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2021年7月20日 (火)

思いこみ

「わたしがいなくなったあと、わたしの使っていた香水の香りをなつかしんだりするかな、あなたは」
 家を訪ねてくれていた二女の梢に、訊く。

「どうしてそんなこと訊くの?」
 梢は、笑いながらわたしの目をじっと見る。

 ずいぶん長いことわたしは、同じ香水(オールドパルファム)を使いつづけている。出かけるとき、お守りみたいな気持ちで、つけるのだ。
 いま使っている瓶のなかみが少なくなって、そろそろつぎを求めておこうと思っていたとき、ははが残したふたつの香水の瓶のことを思いだしたのだ。熊谷の家を片づけていたとき出てきたそれは、ははのお友だちの海外旅行のお土産だったのだろう。

 シャネルN°5(パーススプレイ/香水)
 ゲラン MITSUKO(香水)

 封は切っていないものの、かなり前のもののようだけれども、ちょっと使ってみようかな、ははのかわりに……と思う。
 そう思ったとき、ふと胸に灯ったのが「わたしがいなくなったあと、わたしの使っていた香水の香りをなつかしんだりするかな、娘たちは」という思いだった。
 そうして二女の梢は云うのである。
「香りでお母さんをしみじみ思いだすってことはないような気がするな。もっと別のことで……思いだすのじゃないかな。だから、シャネルでもゲランでも、使ってみたかったら使ったらどう? お母さんのしたいようにしたらいいわよ」
「あらそう」
 そう云われて、そんなものか、と思うわたしだ。
 長女や三女に聞いてみたい気もしたけれど、どちらも、やはり同じことを云うのではないか。
「お母さんのしたいようにしたらいいわよ」
 とね。

 このやりとりは、わたしに自分の「思いこみ」を意識させた。
 あははは。
 そう云えば、娘たちや若い友人たちと、思い出話をするとき、誰も彼も、わたしが覚えていてほしいことを語ったりしない。
 いや、思い出の肝はそこじゃない、ということばかりが話題に上って、がっかりさせられる。もっとうつくしいこと、もっと感動的なこと、そうしてもっとわたしが気を入れて準備したあれやこれやがあったでしょうよ! 
 しかし、たいてい失敗談や滑稽な事ごとが、目の前にならぶのだ。

 自分の思いこみなんかは、この際片づけてしまおう。
 いま使っているオールドパルファムがなくなったら、つぎはシャネルN°5をつけてみる……。
 マリリン・モンローのように「眠るときはシャネルN°5を数滴」なんて云ったところで誰も相手にしてくれないだろうから、出かけるときのお守りとしてスプレイをひと吹き。

Photo_20210720074901
熊谷日記は休みました。
8月に、また再開いたします。

写真は、大工さんの手になる
書棚です。
さあ、ここに本を……。
大工さんのおかげで、とうとう、
本との生活がもどります。
およそ4か月ぶりのことです。

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「日記」カテゴリの記事

コメント

ふんちゃん皆様こんにちは。

思い込みより可愛いハプニングを
覚えているんですよね。
こっちの努力は知らずに笑

それでもたのしい思い出として
残っていれば嬉しいです。


さて私は次男くんの熱が治ったとおもったら
今度は子供2人してRSウイルスにかかり
引き続きお仕事保育園お休み。

会社に謝り疲れたなーと言うのと
やはり母は働いてはいけないのかな、と思う日々。
でもやり直した育休と思い
生き生き過ごしてます

投稿: たまこ | 2021年7月20日 (火) 10時34分

ふみこさま。みなさま。
1週間って本当に早いですね。
先週のミントを飾られたくまがやのお部屋を拝見して気づいたのです。
ふみこさんはハーブのような人だなぁって。
ハーブがふみこさんにはよくにあう。
ふみこさんがいてくれる場所にはさわやかな香りがする。
ふみこさんから生まれる文章は
みんなにやすらぎをくれる。
読めてよかった。
そして、もっと読みたいと思って来た。
いつか、畑で育てたハーブを花束にしてお届けしたいって思ってます。
大工さんによる本棚がついたのですね。いいなぁ!
どんな本が並ぶんだろう。
しあわせな本棚ですね。

