろそろ今年の我が家の一字をきめる時期になりました。

今年は『進』にしようかと思います。

板切れが壊れそうになりました。なかなか電源入らず。

ここでちょいと、板切れなしの生活を振り返ろうよおきょうさん。天の声なのかもしれないけど、
ボルトダッシュで新しいものを求めてきました。

前に進むためなのかなー。

弟の写真も無事新しい板切れが引き継いでくれました。

投稿: おきょうさん | 2018年12月11日 (火) 00時06分

おきょうさん さん

ありがとう、ありがとう。

弟さんにも守られて、
「師ボルトの100メートルダッシュ」
走りきってくださいね。

生徒さんふえるなんて、
どんなにありがたいことか。
そして……しあわせだなあ、
おきょうさんさんの生徒さんたちは。
音楽のほかにも、
いっぱいおそわり、包みこんでもらえて。

投稿: ふみ虫。 | 2018年12月11日 (火) 20時26分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)