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2019年12月 3日 (火)

12月1日

 ことしも12月がはじまった。
 12月はじめの日に、決まってわたしは歩みを止める。どんなに急いでいても、忙(せわ)しなくても、立ち止まらずにはいられない。こんな日は、ほかにない。

 121日。
 ぐーちゃんの命日。
 このころの空の色、このころの気温、このころの風の音がこぞって記憶を手繰りよせにかかる。悲しみにからめとられないように抵抗しながらも、わたしはどうしてもぐーちゃんが旅立った朝の気配のなかで立ち止まり、じっとしている。
 痛みに近い悲しみに凍えた朝。34年前の朝。
 あの日、わたしはそれまで思ってもみなかった死生観を身につけた。

 ぐーちゃんは前夫の妹だ。
 同じ学校の後輩でもある。
 自動車事故。手術ちゅうの輸血。C型肝炎。劇症肝炎。
 ぐーちゃんはあれよあれよという間に、旅立った。22歳。確かに見送ったし、白い花一色の葬儀、会場を包んだ映画「炎のランナー」のテーマ曲Chariots of Fire Vangelis(ヴァンゲリス)、アルビノーニのアダージョも記憶に残っている。
 それでもぐーちゃんは、生きている。いつもわたしのなかにいる。もちろんぐーちゃんの父であるチュウトウサンのなかにも、母であるヤエバアのなかにも、兄であるムークンのなかにも、友だちのなかにも、生きているにちがいないから、「わたしのなかにも」と書かなければいけない。
 でもこんな場合、自分でないひとのことは、ほんとうのところよくわからないし、「あなたはどうですか?」なんて尋ねたところで、意味がない。
 ともかく、わたしのなかにも、ぐーちゃんはいる。
「さてこれは……、ぐーちゃんに理解されるだろうか」というのが、わたしの感じ方であり、その感じ方が存在なのである。

 121日がめぐるたび、その昔ぐーちゃんがわたしに贈ってくれた(16歳のぐーちゃんが、学校を卒業する20歳わたしに)本『ぼくたちは幸福だった ミルン自伝』(A.A.ミルン 著/原 昌・梅沢時子 訳/研究社)の分厚い本をばさっと開く。開いたからどう、というわけでもないのだが、これは毎年ぐーちゃんとする遊びだ。

 A.A.ミルンは『クマのプーさん』『プー横丁にたった家』で知られるイギリスの児童文学者、ファンタジー作家、詩人である。プーさんの物語が大好きなぐーちゃんは、手紙に「piglet」とサインする。プーさんの物語に登場する、コブタだ。

 そうしてことし、開いたページで拾ったことばはと云えば、「小説」と「ヒューモア(ユーモア)」だった。そうか、と思う。
 兄のムークンとわたしが離婚したことを、ぐーちゃんに理解されるだろうか、とは、ときどき考える問題だ。「うーん」と云われそうな気がするのだが、そんな気がするたび、こう話している。
「じつはわたしも、説明はできない。『うーん』とか、云っちゃいたい。でも、ムークンと友だちとして生きたかったんだと思う」

***
piglet さま
 ぐーちゃん、121日がまたやってきました。
 あの日からだんだん、わたしは「死」が嫌いではなくなったんだ。ぐーちゃんのおかげです。
 そればかりか、いまは「死」が真の褒美だと思えるような生き方をしたい、と考えるようになってる……。先に旅立ったひとたちとは、あの手この手で会話し、伝えたいことは伝えたい、と思ってます。                    ふみこより

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〈お知らせ〉

12月21日(土)
池袋コミュニティ・カレッジで
西村佳哲(にしむら・よしあき)さんと対談をいたします。
西村佳哲さんは働き方研究家。
2011年1月に奈良で開催された西村さんプロデュースの
「自分の仕事を考える3日間」
というフォーラム(8人のゲストのうちのわたしはひとりでした)において、
あたらしい視点を与えてもらいました。
いわば恩人のような存在です。
あの日から、はたらくことと、生きることを
できるかぎり一致させて生きてゆくという土台ができたように
思うんです。
仕事について、これからの仕事について考えているアナタ、
あたらしい何かを受けとめているアナタ、
ぜひご参加ください。
わたしもとてもたのしみにしています。
日時 : 12月21日(土)13 : 00ー14 : 30
受講料 : 会員 3,410円 一般 3,960円
場所 : 池袋コミュニティ・カレッジ
申しこみ・お問い合わせは……03(5949)5481
パソコン、スマートフォンからは「池袋コミカレ」で検索。
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西村佳哲(にしむら・よしあき)
1964年東京生まれ。プランニング・ディレクター。
建築設計分野の仕事を経て、つくる/教える/書く、
おもにこの3種類の仕事を手がける。
デザインレーベル「リビングワールド」代表。

