「好きなようにやっていいよ」
その日は東京で、3つの仕事をこなそうとしていた。
電車に飛び乗っては乗り換え、地下鉄の長いエスカレータを上ったり下りたり、地上でも急ぎ足になる。
こういうときは、案外アンテナがしっかり立っているらしく、おもしろそうな店や、街の空気、行き交う誰かさんのファッションをつぎつぎにキャッチしてゆく。
新宿駅から山手線に乗りこみ、「これでつぎの仕事に間に合うな」と安堵する。
ふと扉のほうに目をやると、若い男(ひと)が立っていた。18、9(歳)かな。背中を座席の枠にもたせかけて、窓から外を見ている。
白いシャツにデニム。足元は革製のサンダルである。
ん? スタンドカラーのシャツの襟元に何かがうねって見える。真珠のネックレスである。
近年、アクセサリーをたのしむ男性がふえたなあと気がついてはいたけれど、若いひとの真珠のネックレスあしらいは初めてだ。ふーん。
(それはいいけど、キミ、お母さんのアコヤ真珠のネックレスをこっそり持ちだしたのじゃないだろうね)。
真珠のネックレスがきれいだと思い、実際に首にかけて出かけるなんて、素敵だ。さりげなく、堂々としているところがまた、いい。男は真珠のネックレスをつけたりしない、と決めつけず、そのあたりを軽くまたいでいる。
そういえば、最近わたしは葬祭のときのほか、真珠おネックレスをつけていないのだ。山手線の男の子を見習って、白シャツや黒シャツに合わせるとしよう。
「渋谷駅、変わったなあ」
と思いながら、きょろきょろしていたときだ。
前方から印象的な気配が近づいてくる。
紫の紬の着ものをまとう、白髪をひっつめにした女性。半幅の帯をかなり低い位置に締めている。帯の色は黒。
「かっこよく見えるなら、それでよし」
と、その女(ひと)の着物姿は語っている。
かっこよさとともに、惹きつけられるが、楽そうなところだ。帯の結び目もぺったんこ(帰宅してから調べたら、「吉弥結び」)。こちらも、着ものの決まりごとを軽くまたいでいる感じだ。
このところ、わたしは「窮屈」に陥っている。
自ら「窮屈」を着こんで、これでよし、と思っている感じだ。
「窮屈」はある意味、無難へと導くやり方だからね。
3人の娘に向かって、「好きなようにやっていいよ」と云い云い暮らしてきたはずなのに、自分にはそう云ってやらなかったのかもしれない。
あらためて、云ってみる。
「好きなようにやっていいよ、ふんちゃん」
〈公式HP〉
https://www.fumimushi.com/
〈公式ブログ〉
http://fumimushi.cocolog-nifty.com/fumimushi/
〈公式Instagram〉
https://instagram.com/y_fumimushi
| 固定リンク
コメント
ふんちゃん皆様こんにちは。
好きなようにやっていいよ、自分に。
自分を甘やかすって難しくて
案外忘れがちで、でもとても大事なことですよね。
さて、ゴールデンウィーク。
かーちゃんは仕事ですが
遊べる時に坊や達と遊んでいます。
長男が次男に本を読んであげる口調が
私、そっくりでちゃんと聞いてるんだな
と嬉しくなりました
投稿: たまこ | 2022年5月 3日 (火) 10時38分
ふみこ先生、みなさま
こんにちは、気持ちのよい五月晴れです。
ツバメが畑の電線に朝のあいさつに来始めました。夫がさっそく話しかけています。
そして「鯉の昼寝事件」の再来です!アオサギが久しぶりの出現です。
先月しっかり水を抜いて掃除をして新しい15センチぐらいの鯉を10匹ほど池にはなしました。。順調に池に慣れて喜んでいたら、今朝スーと庭に降り立ち池をのぞきこんでいました。見つけた夫が飛び出して行ったら飛び立ちましたが羽を開いたときのアオサギの大きいこと!
