ふみ虫とふみこ
ふみ虫 ことしも終わるね。
ふみこ 終わるね。ゆったりしていたいから、「2019年が終わって2020年になる」というところを、ぼんやり受けとめたい。
ふみ虫 と、云いつつ、クリスマスの翌日、お正月の支度はじめてたでしょ。せっかちだなあ、と思って見てました。さっきもお屠蘇仕込んでたの、見たぞ見たぞ。
ふみこ まあね。ついね。
ふみ虫 2019年、どんな年だった?
ふみこ おもしろい年だった。友だちにもいっぱい会ったし、なつかしいひとからも連絡があって、来年早早会う約束をしたの。「生きて元気なうちに会いましょう」って。
ふみ虫 家のしごともたのしんでいるように見えたな。11月は、コズエ(二女)が独立したから、引っ越し、部屋替えにも燃えてたでしょ。畳の部屋をコルクに貼り替えたりして、あれ、すごい勢いだった。おかげでこっちの仕事が綱渡りになりました。どうする気だろう……って思ったよ。締切落とす気?って。
ふみこ あはは。今回、恐ろしくぎりぎりだったけど締切は守りました。
ふみ虫 恐ろし過ぎだよ。たしかに、全部間に合ったけど。余裕ってことは考えないの?
ふみこ 考えない。
ふみ虫 年賀状は出したの?
ふみこ よくぞ聞いてくだされた。12月28日に1日かけて200枚書いて、投函した。深夜12時に宛名を書き終えて、もうこれでいいかな?って思っちゃってね。いつもならひとこと何か書き添えるのに、やめてね、地域ごとに束ねることさえせずに、抱えて走って、ポストにどさっと詰めこんだの。
ふみ虫 ひとこと書かずに?
ふみこ そうなの。でも、宛名書き自分でしたから、そこに気持ちは込めたつもり。……だめ?
ふみ虫 だめじゃないよ。だめって云ったところで、もう投函したんでしょ?
ふみこ 投函しちゃいましたー。
ところで、ことし、仕事はどんな感じだったの?
ふみ虫 こちらもおもしろかったよ。よく働いた、と云っていいんじゃないかな。その意味では、そちらの「しごと」とこちらの「仕事」も、勢いでバランスがとれた感覚だったけど、どう?
ふみこ そうだったね。
ふみ虫 教育委員の役目としては、今夏、小学校の教科書採択があって、勉強したー!という実感もあります。会議もいっぱいあったなあ。だけどほら、わたし、会議好きだからさ、充実してた。
ふみこ 前から聞こうと思ってたんだけど、どんなふうに会議が好きなのさ。
ふみ虫 公的な発言の場でも正直であろうとすることにも、メンバーの目を見てやりとりしていくことにも、意義を見出してるのよ。この会議を通して実現させたいこと(実現させたくないことも)をはっきりさせる。この目標があるからこそ、会議に賭けられる。
ふみこ そういうところは、家のしごとも同じだね。夢中になるっていう意味では、共通してるのかも。そうだ、セカンドスクール(小学校の6泊7日の宿泊学習)にも行って、なんだかたのしそうに帰ってきたよね。
ふみ虫 うん。わたしは最初の1泊だけ参加させてもらったんだけど、せんせいの力に目を見張ったの。子どもがみるみる変化していく様(さま)にも驚きました。前の年の中学のセカンドスクールのときにも感じたんだけど、教員という仕事は誰が何と云おうと素晴らしい! まわりの大人として、教職員を理解しようとして、応援して、守って、おもしろがる。これがどんなに大事かって思わされてるの。
ふみこ うちの場合、まず親の力不足というのがあるわけなんだけどさ、まわりの大人たち、学校のせんせいたちにうちの子どもたち、いっぱい育ててもらったからね、恩返しもしないと。そうだ、千川小学校の前校長・飯田信夫せんせいの本を「ふみ虫舎」から刊行したね。あれは、わたしもうれしかったわ。
ふみ虫 ことしのトピックスです。久しぶりの編集作業と本づくり。
ふみこ その仕事が本格的にはじまるとき、お酒辞めたんだったよね。あれ、いつ?
ふみ虫 2018年の12月はじめ。それから飲んでないからね。
ふみこ 酔って眠くなってる場合じゃないって、こと?
ふみ虫 うん。時間を生みだしたいと思い、どこかを変えたいと思い。大酒飲みだったからねー。辞められてほっとしたの。ああ、依存症じゃなかった、って。
ふみこ でも、70歳まで辞めようと約束したのよね、ふみ虫さんとわたし。
ふみ虫 うん、うん。依存症じゃなかったかもしれないけど、途中でちょっぴりとでも飲んだら、またどっと飲んでしまうような気がしたし、そうでなくても、お酒を飲まないことで、日常的に時間がつくれたのは確かだったし。その分、仕事しようと思った。
ふみこ はい。家のしごともせっせとします。
ふみ虫 仕事のはなしのつづきをするね。
尊敬してやまない庄野潤三せんせいのお宅に伺って、長女の夏子さん、長男の龍也さん、龍也さんの夫人の敦子ちゃんとお会いしておはなししたり、田辺聖子さんのお洋服をデザインした藤本ハルミさんとお会いしたり、驚くべき出会いもありました。
12月に作家の青木奈緒さん、働き方研究家で聞き手の専門家でもある西村佳哲さんとの対談はとくに印象深かったな。友情の芽生えによって、仕事が深まることを実感した年でもありました。
ふみこ 「どくしょかい」というのを朝日カルチャーセンター(新宿)ではじめたでしょう? それはうまくいってるの?
ふみ虫 うん、何かやりましょうと、声かけていただいて、「どくしょかい」って答えて、実現したの。1期3回(ひと月1回)やってみて、1期で1冊読むというスタイルができたんだ。いま、『まつりちゃん』(岩瀬成子)を読み終えたところです。
1月からの期では『貝がらと海の音』(庄野潤三)を読みます。だから、この講座、つづけようと思わず、「今期この本を読むのか、じゃ、参加してみるか」と思って参加していただけるといいなと思ってるの。
ふみこ いいね。お仲間って大事だよね。AIの時代になっていっても、仲間との活動を通して、AIのすることをチェックできると思う。「それ、ちょっとちがうんじゃないかな」と物申したり。「これはこうしたらどうでしょうか」と提案したり。でないと、AIのすることが人間のチェックなしに、落ち着いちゃう。
はなしがちょっと脱線したけど、エッセイの講座はどうなの?
ふみ虫 10年つづいたの。通信講座を含めて、いま全部で60人の仲間ができたのね。2020年は100人まで仲間をふやそう、と思ってる。地方に住むひととも交流できるように。これは夢。
ふみこ 日常生活って、なんでもないことのようだけど、奇跡が積み上がってできているんだね。……ということがよくよくわかった2019年でした。
ふみ虫 まったく同感。
ね、おせち料理いっしょにつくろう。
***
広場の皆さま2019年、たいへんお世話になりました。
2020年もよろしくお願い申し上げます。きっと佳い年にしましょう。
山本ふみこ
「年徳神」父がいたころは、父が大晦日に墨をすって
書いて、居間に貼っていました。
父の字を真似て、書いてみました。
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