 

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「日記」カテゴリの記事

コメント

ふんちゃん 皆様こんにちは。

ぐーちゃん様
ふんちゃん を休ませてあげようとしてるみたいですね。
必ず思いだすということは
大切な相手だったのですね。


最近とってもよく胎動を感じます
ポコポコごにょごにょと笑

不思議なのが坊やが元気だと
お腹の子もより元気です笑

投稿: たまこ | 2019年12月 3日 (火) 15時07分

ふみこさま。おはようございます。

12月1日その日のぐーちゃんとのやわらかなやりとり
贈られた本でのあそび。。。
そういう時間って大切ですよね。

命日とか。。思い出の場所とか。。そういうことのおかげで
こころがほっとすると大変なことはいくらでもあるけど
「だいじょうぶ」って受け止めたり、きりかえたり
ちょっとできるようになった感じがします。

昨日も思い出の場所鎌倉の紅葉谷のあたりふとあるいてみました。
獅子舞のあたり。。わき水の流れと紅葉。。このあたりは人も少なく
好きな場所です。今年も一年ありがとうの感謝のおもいで
歩くと天にもとどくようなきがします。

さあ。。あとは21日のコンサートへむけて
温かな時間を作れるように練習でーす。
ふみこさんのお話の時間とぴったり同じなので行けなくて
残念ですが。。フンパーディンクさんがドイツ民謡と14人の天使
を加えた「おとぎオペラ」の世界楽しいです。
(何で14人なんだろー)
ではふみこさん。皆さんいい一日をおすごしくださいね。

投稿: 真砂 | 2019年12月 4日 (水) 08時27分

ふみこさま。

「死」に対する想いは、年と共にこわいものでなくなってきています。
子どものころは、母が昼寝をしているだけでも、
「死んだらいけん! 死んだらいけん!」
って揺り起こしていたらしいですが……。

ぐーちゃんさんは、いつもふみこさんの中で生きておられるんですものね。

昨日は、今年最後の童話教室でした。
先生に、半年の講評をいただきました。
私には、季節ごとに句をひねるように童話を書いていってください、という
お言葉をいただきました。
そうしたいなぁ~と改めて思っています。

では、またぁ。

投稿: こぐま | 2019年12月 4日 (水) 14時42分

たまこ さん

坊やちゃんと、
お腹の赤ちゃんとは、
もうきょうだいのつながりが……。

寒くなってきました。
温かくして、お過ごしくださいね。

投稿: ふみ虫。 | 2019年12月 5日 (木) 18時54分

真砂 さん

感謝の思いで歩くと、
天にも届く……。

ほんとうですね。
そう思えるひとがひとりでもふえれば、
この世は変わるなあ、と、
しみじみ思いながら歩いています。

感謝の思いを天にも、地にも。

投稿: ふみ虫。 | 2019年12月 5日 (木) 18時56分

こぐま さん

こぐまさんらしさ そのままに
創作活動を!

と、わたしは、贈りたいです。
やさしくて、許しのある……。

投稿: ふみ虫。 | 2019年12月 5日 (木) 18時58分

ふみこさま。みなさま。
12月7日。冷たい雨が降っています。
でも、今日の朝はとても佳い朝を迎えました。
時間に追われて過ごしているような、あわただしいこの頃。
今週は人とのかかわりの中で、言われた一言で心が傷つき、切り替えるのに時間がかかっていていました。
そんな中、毎日新聞の朝刊「文学逍遥」庄野潤三」インド綿の服」
人生は明るい世界への抵抗の特集でした。
大好きな、庄野潤三氏に心を気づき与えられた気持ちになり、
新聞を見た瞬間から嬉しく。元気になりました。心は不思議。
ありがとう。ほんとうにありがとうと感謝の気持ちで大事に新聞を切り抜きました。

