« 峠の釜めし | トップページ | くり返しについて思うこと »

2019年5月 7日 (火)

赤えんどう豆

 このところ、「豆かん」を好んで食べている。
 寒天、赤えんどう豆、みつ(黒蜜白蜜それぞれのよさがある)の3点が合わさった素朴な甘味だ。
 素朴だが、原材料にこだわれば、どこまでも贅沢ができそうでもある。最近できた店で「豆かん」のセットをみつけて求めたときには、忘れていたのだが……。
「豆かん」といえば、庄野潤三だ。
『貝がらと海の音』にはじまる庄野潤三のシリーズのなかに、「豆かん」がところどころに登場する。このシリーズは、子どもがみな結婚し、「山の上」の家にふたりになった夫婦の日常を綴る連作。「豆かん」を探して1作目から開いてゆき、10作目の『けい子ちゃんのゆかた』まできたら、奥付に「日常の日常性を理念的に再構築。文学上の課題」という書きつけをみつけた。どこかでみつけたものをここに写しとったものだろう。日常が何より大事であるというテーマで、おまえさん(わたしだ)も書きつづけるように、との確認の意志が伝わる。書きつけておいて、こう云うのも何だが、わかるような、わからないようなことばではある。

 銀座の博品館劇場へ剣幸(つるぎ・みゆき)さんのミュージカル「魅惑の宵」を見に行ったあと、阪田寛夫と三人で立田野へ寄って、豆かんを食べた。
                                  (『貝殻と海の音』より)

 それから立田野へ。二階でシニヤー組とヤング組と二つに分れて席に着き、それぞれ好きなものを取って食べる。こちらはいつもの「まめかん」。あつ子ちゃんは「ところ天アラカルト」にしたらしい。フーちゃんは「いなか汁粉」。
                                (『山田さんの鈴虫』より)

 さてわたしだが……、最寄り駅から帰ろうとするとき、自然に足が「豆かん」を置いている店に向かっている。通りがかるたび買うのには気が引けて、「そうだ、メイプルシロップを買っておかなくては」なんてことを思いだしたように呟き、店に入る。
「メイプルシロップ、メイプルシロップ……、あら、こんなところに豆かんがある。ま、ひとつ買っておきましょうかね」

 じつはわたしの母も、「豆かん」、「みつまめ」、「あんみつ」をこよなく愛するひとりであった。母はとくに「あんみつ」贔屓(びいき)だったが、「あんみつ」の立役者でもある赤えんどう豆の塩茹でにこだわっていた。
「豆が好きなの、この豆が」
 子どものころ、デパートへの買いものについてゆくと、甘味処「立田野」で釜飯を食べさせてくれ、帰りに「あんみつ」を買うのがならいだった。そのころは、赤えんどう豆のおいしさにまったく気づいていなかった。豆はいらないんじゃないか、というくらいに思っていた。
 が、母の「豆が好きなの、この豆が」という呟きは大きかった。これが道標(みちしるべ)となり、わたしをゆっくり、赤えんどう豆の世界に導いたと云ってもいい。

 豆かんセットの寒天、赤えんどう豆を器によそってみつをかけ、食べかけてしまいながら、はっと気づいて、母の写真の前に置き、「食べかけちゃったんですけどね、どうぞ」と供えたりする。
「ふみこ! あなたはまったく」
 と、たしなめられる。

Photo_2
「豆かん」はいまのわたしのブームですが、
ブームといえば、これもブーム。
友人からプレゼントされたちっちゃな一輪挿しに、
草を生ける。
テーマは「へんてこ」。

|

「日記」カテゴリの記事

コメント

ふみこさま。おはようございます。

「へんてこ」アート展みたいでたのしそうですね。
今は緑の葉っぱくんたちが輝いて手をふってくれているようですね。
緑の日にまた朝顔たちの種まき。これが私のこだわりみたいな
感じです。。。今年はていかかずらがすごい元気です。
花びらがかざぐるまのようにくるんとしていておもしろいです。

庄野さんの作品の「豆かん」すどうりしてましたー。
おじいちゃんの食後のチョコとか新幹線で大阪いくとき
おみやげにお兄さんの好物だったしゅうまいを買うところ
の描写はなんだかよく覚えてます。
私の父もしゅうまい弁当すきだったのでなんだか食べたく
なってきましたー。

