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2020年2月11日 (火)

ふしぎの棘

 ごぼうを束子(たわし)でゴシゴシこすっていたときだ。
 左手の親指のMP関節の外側あたりに、違和を感じた。小さな切り傷なのか、はたまた棘(とげ)なのか、かすかな痛みもある。

 台所しごとを終えて、「そう云えば」と思いだし、親指をしげしげと見る。
 昔、よくこんなことがあった。棘が刺さったみたいだ!という感覚。わたしが子どもの時分には、あたり中が木製のものだらけで、それも、雑味のある木製だったから、すぐささくれる。棘なんか刺すのは、珍しいことではなかった。
「ね、棘刺したみたい」
 と云うと、母は小引き出しからとげ抜きをとり出す。文房具のひきだしから虫眼鏡も出してくる。
「どこかしら?」
 母は虫眼鏡をかざして、棘の刺さった位置と、棘の正体をつきとめようとする。探偵気取り。
「ここね」
 とげ抜きを棘の位置に当て、押すようにして棘を浮き上がらせるのだ。浮き上がった棘の頭をとげ抜きでつかんで、引っ張る。たいていこれで抜けてしまうのだが、しぶとい刺さり方をしている棘もある。
 そんなとき、母は「そうか、待ってて」と云って、裁縫箱を出してくる。裁縫箱のなかの針山から、待ち針を1本抜く。
 待ってて、のあとがわたしの好きな時間だ。
 待ち針をつまんで台所に向かう母のうしろをついてゆく。
 ガス台の火口に点火し、炎のなかに待ち針の針先をそっと差しこむ。針が焼けて真っ赤になり、妖力を放つ(ような気がする)。母としたら、針先を焼いて消毒しているのだが、怪しくて、こころときめく。わたしはそんな子どもだった。
 焼いた針で棘をつつくようにして、棘の頭を探し当てる。ここで今一度とげ抜きの出番がきて、棘は、とうとう抜き去られる。
 脱脂綿に消毒薬をしみ込ませ、患部を抑える。そういうときの母は看護婦(あのころは看護師をこう呼んでいた)であった。ちょっと得意そうな、看護母さんだ。

 なつかしい光景を思いだしながら、とげ抜きをとり出す。
 ほんとうに棘が刺さっているのかどうかもわからないが、痛みのある〈そこ〉に、そっととげ抜きを当ててみる。半ば当てずっぽうにとげ抜きの先っぽを指で閉じて、何かをつまんだ感じで引っ張り上げた。
 ……すると、どうだろう。
 2センチ5ミリほどもある、細い棘が引き抜かれたのだ。

 こりゃなんだ。
 細い棘をみつめながら、こう思うことにした、わたしは。
 自分のわるいもんが、だめなもんが抜けた!

Photo_20200211084601
庭のスノードロップ。
春が、近づいてきています。
冬と春が、額を寄せて何かをたくらんでいるような、
きょうこのごろ。
この季節が、好きです。

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「日記」カテゴリの記事

コメント

ふみこさま

おはようございます。不思議のとげ。。びっくりですね。
でも。。そういえば。。私も心の中にひっかかっているとげ
がきになってくるとここへきてふみこさんに
「ちょっと~なんとかとって~」みたいに話を聞いて
いただいていつもすっきりしてまーす。ふふ。

スノードロップたちかわいいですね。
今朝もお散歩で花壇をみたら葉ボタンで囲まれた中から
クロッカスたちが頭をだしていてかわいかったです。
隣の花壇は葉ボタンの中からはみ出して外側で
もう咲き始めていてなんだかいいな~なんて眺めました。
土の中でお引っ越しなんだろうか~
何かをたくらんでるのかな?ふふ。いいな。

春の気配を感じて。。5月の演奏会の曲もあれこれたくらんで。。
うれしくてお雛様もだしてみたところです~。
ではみなさんもふみこさんもいい一日おすごしくださいね。

投稿: 真砂 | 2020年2月11日 (火) 11時34分

真砂 さん

真砂さんの春のたくらみ。
たのしみですね。

音楽のたくらみ。
弦のたくらみ。
調べのたくらみ。

春を招ぶ。

投稿: ふみ虫。 | 2020年2月11日 (火) 12時21分

ふんちゃん 皆様こんにちは。

刺抜きのような優しい可愛い思い出が
子供心に残っているんですよね。

先日連休があり、坊やとずっと過ごしました。
生憎坊やが風邪気味でその後私も移りましたが笑

坊やにフレンチトーストを作ってあげたり
一緒に体操したりお昼寝して。

寝たら、ズボンにゴムを通してあげて
(恥ずかしながら坊やが産まれるまで
まともにゴム通しをしたことがありませんでした。
今ではスルッとできます)