私、思いこみというのがどうも得意らしくって、思いこみすぎて
自分を自分で疲れさせたりしている。結局、私の思いこみは心配症なんだな。この性分、手放さなく手放さなくてはと気づきをもらいましたよ。
夏本番になりますね。
夕方、涼しくなると目の前の海の堤防で小アジが釣れるんです。
釣った小アジを玄関の中の土間で
お刺身にしたり、野菜をやいたり
干物を焼いたり
この古き家は夏は土間で夕飯を食べたりするときがあります。
これも夏ならではの楽しみです。

今年は浜辺に数件、海の家が建ちました。
いろいろなことがあるけれど
小さな喜びを胸にしながら
過ごしていきます。
ふみこさんからもらったことば
大好きなことば
きょうも1日を生き抜こう!
みなさまもよい1週間をお過ごし下さい。

投稿: ユリの木の花子 | 2021年7月20日 (火) 11時19分

ふみ虫さま

毎日、食品を扱う仕事のため
香水はつけられないですが
好きな香りはあり
娘にわけたあと、ほんの数本を
使い続けています。
出かけるときに
寝る前にも シュッとひとふきです。

いい書棚を作ってもらえましたね!
上段から下段にむかって幅がちがい
釘のない?!もしくは隠してある?
指物のようで。
大工さんの腕の見せどころですね。^_^
見えない職人仕事がたくさん
詰め込まれた
おうちのようで
家が喜んでるやろうなぁと思います。

投稿: 寧楽 | 2021年7月20日 (火) 11時44分

よく晴れた夏の日です。
友人から夏休みがはじまるよーとのおたよりで それをを知りました。

いつもシュッと香水を…オシャレですね。ことばとは裏腹に
いつの日か 娘さまは香りの記憶をきっと懐かしむことでしょう。

こちらにお邪魔するようになって1年とふた月経ちました。
これまで自分でも何が言いたいのかどうしたいのかわからないまま 身勝手なことばかり綴ってきたなぁ…と改めて思っています。
思い悩み苦しいと思わなかったら ここでみなさんに励まされることも自分の心のうちをすこしでも打ち明けることもきっとなかったことでしょう。こう綴りながら同じように「あなたと出会ってこうしてお話してるなんて不思議なご縁ね。」と話されていた方を思い出しています。

ふみこさん 広場のみなさま
これまでのこと ありがとうございました。つくしさんのお話でわたし自身のこと この1年を思い出して考えてみています。
人からみればツルンとなんでもないように見えても体のなかは
バラバラに分解されてしまってもう一度立て直し 作り始めるほどの思い まだ本当には知ってなどいないのかもしれないけれど これからは誰かのしあわせの片棒を担げる自分でありたいと願っています。
なんだかへんな文になってしまいました。ごめんなさい。
また くまがや日記も楽しみにしています。

そしてユリの木の花子さん
やっぱり海のそばのおうちのことをいつまでも夢のように思い考えてしまうわたしです。

投稿: こんぺいとう | 2021年7月20日 (火) 17時57分

ふみこさま

おはようございます。
すらっとして美しい本棚ですね。
大工さんのハンドパワーを感じます。
上のほうを文庫本サイズにすると部屋も広く感じていいですよね。
主人の部屋も最近こんな感じの本棚をいれたので
「あれっ~」というくらい。。ふふ。

どんな本たちがならぶのでしょう。
こっそりのぞいてみたいです~。
よく下北沢のブックカフェのようなちいさな本屋さんの
ジャンル別や作者別ではなく。。その人ならではの並べ方
くくり方って好きでのぞいたりします。
ゆるくて自由な感じが下北らしくてすきです~。

そういえば。。朝顔の五線譜も最初はモーツアルトの音楽のように
ゆったりとした楽譜だったのに。。いまはバッハの無伴奏のように
複雑なからみになっております。
水の流れをかんじるブルースターたちもにぎやかになってきてくれて
いいかんじです。(with午前中のくまぜみのシャーシャーの音)
暑い日になりそうですがいい一日おすごしくださいね。

投稿: 真砂 | 2021年7月21日 (水) 07時20分

たまこ さん

そうですとも。
たまこさん自身も、
この期間、坊やちゃんたちに寄り添いながら、
英気を養ってくださいな。

がんばれ!