22歳で旅立った、ぐーちゃんのこと。
じーんときました。
私は小学校2年生の時に父を亡くしました。
東京の築地の病院。電車に乗り、父がいなくなるという病室の冷たいコンクリートや瞬間をずーと、忘れられないできました。
子どもの頃から死は怖くてたまりませんでした。今もちょっと怖い。
でも、まかせることにしました。
だから、弱虫の私は何かあると、心の中にいる父に「大丈夫だよね」。
「見ててよね」。と話かけているのです。


投稿: ユリの木の花子 | 2019年12月 7日 (土) 10時03分

ユリの木の花子 さん

そうでしたか。

お父さまのおはなしは、初めて
伺いました。
きっと空の上に浮かんだ雲の上から、
ユリの木の花子 さんとご家族を、
そっと見守って(たのしんで)おられるだろうなあ。

死後のたのしみ。
こんなことについても、
ときどき考えます。
自分のいない世界を眺める。

手も出せない現世が恐ろしい場所になっていては、
困ります。
生きてるあいだに、できることをしなければ、と。


投稿: ふみ虫。 | 2019年12月 7日 (土) 11時55分

ふんちゃん

 こんにちは。
 雪が降ったり止んだり…の札幌です。
 今日は、すごく寒いけれど、
 時々、温かくなって、雪を溶かしてしまったり…と繰り返しています。

 先週、気がついたら、わたしも臨時休業していました…。
 時が経つのが早く、
 あれよあれよという間に、火曜日がやってきて、
 ふんちゃんのお話に聞き入り、
 みなさまのお話を伺ってじんわりして過ごしていました。
 
 特に大きな変わりなく過ごせています。
 1番目ちゃんは、留年の危機。
 2番目ちゃんは、背が伸び、体重も増え、はしゃぐようになりました。
 3番目ちゃんは、友だち関係から多くを学び、
 4番目ちゃんは、担任の先生の恐怖に怯えながら登校しています(^^;)
 5番目ちゃんは、就学に向けての準備が次々とありました。
 児相からの家庭訪問もあり、心身ともにとても成長していることに
 感動してもらえました。
 最近…、ようやく、わたしに対する「愛着」がしっかりしてきたのだなぁ
 と思うような態度が感じられるようになって、
 安心しています。
 大学時代の恩師が、「1年愛着関係がもてないと、回復するまでに2年かかる。
 2年もてないと4年かかかる」というようなことを言っていた気がするのですが、
 本当だなぁと実感しています。
 
 その恩師と久しぶりに電話でお話をして、
 1冊の本を教えてもらい、
 今は、それに没頭しています。
 心と脳みその本。
 なんだか…、自分の歴史を振り返る本となっています。
 2番目ちゃんの「大冒険」を整理することになれそうな予感です。

 という感じで、なんというか…、
 自分の内面を旅しているような感じで過ごしているせいか、
 ここへことばを置くことがなかなかできずにいました。

 ふんちゃんのお話。
 ユリの木の花子さんのお話。
 とても、とても…ずっしりきました。

 わたしにとって「死」は、ひとつのゴールのイメージです。
 ゴールがあるから、頑張れる。
 というような…。
 本当に、その時が近づいたら、そんな悠長なこと言ってられないよと
 言われることもあったのですが、
 近しい人と別れることはとてもさみしいけれど、
 ゴールがあるから安心できる気がしています。
 何というか…、永遠に続く、終わりがないと思うと、
 苦しくなりそうな…。
 そんな感じです。
 
 わたしにとって、妹のような大切な友を亡くした時。
 そこには深い深い悲しみしかありませんでした。
 「何もしてあげられなかった」
 ということばばかりがわたしを襲いました。
 今でも、時々、苦しくなります。
 けれど、彼女は、今、きっと寂しさや、苦しみから離れて、
 また新しいカラダをもらって、
 1からやり直せているさと、
 開放されて良かったんだよ…と
 思うようにしています。
 彼女が選んだ道を否定したり、悲しんだりすることは止めよう…と。

 やっぱり…、なんだかとりとめがなく、
 なにを話したらいいのかわからなくなるのですが、
 えいっと、いつものようにふんちゃん、みなさまに甘えて、
 このまま聞いて頂いちゃおうと思います(^^)

