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2022年10月18日 (火)

あたらしい風

「ことしはふたりで稲刈りをしない?」
 夫がこう云ったのは、9月の終わりのことだった。
 それはまるで、「ちょっと散歩に行かない?」とか、「深谷シネマに映画観に行かない?」というくらいのふわっとした誘い方だった。
 誘う。
 ほんとうに誘う感じ。

 こちらも、ついふわっと応じる。
「はーい」

 だがしかし、「ことしはふたりで」とは、どういうことを意味しているのか、まるでわかっていなかった。わかってもわからなくても「はーい」と云ったり「やだよー」と云ったりするのが、わたしである。
 稲刈り第1日目を迎える。ことし田植えをした田は6反(畳3600畳分)、この日はその半分の稲刈りをする計画だ。

「はじめようか」
「はーい」(ひとつ覚えである)

 田んぼは、家の前の畑の向こう側、近いのである。
 コンバイン(稲刈り機)で出発する夫。
 長靴を履いて畑を横切って出発するわたし。

 足で歩くわたしのほうが、先に田んぼに到着し、かなり待っているのが可笑しい。軽トラ(軽トラック)、トラクター(乗用耕運機)は一般道を走ることができる(ナンバープレートが付いている)。田植え機、コンバインたち、ほんとうは一般道を走れないのだが、一部走らせてもらって田んぼに到着。
 すごくのろい。長靴を履いたわたしの歩みよりものろいクルマって、愛しいなあ。働きどころは、速さじゃないんだものね。

 田んぼでは外側から、反時計まわりにコンバインで稲を刈ってゆく。
 こんなことにもいちいちわたしは、驚いている。
 ああ、外側からくるくるまわって刈るのね、さいごは、まんなかで終わるのね。

 わたしの役割は、コンバインのあとをついてまわり、コンバインがなぎ倒して刈りきれなかった稲を、鎌で刈りとること。コンバインは「くるくる」の曲がり角の刈りとりが苦手だ。そこを手助けしたり、落ち穂を拾ったり……。
 コンバインは、わしわし食べるように稲を刈りとって、ぐんぐん進んでゆく。ものすごく優秀な機械だ。

 気がつくと、わたしの前をカラスが2羽ゆっくり歩いている。番(つが)いだろうか。
 何をしているかというと、丈高く育った稲を刈りとったことによって、あらわになったカエル、虫たちをつかまえて食べているようだ。もうもう夢中だから、わたしがすぐうしろに迫っても、逃げるどころじゃない。
「カラスさん」
 と呼びかけると、あわてて飛び立つ。
 カラスたち。鳥たち。虫たち。ヒトたるわたし。みーんながくるくる反時計まわりに歩いてゆくのは、何かの遊びのようで愉快。来世は、あなたがカラスで、君たちが鳥たち、わたしが虫かカエルかもしれないけれど、そのときもよろしくね……。

 籾の袋詰め、藁のこと、いろんな作業があった。
 日の暮れるぎりぎりまで作業をして、わたしはあたらしい風を思っていた。いつも、こんなふうに自分の前に置かれた役割をこなしながら生きてきたけれど、こんなにも土に近い役割を与えてもらえるとはね。

「どうして『ことしはふたりで稲刈り』と云ったの?」
 と、黄昏た田んぼのまんなかで、夫に訊く。
「これから仲間に助けてもらうとしても、まず、ふたりで全行程をしてみて、困ったりしてみたかったんだ」

「はーい。ははは」

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コンバインのうしろをついてわたしは…
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コメント

こんにちは。全貌がわかっていなくても応答し、時には相手の提案を肯定し誘いに乗ってみる。その気軽さ大らかさに心を打たれました。事前の情報を得て、失敗をしないように、それも必要なことではありますが、あえて、それをしない? ふみ虫様の選択なのでしょうか? 少し真似させてください。その先にアクシデントがあろうとそれすら楽しめてしまえそうですね。ありがとうございます。

投稿: なおなお | 2022年10月18日 (火) 11時21分

ふみこ先生、みなさま

こんにちは。
せんせい、稲刈りお疲れさまでした。
先日、おばが息子のコンバインの後を刈って行って腰が痛いと言っていたのを思い出しました。
せんせいは、大丈夫ですか?

