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2019年9月17日 (火)

佃煮

 朝、炊きたてのご飯をお茶碗によそい、お椀にはおみおつけをよそって、食卓につく。
 おかずは玉木屋の佃煮である。
 先ごろ母方の叔母から「玉木屋の佃煮、召し上がっていただきたく少々ですが◯◯デパートよりお送りいたしました。ご賞味下さいね」という送り状が届いて、2、3日、わくわくしながら荷を待った。
 佃煮は、子どものころからの好物だ。好物というより、憧れの、と云ったほうがよいかもしれず、佃煮と聞いただけで、ご飯が2膳も3膳もゆけそうな心持ちになる。そういう心持ちを招(よ)んでしまうところが、佃煮のすごいところだ。

 送り状に、叔母は母方の祖父母の手紙を同封してくれたのだった。わたしが川崎のおじいちゃん、おばあちゃんと呼んでいる大好きなふたりだ。この世から旅立って久しいが、ふとしたときに、「おじいちゃん」と呼びかけ、「おばあちゃん」のしごとを追いかけるようなことが、いまもつづいている。
 手紙の消印を見ると、1978125日の12時から18時のあいだに神奈川県の鶴見で投函されたことがわかる。祖父は手紙に「玉木屋の佃煮」のことを書いている。

〈祖母の手紙〉
 お寺からの落葉が舞い 掃いてもはいてもたまって溝に入り込み 毎朝おじいちゃん 掃除するのにたいへん 皆さんお元気の事と存じます お蔭様でこちらも元気です 十月の老人検診でも二人共異状なしでした 今年は私の生れ年(ウマ年)でした ふりかえってみて ほんとうによい年でした お寒くなってきて毎晩のお風呂が楽しみです きれいなお家に深々と身を沈めて ああ毎日ありがたいなあと今の生活に感謝しています
(中略)
 いよいよ十二月 何かとお気忙しくお過しでせう 私共隠宅は別にどうといふ事はないのですが 気持だけはフワフワしてきます 日が短く 夕暮れの早いのに驚きます おじいちゃんが勝手な事おねがいしました 我がままおゆるし下さい みなさんお体お大事に

〈祖父の手紙〉
(前略)
 例年の通りお歳暮をいただく季節となりましたが、私からは茶たく(五枚一組)を贈呈したいと思い、目下うるし塗りの最中です。うるしをよく乾燥させて仕上げるために、なお若干の日数が必要です。従っておいで下さる日は十五日以降にして下さい。
 毎年いただく品物のうち、玉木屋の佃煮は折り詰めではくバラ売りのをお願いします。希望品種はワカサギ、カツオ角煮、ハゼ甘露煮……(各三〇〇グラムづつ)。勝手なお願いをお許し下さい。

 読んでみて驚いた。
 祖父母は遠慮がちなひとで、わたしの母や父に対しては、もらおうという品物に注文をつけるようなことはしなかった。……ように思う。まあ、これは子どもの印象で、思いこみであるかもしれないのだが。
 じつに風合いのある手紙だ。なつかしさを超え、未来住む祖父母から手紙を受けとったような、そんな気分になっている。

 叔母のやさしい心遣いのおかげで、朝が待ち遠しい。
 佃煮をちょんと箸でつまんでご飯の上にのせ、祖父母とはなしをする。
「ね、年をとるっていいね、日常のありがたみを噛み締められるわたしになりました」
「それでよし」とでも云うように、ふたりはかすかにうなづく気配。

Photo_20190916192401
これはわたしに残された、祖父の手になる
鎌倉彫りの茶托です。
あれ?4枚しかないのは、どうしたわけでしょう……。
祖父は晩年鎌倉彫りをならって、たのしんでいました。
それは器用なひとでしたので、
「塗り」も自分でできるようになっていました。
うるしにかぶれる質(たち)の祖母は、
祖父が「塗り」の作業をする日には、
わたしの家に避難していたりしましたっけ。
茶托のほか、手鏡、文箱、木皿をわたしは譲りうけました。

〈お知らせ〉

どくしょかい

朝日カルチャイセンター新宿において、講座がはじまります。
まずはわたしが選んだ1冊をそれぞれ読み、声に出して読み、読後感を分かち合うところからはじめます。その1冊は……、『まつりちゃん』(岩瀬成子/理論社)——各自でご用意いただき、読んできてください。

日時 2019年10月28日(月)、11月25日(月)、12月23日(月)3回
     13:00〜14 : 30
受講料 会員 10,560円(入会金は5,500円。70歳以上は入会無料)