昼寝事件以来、池に網をするとやって来なくなっていましたが新しく池にはなした鯉達が池になじめず、悲しいことが続き池をもうあきらめようとも思いましたが義父が手作りして50年の池、これで最後と鯉をはなしたところてす。しばらくまた夫とアオサギの攻防戦が続きそうです。
王子達の帰らない五月の連休も3年目です。今年は五月人形も出していません。いつもと変わらない部屋ですがなぜか静かすぎます。少し寂しいです。
寂しいという言葉が似合わないこんちゃんと周りの人たちに思われていますがわたしずっとがんばってきただけです。
ようやく夫には「もの言う妻」になれたのですが夫以外にはまだいい人でいたくて、心の窮屈抱えて生きています。
わたしも「すきにやつていいよ、こんちやん」と伝えます。
せんせい、みなさま、五月晴れを楽しんでくださいね。
投稿: 岡山のこんちゃん | 2022年5月 3日 (火) 16時42分
ふみこさま
すきなようにやっていいよ
私も自分に言うことにしますね!
今日は、ゴールデンウィークの催しに行ってきました。コロナでなかなか行けなかったけど、はるくんとさっちゃんとくまこといっしょに水族館に行きました。ながーい行列に並んで入って、金魚すくいもしてきました。
はるくんは喜んでいたし、くまこも久しぶりに楽しかったなぁって言ってたのでよかったです。
コロナに気をつけながら、すきなようにやっていけたらいいですね~
投稿: こぐま | 2022年5月 3日 (火) 22時01分
ふみこさま
おはようございます。
「すきなようにやっていいよ~」のお言葉どおり
いつもこの広場で好きなこと思いつくままに書いて
たのしまさせてもらってま~す。改めていつもほっと
させてもらってありがとうございます。
そうそう真珠といえば。。
タルティー二という作曲家が気になったので「バロック」の意味を調べてみたら17世紀~18世紀後半の美術様式を指す言葉で「いびつな真珠」を意味するポルトガル語に由来するらしいのです。
バロックといえばバロックでしょ~みたいに思っていたので。。びっくり。。いびつな真珠というとらえかたが
おもしろいな~と思います。
人々が自由に感情を表現しようとしはじめ躍動感をもってのびのびと歌う心地よさ。。コロナ禍の今もとっても
大切なことですよね。ふふ。
もうすぐ秋の発表会のアンサンブルも考え中で
ドボルザークの「弦楽セレナーデ」5月のさわやかな
ここちよい風がふわっと吹いてくるような出だしに
すっかりはまっております。こういう音楽をきいているとやわらかな私をたもてそうです~。ふふ。
ふみこさんもみなさんもよかったら聞いてみてくださいね。ではここちよい休日おすごしくださいね。
投稿: 真砂 | 2022年5月 4日 (水) 07時04分
たまこ さん
「好きなようにやっていいよ」
というのには、そう、覚悟が必要です。ね。
責任もあります。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2022年5月 4日 (水) 15時40分
岡山のこんちゃん さん
「夫」以外に云いたいことを云う、は、
こんちゃんの「好きにしていいよ」には含まれていないのでは?