その父の命日ももうすぐなのですが。。
その日の近くあたりに世田谷線の招き猫電車が
リニューアルして復活するそうです。ふふ。
「おまたせしましたー。さあのってのって。。」
ふみこさんも用事のついでにのってくださーいね。といってます。
ついでに。。ふみこさんすきそうな「へそまがり日本美術」展
府中市美術館で5月12日までですー。たのしいですー。

投稿: 真砂 | 2019年5月 7日 (火) 10時54分

ふみこさま。みなさま。
5月8日、こちらは旧歴の花祭りで、早朝にお寺さまに水筒を持参して甘茶を頂いてきます。それを、ゆっくり、ボーとしながら飲みます。
鳥の鳴き声や波の音だけがよく聞こえてきます。
こんな日常の一時を大切にしょうと思えてきたのは、庄野潤三作品に出会ってからでした。
庄野潤三氏があの世に旅立たれたと知った時は、これからどうしょうと思ったほどの好きな文学。大好きな気持ちは今も変わらず。
日常に愚痴が出始めた自分に気づくと本棚から庄野作品を取り読みます。
心がやさしくなれます。
確か、この広場で「山の上の家」が出版されたことを教えて下さったのは
真砂さまだったかと。宝物になりました。ありがとうございます。
今度、東京に行ったらの夢、立田野にいってあんみつを食べてみよう!
ふみこさんの頭の柔らかさにはいつも学んでます。
わたしも少し「へんてこ」さんを生みだしたいと思います。

投稿: ユリの木の花子 | 2019年5月 8日 (水) 11時12分

ふんちゃん皆様こんにちは。


誰かの言葉が道標になるときありますよね。

私は新入社員時代の当時の上司の言葉が
仕事をする上で道標になっています。

当時は本当に何もできなくて
よく上司の方からご教授してもらってました。
その中でも印象に残ってるのが
「ひとつの材料だけで判断しないこと」です。

結果を急ぐ私に叱咤して頂いた言葉です。
今でも時々思い出すということは
縁ある言葉だったんですね

投稿: たまこ | 2019年5月 8日 (水) 12時25分

真砂 さん

世田谷線の招き猫電車、
また走るのかー。
うれしい……。

こんどは、写真を撮って、
皆さんにも観ていただけたらいいな。

ま、ともかく、
乗りに行きたいです。
おしらせくださいまして、どうもありがとうございます。

電車のなかで、真砂さんのお父さまにも
お目にかかれそうな。

投稿: ふみ虫。 | 2019年5月 8日 (水) 23時01分

ユリの木の花子 さん

わたしも「立田野」に行き、
釜飯や甘味を食べ、
母にあんみつをお土産にしよう。

(しばらく供えますとも)。

投稿: ふみ虫。 | 2019年5月 8日 (水) 23時03分

たまこ さん

ことばを受けとめる。
それを胸に置きつづける。

とっても大事なことだと思いました。

「ひとつの材料だけで判断しないこと」

うーん。
深い意味を擁することばです。

投稿: ふみ虫。 | 2019年5月 8日 (水) 23時06分

ふみこさん、みなさまこんにちは。
豆かんの…あのお豆さん!実は私、子供のころから、あの豆が好きで、デパートであんみつや豆かんを食べた時には、母にいつも豆をもらってたべていました。あの少し固めの赤えんどう豆がなんとも好きで。読ませていただきながら、うなづく私です。

本を読んでいて、食べ物、甘味、ごはん、朝ごはんなどが出てくると嬉しくなります。
ぐりぐらの有名なパンケーキから、小説に出てくるお料理、そしてもちろんふみこさんのエッセイに描かれているお料理やゼリーもいくつか私も作らせていただきました。ふみこさんのお弁当レシピもどれもすごく美味しそうで、いくつか挑戦させていただきましたよ。こんな感じのお味なのかなあと思いながら。

こちらは、先月から準備をバタバタとしていたボランティアスタッフとしてのイベントがやっと無事終わりました。子供たち、母も手伝ってくれて、本当にありがたくて。私自信が手作りした遊びコーナーや景品の缶バッジなどを、お子さまから大人の方々まで、いろんな人達が喜んでくださり、嬉しい限りでした。
今年は頑張っていろいろなことに挑戦していきたいと思います。
ふみこさん、へんてこさんの草!とってもいい感じですね。なんだか話しかけてくれているようです、ふふふ…!