      一般 12,540円
お問合せ・申しこみは下記へ
朝日カルチャーセンター 朝日JTB・交流文化塾 新宿
https://www.asahiculture.jp/shinjuku
でんわ 03-3344 -1945

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「日記」カテゴリの記事

コメント

ふんちゃん皆様こんにちは。

時を超えた手紙素敵ですねー。
そんなふうに私もできたららいいな、と
想像を巡らせました。


先日病院に行き、しっかり赤ちゃんを確認。
もうしっかり体ができていました。

2年ぶりですが
何回見ても嬉しいものですね

投稿: たまこ | 2019年9月17日 (火) 12時23分

ふみこさま

ホカホカご飯に佃煮。。いっしょにいただいたような
温かい気分になりました。時を超えたようなおてがみも
こころがふわっとしました~。

お返しに私からもホカホカ気分をおとどけしまーす。
天への祈りとどけたので。。そうだ。。
天空の湯(勝沼ぶどうの丘)この間山梨の友人からいいよ~
と言われていたのを思い出し行ってきました~。
ブドウ畑の丘を上ったり下ったりしながら駅から20分
とことこ歩いてみました。南アルプスはちょっとくもっていたけど
露天風呂からみたブドウ畑と家々の織り成す景色がすてきで
どちらかというとブドウ畑の勢いがすごくて家が埋もれている感じ
なのがたのもしかったです~。近くのぶどうばたけでいろいろな種類の
ブドウを試食しおみやげにおきにいりの甲斐路を買ってみました。

ふみこさんのご飯のデザートにおとどけするつもりで
書いてみました~。このひらめきも天からのお手紙かも
しれませんね。ふふ。

投稿: 真砂 | 2019年9月17日 (火) 17時41分

たまこ さん

赤ちゃん。
元気にそこで、暮らしはじめているのですね。

しみじみ、すごい!と思ってしまいます。

投稿: ふみ虫。 | 2019年9月18日 (水) 14時33分

真砂 さん

露天風呂。ぶどう畑。
ぶどう(甲斐路)。

お福分けいただきました。
感謝。

投稿: ふみ虫。 | 2019年9月18日 (水) 14時35分

おじい様 おばあ様から時を超えて届いたお手紙 私が読んでも心があったかくなります。お二人が寄り添って 慈しみ会いながら暮らしておられた様子が 伝わってきます。おねだりもとてもいいですね。。。。
私も 少し肩の力を抜いて ゆったりと生きていけたら、、、と思います。
この間から 私も 同居していた祖父のことを思い出しています。とてもかわいがってもらいました。何年生の時か 国語の時間に 目の中に入れても痛くない のことわざがあり 先生が NさんのおじいさんがN さんのことを思っておられるような感じです。とみんなの前で言われました。恥ずかしかったけどうれしかったです。そういう思いでは一生の宝物です。

田辺聖子さんの短編集読んでます。1番先に二階のおっちゃんを読みました。
おもしろ過ぎです。おっちゃん語録はこれからの私に大きく影響しそうです。ツル子さんも大好きです。出てくるお料理おいしそう‼

投稿: ann | 2019年9月20日 (金) 15時06分

ann さん

「とてもかわいがってもらいました」
の記憶ほど、大切なものはないかもしれない……、
と、最近考えるまでになっています。

いいおはなしを聞かせていただいて。
どうもありがとうございます。

投稿: ふみ虫。 | 2019年9月21日 (土) 11時25分

ふんちゃん

 佃煮と聞いて、
 ものすご〜く食べたくなり、近所のスーパーで買ってきてしまいました。
 ほかほかごはんに…。
 おいしくてたまりません。
 北海道は、イクラの季節です。
 ああ、北海道に住んでいて良かったなぁと、
 一番感じる季節でもあります(^^)
 昨年は、とっても高くって手が出なかったのですが、
 今年は、手頃な値段だったので、
 お母さんが買ってきて漬けてくれました。
 佃煮とイクラ。
 最高の秋です。

 今日は、その中でも、久しぶりに晴天。
 ふと思いついて、ここのところムズカシイ顔をしたり、
 尖った発言をしている3番目ちゃんを誘って、
 近くの大きな公園へお散歩に行ってきました。
 きもちいい!!
 ポストカードになりそうな景色の場所で、
 しばしうっとり眺めていました。
 2番目ちゃんも一緒に来たので、3人でお散歩です。
 昨年の今ごろは、混乱して、家から出られなかった2番目ちゃん。
 カラダもココロも、たくましくなったなぁと
 後ろ姿を見ながら、じんわりしました。