こちらでは、皆、老いて人手がなく、農協やまとめて刈って下さる人に委託しコンバインが活躍しています。広い、広いせんせいの田んぼをお二人で稲刈りできるのもたくましいコンバインのおかげですね。

足が悪くなるまで散歩をしながら、夕陽に映えて田んぼの中を動くコンバインと運転する人がかっこよく見えてながめていました。
ただ少し山奥に入ると若い人たちによって甦った棚田がありますが、狭いところは人の手で刈られていることでしょう。

落花生の後を玉ねぎの畝にしました。
もみがらとぬかを混ぜて耕したので、スズメたちがいっぱいです。

菊作りも蕾がふくらみ始め、花台をつける作業に入りました。
腰にはこたえますがお日様を背に穏やかな時間です。

せんせい、みなさま、深まる秋をお楽しみください。

投稿: 岡山のこんちゃん | 2022年10月18日 (火) 16時01分

ふみこさま

おはようございます。

稲刈りのひろびろとした光景&爽やかな風を
ありがとうございます。
新しい風のなかでのふみこさんたちの笑い声や
おふたりのやりとりもきいてみたいです~。

「どうするのよ~」「むりったらむり~」
という会話の連続だった少人数出たとこ勝負オケ
でのあのやりとりも何だか妙に懐かしくなってきました。ドキドキでしたが。。常に発見がありひょっこり
現れる助っ人さんとで生まれてくるものの豊かさ。。
誰でも入り込める柔らかな場所をめざしていたのだろう
といまでは思えます(そのときはき~き~でしたね)

だからこの間の演奏会でもコロナ禍で場所がとれなくても人がぜんぜ~ん足りて無くてもアンサンブルなんとか
なると楽しめたのもあの4年間のおかげだな~とあらためて感謝なりです。ふふ。

ちょうどテレビで稲刈り&かえるのおひっこしを子供達が手伝うというのをやってました~。秋の美しい光景いいですね。ではふみこさんみなさんも楽しい秋のいちにちお過ごしくださいね。

投稿: 真砂 | 2022年10月19日 (水) 06時42分

ふみ虫さま

熊谷のおうちに
田畑にほんとうに
あたらしい風が吹きはじめ
ましたね。

土地もご先祖さんたちも
きっとニコニコ笑顔で応援
してくれてますねぇ。

投稿: 寧楽 | 2022年10月19日 (水) 10時52分

なおなお さま

「失敗」と「うまくゆかなさ」で構成されている
ようなわたしです。

「失敗しないように」というチャンネルを
持っていないような気がします。
じゃんじゃん失敗しよう!と若いひとたちにも、
娘たちにも云いつづてきたような。

稲刈り残りの半分は、
田んぼから水がはけるのを待って、
もう少し先になりそうです。

投稿: ふみ虫。 | 2022年10月21日 (金) 15時05分

岡山のこんちゃん さん

腰、だいじょうぶです。

丈夫でもあるけれど、
どこか著しく鈍感だからかもしれません。

落花生、いいなあいいなあ。
大好きなのです、落花生。
茹でて食べるのも、大好きです!

投稿: ふみ虫。 | 2022年10月21日 (金) 15時07分

真砂 さん

勝負オケ。

そうかあ……。
よし、わたしも云ってしまおう。

勝負稲刈り。

投稿: ふみ虫。 | 2022年10月21日 (金) 15時22分

寧楽 さん

何より 寧楽さんのおことばが、
うれしくて、わたしがにやにや。

照れながら。

投稿: ふみ虫。 | 2022年10月21日 (金) 15時23分

ふんちゃん

 おふたりの会話の感じ……やっぱりステキです。
 ちょっとお散歩に誘う感じでの「稲刈り」。
 火曜日に読ませていただいたとき、
 ふわ~っと風が通り抜けるような感覚がありました。
 映画の「めがね」みたいな空気感を感じました。