とっても充実してました。
もうすぐ2人で向き合う時間は減ってしまうけれど、いっぱい過ごそうと思いました

投稿: たまこ | 2020年2月11日 (火) 12時55分

ふみこさま みなさま こんばんは。

とげ抜きの風景をなつかしく読ませていただきました。
そうだった。とげ抜きも待ち針も…。
実は、わたしも好きでした。
と言っても、
火であぶった待ち針で自分の指を、ですが。
 
「自分のわるいもんが、だめなもんが抜けた!」
抜きたい自分のわるいもん。だめなもん。
あるなぁ、と思い。
でも、残念ながらそれは、指先ではなく
心のもっと深いほう、そんなところにありそうです。

こまったなぁ。
と言いながら、そんな思いを楽しんでいます。
すこしずつ表面に出てきて、
ある日、ひょいと抜けちゃうんじゃないか。

そこまでの過程を考えて、
ちょっと毒っぽい自分になっています。
そんな毒っぽさも、おもしろがっています。

投稿: さのまる | 2020年2月12日 (水) 20時34分

たまこ さん

誰とでも、ふたりきりの時間を
つくろうとすることは大事なんだと
思います。

夫婦も、親子も、
友だちも。

娘たちとも、ふたりの時間をつくります。
すると……。

たまこさん、
佳い日日をお過ごしくださいね。

投稿: ふみ虫。 | 2020年2月14日 (金) 08時20分

さのまる さん

ああ、そうそう。
大事なことを思いださせてくださり、
ありがとうございます。

書いてゆく自分に必要なのは、
毒と蜜。

毒が抜けてしまっては困ります。

お互い、毒を育てましょうね。
(いひひひ)。

投稿: ふみ虫。 | 2020年2月14日 (金) 08時22分

ふみこさま
三年前のふみこさんのブログから、今日2月15日がふみこさんのお母様のご命日だなあ、と思い出させていただきました。
いつかわたしも迎える日のことを思い、ふみこさんがされたように、母との時間をできるだけもちたいし、それはもちろん父や、他の方との関わりにおいても言えることだと思いました。

仕事の場で苦しく感じることが多く、逃げたくなることもありますが、いつかは終わることだから、切り替えてがんばりたいです。
上司や先輩の厳しさを、痛く痛く受け止めてしまい、傷つくことがあります。こんなにきつく言われなくてもわかりますよ、と思うときに、自分がかつて同じことを他の人にしてきたのだろうなあ…と思うこともあります。
気づかせてもらえて良かったですよね。

いつもありがとうございます。
自分にも、人にも甘いわたしでありたいです。

投稿: 田中 | 2020年2月15日 (土) 12時15分

田中さん

田中さんを理解する、優しい人びとも
存在するでしょう?
そんな皆さんに感謝することですよ。

わたしも、かつて、そんなことが
ありました。

わたしを理解してくれるあなた、
ありがとう。
わたしを許してくれるあなた、
ありがとう。
わたしと笑ってくれるあなた、
ありがとう。
わたしと楽しみながら仕事してくれる
あなた、ありがとう。

とね。
そんな存在に気づかせてくれた
皆さんも、ありがとう。
と思っただけで空気が変わったんです。

たぶん、変わらなくちゃいけなかったのは
わたしだったみたい。

田中さんは、わたしのように
ポンコツではないから、
空気感もちがうかもしれないけど、
「ありがとう」で切り抜けて
くださいね。

投稿: ふみ虫。 | 2020年2月15日 (土) 18時08分

ふみこさま
ありがとうございます。
本当にそうなんです。
今の環境になってから、今までどこかで当たり前と錯覚していたやさしさやにも、たくさん気づかせていただきました。
ありがとうも言うけれど、それより申し訳ありませんが口ぐせになっていましたが、ありがとうでいっぱいにしていきます。

今日もありがとうございました!

投稿: 田中 | 2020年2月15日 (土) 23時26分

ふみこ様 こんにちは

「棘ぬき」そうでした 
私も同じように 
母に棘を抜いてもらいました
ガス台の火口の火を使って・・。

小学校は 木造の古い校舎でした。
掃除当番は 長い廊下を ダダダーっと
競争するように 雑巾がけをするのですが
たまに 手に大きな棘が刺さります。
職員室に行って 担任の先生に棘を抜いてもらいました
男の先生なので ちょっと 不器用で
なかなか取れなくて ハラハラしたことを
思い出しました。
名前は 菊池先生。優しい先生でした。