 この二人。
 本当にめんどくさ〜い「シシュンキ」という感じの空気を 
 身にまといがちな時期なのですが、
 それぞれ会話をすると、色々考えさせられてもいます。

 2番目ちゃん。
 ある日の夜、わたしが久しぶりに勉強会に出かけて帰ってきて、
 久しぶりにゆっくり会話ができたのですが、
 「入院して、いろいろ考えたのです」と、
 いろいろなことをことばにして伝えてくれました。
 自分は弱いとわかったこと。
 弱いからいろんなことがあったのだと思ったこと。
 友だちは、たくさんいらないと思っていること。
 命と魂ってどう違うのかって考えたこと。
 他の子は、こんな話をしないから、
 友だちと一緒にいてもたのしく思えず、
 (主治医の)先生と話したり、
 学校の学びのサーポーターの人と話をしている方が
 しっくりくると思っていること。
 などなど…。
 よく考えてるなぁと思いました。
 今は、歴史がとにかく大好きで、大学で学びたいと思っているようです。
 よく勉強しています。

 3番目ちゃんは、児童会長になって、
 委員会でうまく立ち回れないことを悩んでいたようでした。

 すごいなぁ〜。
 改めて、子どもの成長を感じました。
 わたしの涙週間は終わりを迎えたので、
 今は、読書とたそがれの季節です(^^)
 
 読書とたそがれと、佃煮とイクラ。
 いい季節です。
 

投稿: もも(^_^) | 2019年9月21日 (土) 15時52分

もも(^_^)ちゃん

子どもたちの成長には、
難関が用意されていて、
おそらくそれは、
まわりの大人たちのためでも
あるのじゃないでしょうか。

難関と気難しさを愛しながら、
のんびり一緒にいればいいかなあ、なんて
考えていたような。

うちの3人は、それぞれ大人になりましたが、
それでも、わたしのもとでは、
油断し、気を許して、昔にもどったりします。

そのためのわたしだ!
と思いながら、「そこ」にいます。
ただただ「そこ」にいます。

投稿: ふみ虫。 | 2019年9月21日 (土) 18時11分

ふみこさま。

こんばんは。
しそ昆布の佃煮が好きです。
ごはんといっしょにパクパク食べています。

今、文字だけの童話集を作っています。
不器用なのできれいに作れないんですが、せっせと作っています。
やりだすと一気にやりたくなる私の性格。
家族はあきれながらも見守ってくれています。

そうそう、おととい、スマホがこわれました。
なにもできなくなる感じでした。
どれだけスマホに頼ってたんでしょう。
でも、便利なものですよね。
うまくつきあっていきたいです。
修理に出しました。治るのに10日かかるそうです。

投稿: こぐま | 2019年9月21日 (土) 20時06分

こぐま さん

製本をされている、ということ?

なんだかいいなあ。
手伝いたいなあ。

スマホのない10日間が、
物語になりますね。

投稿: ふみ虫。 | 2019年9月21日 (土) 20時08分

ふんちゃん

 今日は、のんびりしていたというのもあり、
 ふんちゃんがすぐにお返事をくださったというのもあり、
 またおじゃましちゃいました。

 そうなのです。
 難関、気難しさを愛する感じ。
 こうして、「めんどくさいな〜、あんたたち」と言いながら、
 散歩して歩くのが、とてもうれしいのです。
 元気になったなぁ…と、感じて…。

 わたし…、この1年間ず〜っと緊張して過ごしていたようです。
 毎日は、割とのんびりのほほ〜んとしてよ〜っと、
 と過ごしていたのですが、
 それも、「わたしは、そうしていなければ…」 
 というような緊張があったような気がしてきました。
 退院して1か月経って…、
 ようやく、そのあたりを自覚できてきて、
 少しずつ、その緊張がほどけてきている感じです。

 ホントはね…、やっぱりどこかでわたしがもう少し…
 何かを感じてあげられていたことがあったのじゃあないかとか…
 考えるともなく、感じてしまったりしていたのですが、
 ようやく、「こんなわたしたちだから、娘は、思いっきり、
 こわれてみれたのではないか」と思えるようになってきました。
 そうして、いろんな人に支えられて、
 ここまできた…。