わたしも、夫以外には、
怒らない。
これが、わたしの「好き」なのです。
さびしい、と伝えてくださって、
ありがとうございます。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2022年5月 4日 (水) 15時44分
こぐま さん
水族館。
わたしは、水族館が好きなのです。
かつて、両生類とか、魚類だったのかも
しれません。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2022年5月 4日 (水) 15時47分
真砂 さん
じつにおもしろいおはなしを、
聞かせていただきました。
真珠。
それもいびつな、というところ、
とても素敵です。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2022年5月 4日 (水) 15時49分
ふみこ先生
お忙しいのにごめんなさい。一言だけお礼を伝えたくて。
せんせいのおっしゃる通り、夫以外のひとに思うままを伝えることは「わたしの好きなようにする」には入ってないですね。
ありがとうございます。せんせい、みなさまに会えてほんとうによかった。
投稿: 岡山のこんちゃん | 2022年5月 4日 (水) 16時39分
ふみこさま みなさま
さつき晴れの爽やかな毎日です。
『好きなように…』あまり考えてこなかったです。だれかにそう言われたらかえってどうしたらいいかわからなくなったかもしれません。子どもたちにもそんな親ではなかったな〜。そして子どもたちもわたしみたいだな、とちょこっとおもいます。
庭で過ごすことが多くなって草と戯れていると、小さな生き物になって駆け回る自分を想像したりするようになりました。
いも虫が一瞬で鳥に攫われるように、危険もいっぱいかしらんなどど空想します。ニルスのふしぎな旅みたいに。
この数日で何人かの友人としばらくぶりで会話ができました。
そういうひとたちがいて幸せです。この場所も無闇矢鱈とヤブをかき分けてぽっかり出くわした広場、みたいです。
ふみこさま みなさま
ありがとうございます。
投稿: こんぺいとう | 2022年5月 4日 (水) 17時05分
岡山のこんちゃん さん
こんちゃんは、自分で
「機嫌」をつくれるひとだからねー。
きっとそうだと、思ったのです。
機嫌よくゆきましょう、わたしたち。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2022年5月 4日 (水) 22時43分
こんぺいとう さん
堂堂とする。
これかもしれません。
自分の考え、思い、好みを
大切にしながら、堂堂と。
小さな生きものになっている自分。
それ、いいわあ。
草むしりしていたら、空にさらわれる。
きゃー。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2022年5月 4日 (水) 22時47分
ふみこさま、皆さま
新緑がまぶしい子どもの日でした。
先日野草の「スイバ」のジャムを教わりました。
作り方はとっても簡単!お庭や草っぱらに生えている「スイバ」を摘み、
洗って同量のお砂糖と煮るだけ。
スイバの酸味が絶妙で、ルバーブのような爽やかな風味です。
身近にあった植物にあらためて「はじめまして」を言った気分でした。
「好きなようにやったらいいよ」
仕事も含め、暮らしのなかで
「これでいい」よりも「これがいい」って思えるときは
気持ちが充実しますね。
大学2年を終えた長男が進路変更を決め、今年度は休学。
やりたい学びができるところをもう一度目指しています。
乗った電車の行き先が違うことに気づいて途中下車、
これから新しい電車に・・・うまく乗り換えられるよう
願いつつ、母に出来るのは後方支援だけですね。
投稿: 円 | 2022年5月 5日 (木) 19時23分
ふみさまみなさまこんばんは~~~
ゴールデンなウイークももうあと1日でおしまいですね。
私の中では
ゴールデンウイークまでは〇〇でもいいか
ゴールデンウイーク過ぎたら〇〇し始めないとやばいぞ、
ゴールデンウイークで少し休めるからがんばろう!
なんてゴールデンウイークを盾にするような感じで生活していたので終わってしまうのが少々ビビTっております(;^_^A
でも、気候も初夏の日差しになってきまして
「ああ、暑い暑いという日も近くなってきているな」と次はお盆休みを盾にしようかな、などと悪賢いことを考えてます( ´艸`)
なんとなく、昔から、
「これ、どうしようか?」
とか、
「どこ、いこうか?」
とか、
「何食べる?」
とか、
「誰におねがいしようか?」
と相手に振ってみても
「どうしようか?おきょうはどうしたい?」
「おきょうちゃんはどこに行きたい?」
「なんでもいいよ、おきょうは何たべたいの?」
「おきょうさんがお願いしたい人でいいよ~~」
とかえされてしまうタイプ。( ;∀;)
そして結局私はひたすら悩んで
なんとか答えを決めてその方向に進むようなことが多い気がします。
好きなようにやっていいいよ
は、
けっこう勇気がいることのような、
そしてよっしゃと力をいれなくてはいけないことのような
ドキドキと、不安も入り混じることのような
そんな気がします
自分のきめた好きなようにのことが、
みんなにとってのよきことなるなのか?
自分だけが好きで、みんなは嫌いだったらどうしよう・・・
自分の好きにやったことが大失敗になってしまったらかなしいな・・・
とか、思いながらあれこれ考えて
でも
最後には自分を信じて
好きなようにすすませていただく。
でも、ほんと、
それがよい方向に進めた時はすごく嬉しいものですし、
型どおりにうごいてみたり、人の決めてくれたことにのっかるのはすごく楽だけど
でも自分のきめたことに自分で進めたときのほうが充実感はありますよね。
ファッションでも、食べ物でも、生き方も
これからも好きなように
それが素敵と言われるように(ま、言われなくてもオーライオーライだけど)
なるべく心を自由に開放してあげて生きていきたいですね!!
