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2022年4月19日 (火)

ふるさと

 わたしは道産子(どさんこ)である。
 北海道小樽市富岡町の社宅で、お産婆さんにとりあげてもらった。そして4歳から5歳になろうとするころ、東京に移り住んだ。つまるところ、道産子にはちがいないけれども、「出身は北海道小樽市であります」というだけであるようでもある。
 小樽および祖父母の家のある札幌の記憶をひとつひとつたどって、左手の親指から順に折ってゆくと、右手の中指のあたりで、もうあとがなくなっている。
 それでもわたしのまわりには、幼いころから「北海道」が在った。
 生まれも育ちも北海道という父と、生まれは東京神田だが、育ちは函館という母のあいだに生まれ、親類縁者の多くが北海道と縁あるひとびとであった。
 言葉遣いやら、料理やら、そのほか佇まいやらになんとはなしに「北海道」が匂うのだ。

 たとえば「手袋を履く」なんてことを平気で云ったり、町じゅうのひとにふるまうかというばかりに天ぷらを揚げたりする(北海道人は——すべてではないと思うが——食べるものをどっさりこしらえる)。

 しばらく、ほんとうにしばらくのあいだ、「北海道」とはそんな感じでやってきた。ところが10年ほど前から、それが変わった。
 気がつくと「北海道」は近くに在り、ほら、こんなふうに……、片方の肘で親しげにわたしの脇腹をつつくようになっていた。

「わたしは札幌(北海道)に単身赴任をしていました」
「ぼくの実家は遠軽(北海道)」
「このはなしは、苫小牧(北海道)」
「函館に移り住みます」

 こんな具合に北海道に縁あるひとたちが、わたしのそばに大勢いたのだった。彼らは北海道のおいしいもの、北海道の特産物、植物を運んできてくれることもある。こうしてわたしは、自分が北海道に縁ある者、小樽市生まれの道産子であるということを、自覚させてもらっている。
 ふるさととの縁を噛み締め、いいようもないなつかしさに包まれるようになった、というわけだ。

 このはなしはここで終わらない。
 昨年5月8日に引っ越してきたこの地、埼玉県熊谷市との縁はどうなっているか。生まれ故郷を何十年越しに噛み締め、やっとのことでなつかしくてたまらなくなった、というテンポでは時間がかかり過ぎる。
 熊谷とはすみやかに親しくなりたい。
 ……そう思っている。

 熊谷をたいてい好きである。
 好きになろうともしている。
 少しずつだが、友人知人もできてきた。

 とつぜんのようにこの地に運ばれてきたこと、この地の先輩たち(この世から旅立ってあの世からこちらを心配そうに窺っている存在も含め)のこと、もっとありがたがろうっと。

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庭の3本のリラの花(ライラック)。
これも、北海道と縁深い花です。
北海道の花が、熊谷に咲く。
うれしいことです。

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コメント

ふみ虫さま

春が急ぎ足でやってきました。
桜まではゆっくりでしたが

私は観音さんのおられる
山里に育ち、いまも
そこから近からず遠からずの
ところにいます。

実家の周りの濃い繋がりに
母は助けられ、私もそこに関わり
今のところでも
ご近所さんたちとは
程よい距離感で居させてもらっています。

ふみこさん、もう馴染んで
らっしゃるんじゃないでしょうか^_^

ひととのご縁って
不思議と繋がっていくことが
多いですね。

お散歩途中で
こられたお客さんが
亡くなった父を知っておられる
ご夫婦で
とっても驚いた今朝でした^_^

投稿: 寧楽 | 2022年4月19日 (火) 10時21分

ふみこさま、みなさま、こんにちは。
今日も春の日差しがきらきら美しい日になりました。
友人からいただいたお花が咲き、
春はいいなあ…と、
冬のあのどんよりの毎日が少し遠くに感じられるようになりました。
ふみこさんの周りには、
北海道があちらこちらに散りばめられているのですね。
きっとふみこさんの周りに集まってくるのかもしれませんね…ふわふわと自然に。