 なにごとも、重たくとらえすぎない。
 わたしも、そうありたいなぁ……と日々思っていますが、
 ちょっとすると、
 「大丈夫、大丈夫さ~」と言い聞かせていて、
 そう言い聞かせていること自体が、もう重たくとらえようとしてるなぁ~と、
 自分で気づいたりして……。

 でも、今回のコロナかな?という状況は、
 なるようになるさ、いや、もうすでに結果は決まってるのだもの
 と、気楽に過ごすことができました。
 結果的に、陰性だったからよかったのかもしれませんが……。
 コロナさんであろうと、インフルちゃんであろうと、
 カラダが疲れたよ~ってサインだなぁ……とは感じたので、
 ごはんを薬膳みたいにしよ~!と、やりました!
 ショウガとニンニクたっぷりの塩こうじみそ鍋にしたり、
 最近、わたしの中で流行っているカレーそばにしたり……。
 鍋で残ったたれを取っておいて、次の日におじやにしたら、
 3番目ちゃんに「おいしかった。薬みたいだったけど」と、
 笑われました。
 そして、葛りんご!まさしく葛根湯の代わりです🙂
 たのしかったです。
 コロナさんではなくても、だいぶ疲れたカラダのようだったので、
 ゆっくり休んでもらいました。

 稲刈り後のカラダは、あちこちバキバキしたりしないのかなぁ……と 
 気になっていました。
 なんとなくふわっときもちよく動いているお姿を想像しつつも、
 2,3日したら、あちこち痛い……とかないのかなぁ……って😅
 きっと、おふたりの姿を、おとうさまおかあさまが見ておられますね!
 
 
 

投稿: 空色めがね | 2022年10月23日 (日) 11時01分

ふみこさま
稲刈り 大変なイメージでしたが、ふみこさんの文章を読むと楽しそうって思いました。
私は、じいちゃんにまかせっきりだったなぁ。
今日、わたし57歳になりました〜。

青空と祭囃子とコスモスに彩られながら
ひとつ年をとる

さっちゃんも20日に1歳を迎えました!
なかよく年を重ねていきたいです。

投稿: こぐま | 2022年10月23日 (日) 19時32分

空色めがね さん

葛りんごやら、塩麹味噌鍋やら、
どきどきしています。

いいなあ、食べたいなあ。

このところ、落ち着いて台所に
立っていられなくて、
早づくり、早食い競争みたいなことになっています。
それはそれでおもしろいのですが。

そうですね、鍋の季節がやってきますね。

投稿: ふみ虫。 | 2022年10月23日 (日) 22時42分

こぐまさん

47歳、おめでとうございます。

ちょっと引いて云ってみました。

さっちゃんが1歳!
無事に1歳になってくれて、どうもありがとうございます。

投稿: ふみ虫。 | 2022年10月23日 (日) 22時44分

ふみこ様 こんにちは

ふみこさんと ご主人のお話を聞いていると
大変なことも 楽しいこととして伝わってきます
実際は 一つ一つが 悩めることだと思うのですが
ふみこさんの おもしろがるの気持ちですね。

「まず、ふたりで全行程をしてみて、
困ったりしてみたかったんだ」の言葉
そうか・・・と 納得しました。

ふみこさん 今日は冷たい寒い雨です
冬が 目の前です。

投稿: えぞももんが | 2022年10月24日 (月) 11時31分

ふみこさま

すごい!
自分の目の前に置かれた役割を楽しみながら、時には困りながらもこなしてしまう。
刈り取りをされた田んぼの前に立ってみたくなりました。
そのうち、ふみこさんもコンバインを運転するようになるかもと想像したりしました。

夫さまも忙しくしておられるのに
熊谷の家の田畑を守ってきましたよね。
くろすいかをつくって出荷したり
本当に熊谷の家には新しい風が吹き始め、ご先祖さまも大喜びされていますね。
いつか、夫さま
代島治彦さんにも会ってみたいなぁ。
映画の話
畑の話
一緒にしてみたいなぁ。