ふみこさん 棘が取れた時の ちょっとした
爽快感は「自分のわるいもんが、だめなもんが抜けた!」
から なんですね。
そうか そうかと納得しました。

投稿: えぞももんが | 2020年2月16日 (日) 09時56分

ふんちゃん

 わたしも!わたしも!
 棘を抜く時、ガスで針を消毒してから、
 抜いたり、抜いてもらったりしました。
 そうして抜けたあとは、本当に気持ちよかった記憶があります。
 その気持ちよさは、「自分のわるいもんが、だめなもんが抜けた!」
 だったんだなぁ〜と、納得。
 最近は、棘が刺さることもほとんどなくなっちゃったから、
 さみしいなぁとも思ったりしちゃいました。

 今朝、起きると…、
 シナモンロールとリンゴのシフォンケーキが焼き上がっていました。
 昨夜、1番目ちゃんが、作っていたものです。
 シナモンロールは、映画の「かもめ食堂」のレシピで作ったヤツ。
 来年にやってくる「受験」に向けて
 コンビニでのバイトをやめた1番目ちゃん。
 なんとなく勉強しようかなぁ〜と思ったものの…、
 おやつ作りを始めたくなったようでした(^^)
 高校受験のときは、夜な夜なうどんを打っていた人です。
 なにか作りたくなるんだなぁ〜。
 きもちが、よ〜くわかります。

 そうしてできあがった、シナモンロールとシフォンケーキは、
 お店屋さんのみたいにおいしくって、感動しました!
 
 なんだか…、のんびりした休日。
 家族みんな家で、思い思いのことをしています。

 2番目ちゃんは、頑張り過ぎて、またちょっと不調になりがちですが、
 先週の病院で、自信をもって、自分の不調を告げ、
 「これは、精神的なものですか?」と聞き、
 「そうだね…」と言われると、笑顔で納得。
 慌てることもなく、今まで使っていた胃腸薬の量も減らしてもらっていました。
 先生と、まっすぐに対話ができる姿に、感動しました。
 昨年の今ごろは、わたしにくっついているしかできなかったなぁ。
 今は、憎たらしいことばかり言うけれど、それが頼もしく、うれしいです。

投稿: もも(^_^) | 2020年2月16日 (日) 14時49分

ふみさまみなさまこんにちは~~

刺抜きの想い出!私もあります。
私の通っていた幼稚園木造で床が木だったので、土曜日に上履きを持って帰るときに一瞬裸足になって歩く何歩かの間に必ず棘をさしてしまう私でした。
昔から不器用な奴だった・・・(;^_^A
母がガスレンジで針をあぶる間のドキドキ感。なつかしなあ・・・
あと、目がちょっとチクチク、埃が入ってしまったときは小さなボウルにお湯にホウ酸を溶かしてガーゼを浸して拭いてくれたことを思い出しました。
私は母にわりと厳しく育てられた記憶ばかりが残っていましたが、こうして考えてみると要所要所で愛情たっぷりに育ててもらったんだなあ・・・と、しばらく幼い頃のたくさんの想い出に浸ってしまいました。

棘をさしてしまうことも抜いてあげることも、本当に今はなくなってしまってきていますがもし、そんな時はまた針をあぶってどれどれ・・・と抜いてみたいものです。娘たちの『ひゃ~こわい?大丈夫?大丈夫なの?』と怯える瞳も母としてもう何回かはみてみたい・・・。どうぞ、『必殺棘をぬくアプリ』なんてものが開発されませんように(笑)

投稿: おきょうさん | 2020年2月17日 (月) 15時38分

田中 さん

わたしからも田中さんへ。

どうもありがとう、
ありがとうございます。

投稿: ふみ虫。 | 2020年2月17日 (月) 17時23分

えぞももんが さん

どこで刺したものか覚えもなく、
その上、細長い棘だったので、
不思議だったのです。

なんでも、いいように解釈する
わたしですが……。

棘ひとつにも、
思い出は、ありますね。


投稿: ふみ虫。 | 2020年2月17日 (月) 17時26分

もも(^_^)ちゃん

朝起きて、
シナモンロールとシフォンケーキが焼けている。
ちょっとちょっと、
ももちゃん、それはしあわせが過ぎるよ!
と小さく叫んだ声、聞こえたかな。

みんな、おもしろく伸びてゆきますね。
わたしも伸びたいなあ。

手はじめに、
シナモンロールとシフォンケーキに
挑戦するかなあ……。

投稿: ふみ虫。 | 2020年2月17日 (月) 17時29分

おきょうさん さん

このたびの棘。
母のしてくれた手当てを思いだせたことが、
不思議なプレゼントでした。

いろいろなことを忘れているけれど、
世話をかけたなあ、
心配してもらったなあ、
やさしくしてもらったなあ……と
あらためて思うのでした。

投稿: ふみ虫。 | 2020年2月17日 (月) 17時31分

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