お庭のライラックのお花もとても可愛らしいですね。こんな可愛らしい小さな花がたくさん咲くのですね!我が家のライラックであろうと思われた植物は今でも謎のままであります…(笑)
私も何度か北海道にを訪れたことがあります。
友人も住んでいるので、
またいつか訪れてみたいなと思っています。
どこでもドアが欲しいなあ…。
ふみこさんの素敵なお庭のお話、
またぜひよろしければお聞きしたいです。

投稿: みゅー | 2022年4月19日 (火) 11時24分

ふみこ先生、みなさま

こんにちは
本州のいちばん西側、山口県で生まれ育ったわたしには北海道はあこがれの地です。足がしっかりしているうちに絶対行きたいと思っています。
今日はゴールデンウィークの賑わいを避けて一足早く中国山地を越え鳥取の倉吉市にある三朝温泉に来ています♪
今お風呂で柿渋のボディーシャンプー、馬油のシャンプー、リンス、酒粕の美容パックといろいろためして遊んできました。温泉の前に三十年前、転勤で一年暮らした皆生温泉のそばを走り境港の水木しげるロードで鬼太郎の像と写真を撮り大根島という牡丹の名所、由志園という庭園を見て来ました。杖をつき押しぐるまを押しなんだかとってもおばあさんになったような気もしましたがそれ以上に楽しい1日で、また明日から頑張れそうです。
両親の墓もこちらにあり山口の家もなくなり兄弟もいないわたしはもうこの岡山の地しかありませんが穏やかに暮らせて幸せです。
暑くなってきました。せんせい、みなさまご自愛を。

投稿: 岡山のこんちゃん | 2022年4月19日 (火) 18時14分

ふみこさま

おはようございます。

熊谷に引っ越されてもうすぐ1年になるのですね。
おめでとうございます。
お庭もゆったりしていてリラの花もうれしそうですね。
ふちどりの石もいい感じですね。
私も石好きなので近くの多摩川までさんぽにいって
気に入った石をならべてみたりストーンペインティング
を楽しんだり部屋にもちこんでみたり。。
大好きな「たくさんのふしぎ」の「石のたんじょうび」
の本の最後に作者が「石をえらんだのはわたしではなくて石がわたしをえらんだのではないだろうか。。」
ってあるので。。ふふ。ふみこさんもこの熊谷のおうち
に「ふみこさ~ん」ってよばれたのかもですね。

私も東京から多摩川をわったてすぐの神奈川にすんで
もうすぐ30年。ほぼ東京と同じくらいの年月になる
なんてなんだかびっくり!水辺がすきだから多摩川によばれたかな~~ん~この敷地内の木々のみどりのトンネルの葉っぱのささやきによばれたかな~。いま空気が
ふるえるくらい美しいです。
ではふみこさんもみなさんもいい一日おすごしくださいね。

投稿: 真砂 | 2022年4月20日 (水) 06時32分

ふんちゃん皆様こんにちは。

ふんちゃんの北海道のお話。
私も近しい雪国の出身なので
なんとなく手袋やたくさん拵える感覚
わかります笑

今までのエッセイを見ると
とっても大切にしていることがわかります。

さて3人目ですが男の子みたいです。
3人兄弟ですみんな男の子です笑

たくましく育て!

投稿: たまこ | 2022年4月20日 (水) 11時34分

寧楽 さん

馴染んでいる一面もありますが、
まだまだ、と思う一面もあります。

まだまだ、というときは、
感謝不足をつきつけられるようで。
あちらを向いてこちらを向いて、
天をあおいで、
「ありがとう、ありがとうございます」
と唱えるのです。

宮大工でいらした
お父さまのお仕事を知っている
方たちなのでしょうか。
ひとの縁は不思議で、ある意味で、
そのときの「メッセージ」「合図」」みたい。

投稿: ふみ虫。 | 2022年4月20日 (水) 18時31分

みゅー さん

昨日は、ホタテ(生)が
50枚届きました。
殻から身をはずす作業に熱中しました。

北海道はいつも「たっぷり」!
両足を踏ん張って受けとめる。
そんな感覚を持っています。

投稿: ふみ虫。 | 2022年4月20日 (水) 18時34分

岡山のこんちゃん さん

こんちゃん、つるつるー!