投稿: おきょうさん | 2022年5月 7日 (土) 21時34分
ふみ虫さま
昨夜、うんたったラジオを
聴きました。
アズアズにおおいかぶさらない
ふみこさんに、笑いました。
おふたりの感性のぶつかる?!
それぞれの言葉に
親子やけど対等で
育てたけど育ててもらったんやなぁと
思って。
なんか、しみじみ、思いました^_^
投稿: 寧楽 | 2022年5月 8日 (日) 13時55分
ふんちゃん
またいつもの……な感じがしますが、
「わたしもだ!」と思いながら、
ふんちゃんのお話を味わっていました。
子どもたちには、「好きなようにやればいいよ」と言うのに、
わたしは??と……。
“お母さん”であることが、
そんな風にさせていたのか、
“〇〇しなきゃ”とか“〇〇しておかないとな……”
と、全然好きなようにじゃないなぁ~です。
そういえば、ときどき、2番目ちゃんから
「そういうけどさ、そういうお母さんは、
案外、まじめにやっちゃってるからね~」と
突っ込まれたりしていました。
ふんちゃんも……だったなんて、
ちょっとうれしくなっています(^^)。
だいたい…、わたしの「好きなように」ってなんだ?
と、そんなことから思いめぐらせています。
たのしい(^^)。
最近、風が強くって、なかなかお散歩に行くきもちになれずにいました。
なので、連休は、家でのんびり過ごしていました。
ゆっくりスタートの連休明けになりそうです。
寧楽さんのおかげで、うんたったラジオの新着があるのを知りました!
これから、お風呂に入りながら、ゆっくり聴こうと思います!!
ありがとうございます!
投稿: 空色めがね | 2022年5月 8日 (日) 19時57分
ふみこ様 こんにちは
「好きなようにやっていいよ、えぞももんが」と言われても
きっと私は いつもの時間に起きて
いつものように ごはんを作って
ラジオを聞きながら 掃除をするんだろうな・・・と思います。
そんな自分を時おり
「チッ つまんない人間だな」と思うのですが
いつものことを いつものようにできる時間が
好きなのだろうと思います。
しかたないなぁ。
ふみこさん 札幌はそろそろライラックが咲きそうです。
いつものように
茨木のり子さんの詩を思い出します。
「五月の風にのって
英語の朗読がきこえてくる
裏の家の大学生の声・・・」
投稿: えぞももんが | 2022年5月 9日 (月) 12時13分
円 さん
若いひとの「途中下車」「寄り道」
「そぞろ歩き」「一時的逃避行」を
理解する大人でありたいなあ……。
「それ、いいよ」
「よく決めたね」
「お逃げよ」
ってね。
王子さまは、大きくなられますよ(予言)。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2022年5月 9日 (月) 21時22分
おきょうさん さん
追いかけない。
これが「すきなようにやる」の符牒。
じゃないかな。
どちらかと云うと「追われる」。
ね!
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2022年5月 9日 (月) 21時36分
寧楽 さん
妹だけど、姉さんの寧楽さん、
聞いて聞いて。
めっちゃ、遠慮したんよ。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2022年5月 9日 (月) 21時37分
空色めがね さん
いや、けっこう、誰もが
好きなようになってるんだと思うんです。
が、ときどき「好きなようになる」って、
云い交わさないとさ、
無理したりするでしょう、わたしらは。
だから、云ってみたのー。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2022年5月 9日 (月) 21時39分
えぞももんが さん
ものすごく思いきったことを書きます。
えぞももんがさんは、
いつも、好きなように生きてるよ。
びっくりしましたか?
高潔な えぞももんがさんは、
どこをどう突いたって、
いまのままでいると思うから……。
讃えてるんです。
わかっていただけた、かな。
ふ
投稿: ふみ虫。 | 2022年5月 9日 (月) 21時43分