 生きるということ、と
 死ぬということ。
 じんわりと考える時間ができました。

 仕事に、ちょっとだけ復帰しました。
 これからまた少しずつ出ようと思います。
 先日、遠方から家まで相談に来てくださった方がおられました。
 ビックリするほど、娘と似ている子のお母さん。
 お互い、シシュンキの大冒険をたのしもうではありませんか!
 というお話で終わりました。
 
 すっかり年の瀬の空気を感じます。
 今年は、なかなか大掃除のスイッチが入りません…。

 おきょうさん さ〜ん。
 お帰りなさ〜い。
 毎週、うれしくおきょうさん さんのお話を聞かせていただいています。

投稿: もも(^_^) | 2019年12月 8日 (日) 15時09分

ふみさまみなさま大変夜分にこんばんは~~

もはや火曜日、今日は新しいふみさまのお話が聞ける曜日ですね。

師走、

忙しいには忙しいはずなのですが、今年はどうしたんだろ、けっこう歩みがゆっくりのような気がします。

それでも歳のせいか、夜になると眠気に勝てず、朝から昼までは家の仕事をこなし、昼から夕方までは自分の皮膚科、母の施設見舞い、夕方からは自分の仕事・・・
通常業務もそこそこ忙しいのかな?(笑)

ここにきて不思議と日ごろ「会いたいね」、とか、「会おうね」といいながらなかなか機会がもてなかった懐かしい人達から連絡がつぎつぎに入り、自分の仕事が休みの日は出かけて行って4~5時間弾丸トークして帰ってきていました。
なにかのめぐりあわせなのかな・・・・
新鮮な空気と、また新しいきずなが次々結ばれていっている気がします。

二女の部活も12月で引退、完結。
長女は就職をひっくりかえし未だ就活中ですが、一応自分の音楽への歩み寄りはひとくぎり。習っていた先生にもご挨拶をして音楽教室は退会。

弟も8月で一周忌でしたし、

そうすると
最近のように新しいご縁も結ばれる。

ぐーちゃんとも結ばれました。

ということで今年のおきょうさんちの感じ一文字は

『結』

という感じに決定しました。(独断(;^_^A)

私も父の亡くなり方、母の老い方、弟の急逝・・・
さまざまに死というものと向き合う機会をいただいております。

34年たってもこうしてお話できるぐーちゃんとふみさまの関係は本当にうっとりです。
私もそんな風に、虹の橋をわたってもお話ししてくれる人がいるかしら?
こんなうっさいおきょうさんは本ではなくてFⅯラジオとかかもしれませね。
プチっと切られちゃいそう。(笑)

これからピグレットをみかけるたびにぐーちゃんを思い出してしまうと思います。

師走、走りすぎないようにしましょ。プーさんはいつもの~~んびりだから。

もも(^_^) ちゃん
ただいま~~
今年は大掃除はちょっとパスでもいいんじゃな~い?
プーさんのようにの~~んびり令和の2年を迎えるのもよきよき。
ちょっとくらい汚れていたって、かまわないない~~

身体大事にね

投稿: おきょうさん | 2019年12月10日 (火) 01時16分

もも(^_^)さん

よくわかる!
なんて云ったら、
まだまだ、とどこかで叱られるかもしれません。
しかし、わからせてもらったことが
このたびのおたよりにも、
たくさんありました。

「愛着」
そうかそうか、とかね。
青着を育てたいと思っても
なかなかうまくゆかず、
そう思ってると自然に育っていることもある。
……なんてところまでは感じていましたが、
愛着づくりに格闘する(真剣になっている)
ひともあるんだと、あらためて感心しました。

それぞれみんな、
思秋期や、更年期や、
いろんな季節をしっかり揺れながら、
生きよう……ね。

いちもほんとうにありがとう!
ございます。

投稿: ふみ虫。 | 2019年12月10日 (火) 11時16分

おきょうさん さん

このたびのブログも、
おきょうさん さんに「結んで」
いただきました。

感謝します。

ことし、なつかしいひとと、
いっぱい会いました。
なつかしいひとからの連絡も受けとりました。
それを、どういうことかな……と
思い書けていたのですが、 おきょうさん さんの
おたよりで気づきました。
新鮮な空気、あたらしい絆と、
思えばいいんだわ。

なんてありがたい!

おきょうさん さん、
またしてもありがとう、ありがとうございます。

投稿: ふみ虫。 | 2019年12月10日 (火) 11時21分

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