やさしく、あたたかい旅の気配を
届けてくださって、どうもありがとうございます。

わたしも、ちょっとつるつりしてきたような。

投稿: ふみ虫。 | 2022年4月20日 (水) 18時36分

真砂 さん

いま、空気がふるえるほどうつくしい。

そんなことを敏感に感じとる真砂さん。
わたしは、いろいろ「鈍感」ですが、
アンテナを立てて、春を愛したいと思います。

そうそう、ここ熊谷は、
荒川と利根川のちょうどまんなかあたりに
位置しています。

投稿: ふみ虫。 | 2022年4月20日 (水) 18時39分

たまこ さん

王子さまだったら、いいなあなんて、
ふと思ったのです。

3王子!
あこがれますね。

わたしには3王子のお母さんという
友だちが3人ありますが、
みんな、子どもたちに尊敬されているんです。
ひとりは3人のお嫁ちゃんもありますが、
自然に仲よくしていて、ね。

あ、たまこさんにずいぶん先のはなしを
してしまいました。

とにかく、元気で過ごしてね。

投稿: ふみ虫。 | 2022年4月20日 (水) 18時43分

おはようございます
雨の日曜日です。
わが家の庭もしっとり 花も木も草も穀雨にため息をはいているようで生き生きとしてみえます。

道の駅などで山菜を見かけると生まれ育った里山を想います。
いまは畑で育てた山菜もあるようですが、子どものころは全てが山や川 自然のまままるごとのものをいただいていたのだなぁとしみじみします。

小やみになったところをみはからって犬を散歩に連れ出して
ところどころで季節の風景を感じればなおさら この雨も天からの慈しみのようです。

ふみこさま みなさま
日々いろいろなことがありますが、安穏でないことの隙間にも
前へと向かう変化は起きていますね。信じながら歩きたいわたしです。

投稿: こんぺいとう | 2022年4月24日 (日) 09時21分

ふみこ様

ちょっと疲れてしまったかな・・・と
痛めた足を引きずりながら パソコンの今に座り
ふみこさんの広場に来てみると

なんと 北海道がいっぱい!
ライラックも咲いている!
遠軽は 次男の住む町の隣町。

マルチビタミンをぐぐっと飲んだようになりました。
ありがとう。

小学校の校門の桜が咲きました
森では 春の妖精と呼ばれる花たちが
つぎつぎに咲き始めています
見て欲しいなぁ
見せてあげたいなぁ

春の妖精は ほんの短い期間だけなのです。

投稿: えぞももんが | 2022年4月24日 (日) 16時20分

ふみさま、みなさまこんばんは~~~

予報どおり、午後からシトシト雨がふっています。

雨が降るとなんだか周りの音も吸い取られるような気がして、おうちもしんと、そして心もしんと、そしてゆったりまったりしちゃっています。どこにも出かけずゆっくりお部屋でこたつにもぐり→まだ片付けていない(;^_^A)読みたかった雑誌や本を読んだり、アマゾンプライムで映画をみたり、のんびりすごしておりました。私のなかでははやくもゴールデンなウイークがきちゃったかのような。( ´艸`)

ふるさと

かあ・・・
私は東京大田区の父が勤めていた会社の小さな社宅で生まれ育ち(なので一応「京」子と祖父が有無をいわせず命名。私は両親がかんがえていた「さやか」がよかった・・(;^_^A


小学2年生からはずっと千葉で育ちました。
なのでここ「千葉」がふるさとっていう感じなのかな~。空き家の実家に風を通しにいくとホッとする空気につつまれて、父、母、弟との楽しかった想い出が頭によぎります。それを感じている時がふるさとを感じるときなのかな・・・ひとりぼっちではありますが小さな帰省につかのま、家族を感じます。

これからは、私が娘たちにとっての『ふるさと』をつくっていかなくちゃなんだな…と。先日早くも立川から2日間戻ってきていた次女を駅まで送りながら考えていました。

あっというまに季節は巡っていってしまいますから、一時一時を大切に味わって、季節ごとのたべものや、ファッションも楽しんで『人生って素敵で面白いな~~』とふみさまのおっしゃる「おもしろがり」を私も味わってきたいなあと思います。こころやすらぐ「ふるさと」を作っていきましょう。

北海道も、熊谷も、そして広場のみなみなさまが住まいの場所も、お便りから訪れてみたい場所になっています。(おたよりからの風景ですでにおじゃましちゃってる感じでもあります!)
空をみあげると
み~~~んなつながってるんだもんね~~。おおきな私のふるさとだ~~
と思います!