投稿: みゅー | 2019年5月 9日 (木) 11時06分

ふみこさま。おはようございます。

猫電くんからですー。

ふふ。よろこんでくださってうれしいですー。
12日母の日からぼく復活です。
ゆっくり休んで充電完了でーす。
写真とるときは車体前からとって下さるとリニューアル
された箇所わかります。どこかはひみつひみつ。。
みつけてね。

ふみこさーん。父の好物だった鰻。庄野さんも
こだわりがあって2枚のうち1枚はお酒のつまみで
もう1枚はうな重で食べるところも一緒なので。ふふ。
命日は娘と主人と3にんで同じことして食べようと思います。
焼き立てをとどけてくださるのですぐたべちゃいますよー。
では皆様いいいちにちをおすごしくださいねー。

投稿: 真砂 | 2019年5月10日 (金) 08時26分

ふんちゃんへ

五月晴れの良いお天気です。
洗濯物の乾きも早くなりました。
こちらでは連休中に田植えが進み水のはった田んぼに小さな稲が
お行儀良く並んでます。私の好きな風景です。

ふんちゃんから庄野さんを教えてもらいました。
シリーズを何冊か読みました。
穏やかな日常を綴られて義母の事で色々ギスギス尖っていた頃で
束の間ほのぼのとした気持ちになれました。
「初孫」は私の好きな日本酒になりました。
また久しぶりに読んでみようかなぁ。
思い出させてくれて ふんちゃんありがとうございます!

投稿: ハチミツ | 2019年5月10日 (金) 08時58分

みゅー さん

いまではわたしも、
豆が少ないと、「こりゃみつ豆じゃないね!」
なんて文句を云う始末。
このおいしさを、子どもの時分からわかっていたなんて、
さすがみゅーさんです。

へんてこ草いいでしょう?
少し前は、ねこじゃらしが1本、
にやっと笑っていたんです。

投稿: ふみ虫。 | 2019年5月10日 (金) 10時45分

真砂 さん

猫電車くん、
うなぎくん、
どうもありがとう!

投稿: ふみ虫。 | 2019年5月10日 (金) 10時46分

ハチミツ さん

庄野潤三の世界は、
日本文学の大事な大事な宝です。ね。

晩年シリーズのほかも、すばらしいのです。

ここから小沼丹の小説にいき、
読書の旅がひろがります。

投稿: ふみ虫。 | 2019年5月10日 (金) 10時49分

ふんちゃん

 「豆かん」
 あまり食べたことがないのです。
 どうしてだろ?
 なので、そのお豆さんの魅力を知らない…でここまで来てしまった…。
 おおっ、いつか、お豆さんに出合いたいなぁと思いながら、
 ふんちゃん、みなさんのお話を聞かせていただいていました。
 土地柄とかあるのでしょうか???
 これから、出合えるのがたのしみになりました。
 一輪挿しの「へんてこ」も、
 とってもステキ。
 「旅」では、お部屋にお花を飾ることができないのですが、
 3番目ちゃんが折り紙でチューリップを折ってくれて、
 それを飾っています。
 茎と葉っぱもついていて、とても可愛いのです。
 そのお花の中に、ティッシュを忍ばせて、
 そこに好きなアロマオイルをたらり…としてみたりしています。
 これは、なかなかいい感じです(^^)

 毎日、試行錯誤の食事。
 一度に沢山を食べることができない娘は、
 少量で高カロリーのものを食べたいのに、
 ご飯の量が少ないもの…とすると、
 カロリーコントロール食なるものになってしまい、
 ついてくるドレッシングなんかがカロリーハーフだったりしていたのです。
 それを見るたびに、がっかりしていたのですが、
 先週後半から、食事を変えてもらい、
 成人食の半分というヤツにしたら…、
 パンはでるもの、ドレッシングは普通のだもの、
 娘は大喜びです。
 先生が、娘に食事日記をつけることを提案してくれて、
 プリントを作ってくれました。
 これを書くのは、娘もたのしみにするようになり、
 そのやりとりで、先生たちも娘のココロが 
 少しずつ分かってきてくれたようです。
 「ウヨキョクセツ」
 「ヤマアリタニアリ」
 ではありますが、 
 体重も順調に増えてきていて、
 ふっくらかわいい顔が戻ってきました。

 この「旅」で、
 「シシュンキ」とか「ジリツ」とか…
 そういったことも考えるようになりました。
 わたし…、ついつい、守り過ぎちゃってるな…って思ったり…。
 この時期って、本当に嵐のようですね。
 ひとりで、感じ、考えることが大事な時期でもあるんだなぁ。
 「はなれる」ということが、私たちの今のテーマとなっています。
 とても、いい経験をしていると思います。

 今日の札幌は、とてもいい天気。
 「旅」のお部屋からは、大学構内に咲いているお花がたくさん見え、
 とてもいい景色。
 今は、桜のピンクと、こぶしの白が、とてもキレイです。