投稿: ふみ虫。 | 2021年7月22日 (木) 09時50分

ユリの木の花子 さん

熊谷には、海がない!
そんなことわかっているけれど、
小鯵と聞いて、崩れ落ちそうになりました。

それでも、ごちそうさま。
ユリの木の花子さんの筆の力のおかげで、
小鯵が感じられます。

思いこみは、
場面によっては助けになります。

わたしは、これをできる。
わたしは、元気。
わたしは……、蚊につよい。
わたしは……、日焼けに負けない。

ってね。
思いこんで、やっています。

投稿: ふみ虫。 | 2021年7月22日 (木) 09時55分

寧楽さん

2段に分かれていますが(背が高いので)、
ふたつはここにやってきてから、
がしっとくっつきました。
そして、
壁にもがしっと、大工さんがつけてくださいました。

わたしが計算した本の天地寸法が
ぎりぎりだったり、
棚と棚のあいだの長いのがもう少しほしかったり。
あわてん坊のわたしは、それなりの
しくじりをしています。
それでも、なんとか本がおさまったとき、
大工さまと神さまに、
感謝しました。

投稿: ふみ虫。 | 2021年7月22日 (木) 10時03分

こんぺいとう さん

そうでしたか。
1年と2か月祝いです。

おめでとうございます。

広場にも、
おめでとうございます。

こんぺいとうさんは、
なくてはならない こんぺいとうさんです。
これからもよろしくお願いします。

投稿: ふみ虫。 | 2021年7月22日 (木) 10時05分

真砂 さん

本棚から、
ブラッドベリの背表紙が、
ならんでこちらを見ています。

この夏は、これかな。

投稿: ふみ虫。 | 2021年7月22日 (木) 10時08分

ふんちゃん

 今日も、いい天気で、暑い!札幌です(^^)
 なんと、熊谷より暑い日があるなんて!
 やっぱり、ちょっとバテ気味です。
 仕事場の部屋が、蒸し風呂で、
 記録を書くときなんかは、
 廊下に非難して、ソファーの上で書いたりしちゃいました。
 家には、冷房なるものがある部屋があるので、
 たまに休みながら……やっています。

 今日、押し入れデスクが完成しました!!
 夫婦で同じ部屋に仕事机を並べていたのですが、
 向こうは、バソコンの前での仕事も多くって、
 入るのに遠慮しちゃうこともあったので、
 仕事部屋別居です(^^)
 居間に続く部屋の押し入れを自分の仕事机にしたので、
 子どもたちのようすが見渡せるし、
 台所の空気も感じられます。
 居心地がいい〜♬
 ノートパソコンを置いて、本を置いて、
 お手紙セットを置いて……。
 わたしが、居たスペースには、本棚を作ったら?
 と、夫に提案しました。
 ふんちゃんの今回の本棚を見せたら、 
 「おお〜っ!理想的〜」と、夫もわくわくし始めたようです。

 お母さんが、橋を渡ってあちらに行ってしまって……、
 少しずつ、自分たちの「家」を作り出した感覚です。

 それこそ……、いろんな「思い込み」にしばられていたなぁ……と、
 感じることが増えていて、
 少しずつ、そこから外れていく練習をしたりしていました。
 練習なんておかしいかもしれないけれど、
 「思い込み」を外す、とか、「枠」を外すって、
 わりと、勇気がいることも多くって……。
 いろいろ、やってみよう!とやってみたら、
 あら?あれ?
 な〜んだ、案外、こんなんでもいいじゃ〜ん!
 なんてこともあり、
 暮らしが、より穏やかでたのしいものになってきた気がしています。

 わたしが、仕事机として、今まで使っていた折りたたみの木製のテーブルを、
 夏休み期間中だけ、居間に置くことにしました。
 子どもたちが、入れ替わり立ち替わり、
 そこで思いのままに勉強したり、しゃべってみたりできるかな〜と思って……。
 5番目ちゃんの夏休みの宿題も、そこなら見てあげやすい!
 5番目ちゃん……、がんばって宿題やっています(^^)
 手がちっちゃくって、ちっちゃくって、文字を書くのに一苦労なのですが、
 少しずつ筆圧が上がってきて、書けるようになってきました!
 音読はね……、通常級の子たちより、ず〜っと上手なくらいです!!