ご夫婦の力
すごいなぁ
お疲れさまでした。

投稿: ユリの木の花子 | 2022年10月24日 (月) 13時01分

ふみさまみなさまこんばんは~~


月曜も遅くの登場でございます。
発表会が終わってからというもの、なぜだかいろいろな人からのお誘いが後をたたなかったり、はたまた私がどうしても行ってみたいイベントのチケットをむりやりスケジュールをあけて取ってみたりしてしまったりで、気持ちが外へ外へむいております。
そんな風がきっと今の私には吹いてきているのだろうな~と身体をこわさない程度に風任せにしております。

少しずつ少しずつ季節がうごいていますね。でも、私は夏支度より、冬支度のほうがなんとなく好きなんです。セーターを出したり、コタツを出したり、フカフカの毛布を日に当てたり羽毛布団にカバー掛けたり・・・温かいものを準備していくごとに気持ちもあたたかくなる感じなのかしら~~( ´艸`)


ふみさまとだんなさまのやりとり・・。
もう、本当に愛が・・・あふれている・・・。あふれまくっている・・・

「どうして『ことしはふたりで稲刈り』と云ったの?」

「これから仲間に助けてもらうとしても、まず、ふたりで全行程をしてみて、困ったりしてみたかったんだ・・・・」


もうBGMは
まわれま~われメリーゴーランド~~♪久保田利伸さん歌っちゃってます。

うちの次女さん世代いうところの


キュンです(。・ω・。)ノ♡


3600畳もの広さを、おふたりとカラスさんで回るメリーゴーランド。
今年の新米はあま~~~くてふっくらでしょうねえ・・・。ワクワク。

新しいことにチャレンジ出来るって本当に素敵。

私もチャレンジしてみたいなあ。何か私の前に置かれないかな~~?

土曜日に友人に誘われて行った香取神宮。
参道の途中に手相占いの方が居て。
友人は占いがすごく好きなのでみてもらうというので私もうまれてはじめて手相みてもらったんですよ。
そしたら、開口一番

「あなた、まあなんてオトコギのある手相なのかしら~。はっきりしてるわね。悩みなんてあるの?ピアノを教えているという人の手はね、たいがいもっとこう細くて女性的で繊細なのに・・・」

と笑われてしまいました。

もう少しオトコギが必要な職業にチャレンジしてみるべきか香取神宮の神様に問うてみたいと思いました。(笑)

投稿: おきょうさん | 2022年10月24日 (月) 19時56分

えぞももんが さん

「困ったこと」を予想していたので、
ところどころ、うまくいっていることに
感激しています。

「困ったこと」は、来年改善して、
なんとかしようと思います。

呑気だ。

投稿: ふみ虫。 | 2022年10月24日 (月) 21時11分

ユリの木の花子 さん

稲刈りはまだ半分(3反)残っています。
水はけがかなわず、待てるだけ待っているのです。

田んぼは「水」が命だと、
わかってはいたけれど、ほんとのほんとに
実感しました。

でもなんだか、
また刈れるかと思うと、
たのしみで。

投稿: ふみ虫。 | 2022年10月24日 (月) 21時14分

おきょうさん さん

広場のみんなが、笑っていると思います。

おきょうさんさんに「オトコギ」があるのは、
みんな知っている、と。
(だからこそ、参道の占師はすごいね)。

どの職業を選んだって同じことだと、
おきょうさん さんのほか、広場の全員が
知っています。
……くくくくく。

投稿: ふみ虫。 | 2022年10月24日 (月) 21時18分


たまこです。
コメント反映されず困っています

投稿: たまこ | 2022年10月25日 (火) 08時04分


あ、やっと今日反映されました。

元気なのをお伝えできてよかったです。

ずっとなぜか
スパム対策に引っかかってました😅

投稿: たまこ | 2022年10月25日 (火) 08時05分

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