 毎日、なんだかとんちんかんで過ごしているのですが、
 普通に過ごせているということに、
 少しずつ慣れてきました。
 これでいいんだなぁ〜って。

 今年は、とても素直にキレイな景色を感じています。

投稿: もも(^_^) | 2019年9月21日 (土) 22時09分

ふんちゃんへ

すっかり秋ですね。稲が黄金色に光ってます。
今日は近くの竹駒さんのお祭りで子どもたちがお神輿担いでる音が
聞こえてきます。雨が降らないといいのですが・・・。

素敵な茶托ですね。
丁寧なお仕事をされる方だったんですね。
写真からも伝わってきます。大切なたからものですね。

北海道に一人で行って来ました。
夫は仕事で行けなくなったのです。
仕方ないけど、かなりガッカリでした。
レンタカーやホテルはキャンセルし、今回会う予定の無かった友人や
姪とその子ども達に会って来ました。
LCCはお安いけどキャンセルしても1円も戻って来ないのですね。
これは初めて知りました。日程を変更したチケット取ることもできる
ようですが、なかなか休みも取れないので一人で決行したのです。
気持ちがなかなか切り替えられず複雑な気持ちでの旅でした。
父は元気そうでホッとしました。その姿が見られてよかった。

夫は仕事の事で色々と考えるタイミングのようです。
どんな答えを出すのか・・・。
これもじっと見守るだけです。

投稿: ハチミツ | 2019年9月22日 (日) 10時22分

ふみこ様 おはようございます

なつかしい手紙を佃煮と一緒に
送ってくれる・・・
こんな 嬉しい 贈り物を思いつく
ふみこさんの 叔母さま 素敵です。

おふたりの 暮らしの風景が見えてくる手紙の内容が
ゆったりとした時間の流れを感じ
ふみこさんが
「大好きな おじいちゃん おばあちゃん」という
のが わかります。

なんだか 庄野潤三の本が読みたくなり
本棚から引っ張り出してきました
「貝殻と海の音」
オレンジの付箋がひとつ
自分でつけたのに 記憶が全然ありません
ぺージを開くと

 あとで長女から電話がかかった。「いま、向ケ丘遊園のフォーム
にいます。ロマンスカーに悠々間に合いました。
あれから生田の駅まで走ったの。お騒がせしました」という。

という 懐かしい風景が出てきました

そろそろ 本を読むのに いい季節です
ふみこさん ありがとう。

投稿: えぞももんが | 2019年9月23日 (月) 06時47分

ふみこさま みなさま こんにちは

ふみこさんの叔母様、おじい様、おばあ様
すてきですね。
贈ってくださる気持ちを大切に、
すきなものをちょうど良い分だけ。
そんなふうにおねだりできる(いえ、伝えられる)って
いいなぁと思います。
そして、おばあ様のフォロー。
日頃のお二人のすてきな関係が感じられるようです。

もも(^_^)さんの
「こんなわたしたちだから、娘は、思いっきり、
 こわれてみれたのではないか」のお言葉に
思わずうなずいてしまいました。
そして、ふみこさんの変態のお話を思い出しました。
さなぎの中で、溶けて作り変える。
安心して溶けて変われる環境があってこそなんですよね。

離れたところから、こっそりこっそり、応援しています。

仕事で関わる子どもたち、クラスや外で頑張って、
特別支援の教室に来て、発散したり、好きな時間を過ごしたりして
心を整えてまたクラスに戻っていきます。
(というほど、きれいな時間ではなかったりしますが;;)
そんな場が大切なんだ、と改めて。

新米に佃煮のっけて食べたくなってきました。
わたしは、あさりとあみの佃煮がいいなぁ。


投稿: さのまる | 2019年9月23日 (月) 10時06分

もも(^_^)ちゃん

こんなわたしたちだから……、
思いきりこわれることができた。

という感じ方、
拍手喝采でございます。

ほんとうにそうだね。

やったね。
と、云いたい思いです。

投稿: ふみ虫。 | 2019年9月23日 (月) 22時32分

ハチミツ さん

ひとりを練習。

というのは、若いころからのテーマでした。
練習をつづけてきました。

できるようになった、という一面は
ありますが、同じように、
夫婦、母娘、友だち関係、仲間を
練習してきているので、
ひとりが思いの外、「つまんない」ことがあります。

ひとり旅(仕事はほとんど、ひとりです)は、
自由であり、そしてつまんないところがあります。

ハチミツさんの旅、
凛として見えました。

投稿: ふみ虫。 | 2019年9月23日 (月) 22時36分

えぞももんが さん

わたしもこの秋は、
庄野潤三を読みに読もうと
思っています。

古い本、分厚い本も、
書架のなかで光を放っています。

投稿: ふみ虫。 | 2019年9月23日 (月) 22時38分

さのまる さん

いいね、いいね。
さのまるさんの教室は。

ひとはどこかで発散し、
どこかで自分を取り戻さないと。

つい「がんばれ」なんて云いそうになりますが、
子どもはみんな(たぶん大人も)、
すでにがんばっていますね。

追伸
明日更新のブログも、
見てきださい。
見て、いろいろおしえてください。

投稿: ふみ虫。 | 2019年9月23日 (月) 22時42分

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