 今日は、これから、畑でできたきゅうりを切って干して、
 晩ご飯に使ってみようと思います。
 どんなおかずにしようかな〜。

 あっ!熊谷のブルーベリーは、さすが規模が違いますね!!
 家は、4本だけの木。
 順番に採れてくれるので、しばら〜くたのしめます。

 ふんちゃん、みなさま
 暑い日が続いていますが、
 どうぞご自愛ください……。

投稿: 空色めがね | 2021年7月23日 (金) 11時59分

ふみこさま、みなさま、こんにちは。
先週たくさんのお言葉を下さりありがとうございました。
また元気になったらお返事させてもらいたいです。
今はまだごめんなさい。

投稿: つくし | 2021年7月24日 (土) 17時38分

ふみこさま

私がいなくなったあと、何が残るかなぁ。
ちょっと考えてみたいです。
はるくん、何を思い出してくれるのかな。

今、元気で好きなことをしているだけで
しあわせです。
いろんなことが降りかかってくるけど、
ポジティブに考えて過ごしたいと思います。
できれば、私の笑い声を思い出してもらいたいです❤️

投稿: こぐま | 2021年7月24日 (土) 18時45分

ふみこ様 おはようございます。

「思いこみ」
自分が大切にしている思いと
自分以外の人が感じている思いには
ずいぶん違いがあるのだろうなと 思わさります。

「おふくろの味」という 
少しプレッシャーを感じる言葉があって
息子たちにとっての「おふくろの味」で
思い出すわたしの「ごはん」は・・
たぶん ないんじゃないのか?と 思います。

家族のためと 手作りのお弁当を作り続けていても
「今日はコンビニ弁当で」とお願いすると
小躍りしたリ
カップ麺をしみじみ 美味しそうにすすっていたリ
そんな感じでした。
それに 息子のお弁当には チクリと痛む
思い出もあります。


息子たちが 
それぞれの場所で暮らすようになった今は
「おふくろの味」を意識することなく
野菜 野菜、と台所に立っています。

ふみこさん そうなんです。
北海道も暑い!(うれしいです)

お体ご自愛ください。

投稿: えぞももんが | 2021年7月25日 (日) 06時14分

こんぺいとうさんへ
この場をお借りします。
こんぺいとうさん、海がお好きなんですね。
朝、おきると波の音が聞こえる
夜、眠るときも波の音が聞こえます。
目の前の堤防に涼しい風が吹き始めてきたら、ごろんと寝っ転がって夜空をいつか一緒に眺められたらいいですね。
この広場でお会いできて、うれしいです。
こんぺいとうさんの住むところにも私が憧れてしまうことがいっぱいあるだろうなぁと想像してます
楽しくい夏の日をお過ごし下さい。

投稿: ユリの木の花子 | 2021年7月25日 (日) 09時32分

空色めがね さん

そうなのよねー、と
叫びながら、読ませていただいています。

「思いこみ」って、
根っこはつながっているのですね。
自分という土壌のなかに、がしっと張っている……。

だから、ひとつはずれると、
もろもろもろっと解体してゆく。

(だけど、また張るんだけれどもね)。

開拓の夏ですね、 空色めがねさん!

投稿: ふみ虫。 | 2021年7月26日 (月) 11時54分

つくし さん

ありがとうございます。

つくしさんの夏を、
祈っています。

投稿: ふみ虫。 | 2021年7月26日 (月) 11時55分

こぐま さん

何ひとつ残らないように
片づけたい……なんて思っていますが、
そうはゆかないでしょうね
「あとかたもなく消える」
が、好みなんだけれども。

こぐまさんの、それ、素敵!
笑い声を思いだしてもらいたい、なんて!

見習いたい精神です。

投稿: ふみ虫。 | 2021年7月26日 (月) 11時58分

えぞももんが さん

えぞももんがさんの
ふたりの王子たちはですね、
「おふくろの味」からはずれたものに、
敏感だろうと思います。

こういうものは(ぼくら)食べなかったな。
こういうものは、母さん好きじゃないな。

という具合に。

カップ麺やコンビニ弁当が
めずらしいお祭りになる。
これまた、なんていいんでしょう。


投稿: ふみ虫。 | 2021年7月26日 (月) 12時01分

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