投稿: おきょうさん | 2022年4月24日 (日) 19時38分

ふんちゃん

 北海道がいっぱい(^^)
 うれしいです。
 
 そうです!
 手袋は「はく」ものだし、
 ごみは、「投げる」のです(^^)。
 ボタンを間違って押しちゃったりしたときなんか、
 「あ、おささっちゃった~」とかも言います。
 ふんちゃんには、そういったことばが通じるのが、
 とってもうれしい。
 ことばって、不思議ですね。
 わたしは、方言が大好きです。
 どこのことばの方言も、あったかい感じがして…。
 青森へ行ったら、青森の、
 沖縄に行ったら、沖縄の、
 なんちゃって方言を身につけて帰ってきて、
 家族に、いつも笑われていました。

 ライラック…、札幌はこれからですね。
 6月の最初頃には、「リラ冷え」というのがあり、
 あったかくなってきたと思ったら冷え込む時期があるのですよね。
 それが終わったら、少しずつ夏を感じ始めます。
 熊谷でもライラックが咲いてるんだな~ってつながっている感じがして、
 これまたうれしくなりました。

 おきょうさん さんのかいてくださったように、
 空を見上げると、み~~~~んなつながってますね~🎵

 いろんなことがあった1週間でしたが、
 この空の下、みなさんとつながってる~と
 ここへきて、ほっこりしました。
 

投稿: 空色めがね | 2022年4月24日 (日) 21時29分

ふんちゃんへ

今回のお便りは北海道がたくさんで道産子の私は嬉しく読ませていただきました。
今年で北海道で過した年月と北海道から出て過した年月がちょうど同じになる年です。(何だかへんてこな表現ですね)
結婚して夫の転勤で東京都武蔵野市で5年過ごしました。
娘とふんちゃんの三女さんが同じ年なので、ふんちゃんの本と出会って私は勝手にかなりふんちゃんを近くに感じてました。
もしかしたら、あのスーパーや商店街ですれ違っていたかも…なんて。

夫は一人っ子です。ふるさと大阪は義父母が亡くなり、マンションも売却し無くなった感じです。
家の存在がなくてもふるさとではあると思いますが…。
私の11歳から過した家は妹が守ってくれてるので帰る場所があります。
ありがとう、ありがとう…です。

そんなふるさとへ今晩のフェリーで渡ります。
えぞももんがさん、空色めがねさん
明日は千歳の辺りウロウロする予定です♪

投稿: ハチミツ | 2022年4月25日 (月) 05時29分

こんぺいとう さん

「信」ということばをいただいて、
胸に置きました。

また1週間のはじまりです。

投稿: ふみ虫。 | 2022年4月25日 (月) 09時45分

えぞももんが さん

北海道がいっぱい!の、
わたしの暮らしです。

道産子でよかったなーと、
北海道まみれで育ったことたのしいなあと、
北海道に縁深き友だちがいっぱいでうれしいなあと、
毎日思っています。

森のエゾエンゴサクさんたちにも、
よろしくね。

投稿: ふみ虫。 | 2022年4月25日 (月) 09時54分

おきょうさん さん

ふるさとも、土地も、
そうして家も、みんな「ひと」なんじゃないかな、
と思ったりしています。

ひとあっての、ふるさと。
ひとあっての、土地。
ひとあっての、家。

おきょうさんさんあっての、千葉県です。

投稿: ふみ虫。 | 2022年4月25日 (月) 09時56分

空色めがね さん

沖縄の仕事も長かったので、
かなりしゃべれます。

うそっこ関西弁、
うそっこ東北弁。

きっとわたしも笑われているけれど、
方言っていいね、いいね。

三女のはなすことばの
イントネーションが少しおかしい……。
これは韓国語、英語の影響なのか。
それも、方言だなあと思ったりしています。

投稿: ふみ虫。 | 2022年4月25日 (月) 10時00分

ハチミツさん

ハチミツさんとも、
いろいろいろいろ、重なっていますね。

武蔵野市でもすれ違っていたはずですが、
いまが、いちばん近いかなあ……。

投稿: ふみ虫。 | 2022年4月25日 (月) 10時02分

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