投稿: もも(^_^) | 2019年5月11日 (土) 15時58分

ふみこ様 おはようございます

わたしも ももさんと 同じく
「豆かん」を知りませんでした。
ふみこさんの お話を聞きながら
それは あんみつの事かな?
でも もっと シンプルなもののようだ・・・と
いろいろ想像してみました。

テレビの旅番組などで 甘味処で 
ところてんに黒蜜をかけていたり
丁寧に作られた あんみつが出てきたりすると
なんとなく 一目置きます。

こちらは もっと ぶっきらぼうな
食べ方なので あこがれがあります。

わたしも 庄野潤三シリーズを ふみこさんに
教えていただきました
「日常が何より大事である」
また 読み返したくなりました。

ふみこさん もうすぐ ライラックが咲きますよ。

投稿: えぞももんが | 2019年5月12日 (日) 06時00分

もも(^_^)ちゃん

だんだん旅らしくなってきましたね。

旅人の要求もはっきりして、
旅の登場人物(援け手)への説明もうまくなったというわけですね。

「ジリツ」は目標にしなければなりませんが、
その前に子らに見せたり、伝えたりしなくてはいけないものも、
たくさんありますしね。
見せるべきを見せ、伝えるべきを伝えていると
(……べき、なんてことばを使ってごめんなさいね)、
あっさり「ジリツ」」が実現したりするのじゃないかな、と。

ね、旅のおはなしを聞くのが、
たのしくてたまりません。
おもしろくなってきましたぞ。

投稿: ふみ虫。 | 2019年5月12日 (日) 13時11分

えぞももんが さん

ま、ごく大雑把に申すなら、
「みつ豆」のフルーツ抜き、
豆増量、みたいな感じです。

でも、わたしはそこにフルーツを加えたり、
時にバニラアイスクリームをのっけたりするので、
そういうのは「豆かん・クリームみつ豆ver.」です。

「ところてんに、黒蜜」
というのは、「くずきり」じゃないかな。

ライラック!
あこがれてしまいます。

ライラック!
りらの花。

投稿: ふみ虫。 | 2019年5月12日 (日) 13時16分

ふみこさま。

こんにちは。
「豆かん」食べてみたいです!
私は、今日、母の日ということで、母と一緒に(はるくんも)
ばら寿司を作りました。
庭のふきをとってきて、一緒に入れました。
ふきの香りが、ぷーんとしておいしいばら寿司ができました!

母の日に、母と一緒に作れるのは楽しいです。
いつまでも母が元気でいてくれるといいなぁ。
はるくんも、「お寿司は、切るようにまぜるんよな」
と言って、はりきって混ぜたり、うちわであおいでくれたりしました。

いつの日か、ふみこさんにも食べてもらいたいです!
では、またぁ。

投稿: こぐま | 2019年5月12日 (日) 14時43分

こぐま さん

まあ、なんてかしこいはるくんでしょう。

あたたかく、知恵いっぱいのおばあさまと
大きいおばあさま(もちろんお母さまも)から
受け継いでいるものが、じゅうぶんに働いているようで。

たのもしいこと。

ばら寿司、きっといくか、
ご馳走にあずかります(ずうずうしい)。

投稿: ふみ虫。 | 2019年5月12日 (日) 23時19分

ふみこさま こんばんは

連休が明けてから暑い日が続きました。今日は夕方から夕立かな?雷とともに強い雨が降りました。

豆かん、関西でもあまり見かけません。私がお店を知らないだけかもしれませんが。
一度、地元の百貨店に全国うまいもの市が来た時に出店していた浅草の甘党のお店で食べました。運ばれてきたとき本当に豆が多くてとても驚きました。
そういえば、お店では食べませんが、ところてんも(子どもの頃はあまりなじみがなかったのですが)関西は黒蜜をかけます。酢醤油のたれ付もお店にはありますが…ところ変わればいろいろ変わりますね。

前にふみこさんがあちちの小瓶を紹介してくださったのを真似てこの冬は紅茶にスパイスを入れて楽しんでいました。そろそろ暑くなってきたし…とゼラチンを入れて甘くない紅茶ゼリーを作り始めました。そのままでもスパイスが効いておいしいですし、はちみつをかけてもおいしいのです。

庄野潤三さんの『貝がらと海の音』を図書館で借りてきました。ゆっくりかみしめたいと思います。

投稿: あすちるべ | 2019年5月13日 (月) 23時41分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)