10月の終わり、「ふみ虫舎エッセイ講座 in 熊谷」を開く。
親しい仲間の皆さんと熊谷の家で過ごすいちにち。
これから先熊谷の家でできることを探ってゆきたいという考えが、わたしのなかに生まれている。そんなムードのようなものを家のなか、自らのなかにつくってゆくことができたなら……、と準備をはじめた。
しかし、準備はあまりできなかった。窓ガラスを拭いて、座布団カヴァをとり替え、コップの数をふやすのが精一杯だった。お昼のお弁当は、「お花屋さん」という名前のお惣菜店に頼んでつくってもらう。
前の晩、「そうだ、おみつけをつくろう」と思いついた。皆さんと、大根のセンロッポンのおみおつけを、ふうふういって食べたい!
うちにある2番目に大きい鍋をガス台の上に置き、27人分のおみおつけの水の分量を、お椀ではかる。そうして鍋のなかに昆布と煮干しを入れておいた。
当日は快晴だった。
あたたかい日差しがさしている。
皆さんが上着をかける洋服掛けを出す。大根を刻む。座布団をならべる。
ブラインドの羽を拭いたり、鏡磨きをしたかったが、「失礼しちゃおう」と決める。
11時半になると、仲間の皆さんが、タクシーに分乗して到着、到着、到着。
そわそわしながらわたしは、大根のおみおつけの鍋を火にかける。だしをとりながら、味噌を溶き入れる2歩前で火を止める。
講座では、絵本『タケノコごはん』を読むところからはじめる。
これは、映画監督の大島渚がつくりあげた絵本である。先日、ここでもご紹介した児童文学者の山花郁子さんがおしえてくださった。
大島監督の息子の武さんが小学校3年のとき、学校から出された「お父さんかお母さんに、子ども時代のことを書いてもらってください」という宿題がもとになって生まれた作品だ。
読んでみると、戦争のもたらす悲しみと、日常をかたちづくっている平和のあたたかみが、胸に沁みてくる。伊藤秀雄の絵も、いい。
大島渚の「パパ」としての一面を知ることができて……、うれしくもある。『タケノコごはん』を声に出して読むことが、この講座にはふさわしいことのように思えたが、やはりそうだった。
講座の仲間のなかには、子どもたちへの本の読み聞かせの活動をしているひとがあるけれど、訊いてみると「この本のことは知りませんでした」という返事がかえってきた。
「それならいつか、子どもたちに読んであげてくださいね」
さて、講座がおわって食卓を並べたりしていると、土間の台所から声がかかる。
「お味噌汁に、味噌を入れちゃいますよー」
「はーい、お願いしますー」
と応えながら、心動かされる。
おみおつけの仕上げを引き受けてくれる仲間へのありがたみと、なんでもかんでも自分でしなければいけないと思いこんでいる自分の情けなさが浮かんできて、心動かされたのである。
タケノコごはんあり、大根のおみおつけありの、豊かな時間は暮れはじめる前、静かに終わった。
黄色い座布団カヴァ(欧風)を選んで、
座布団30客を備えました。
これがまた、活躍する日がめぐってきますように。

山本ふみこ(母)と山本梓(娘)がとりとめもないおしゃべりをお届けする「うんたったラジオ」。
好きなドラマ、ハガキを書くこと、お金、恋愛やうまくいかなさについて……その場でなんとなく決めたテーマで、編集を入れずにお届けしてきました。そんな「うんたったラジオ」もはじまってから、もうじき1年。初めての試みをしてみたいと思います。
埼玉県・小川町の「PEOPLE」で公開収録をします。
お茶を飲みながらおしゃべりしているわたしたちの「いつもの感じ」をご一緒いただけたら嬉しいです。
PEOPLE店主のたけくんもそんなおしゃべりに加わる初のゲスト回でもあります。
山本梓の初の著書『プンニャラペン』(山本ふみこによる出版レーベル・ふみ虫舎刊)の販売もします。
【概要】
「うんたったラジオ」公開収録 in PEOPLE
日時:11月13日(日)14:00〜16:00
料金:2000円(喫茶の飲み物、ふみこと梓のお土産お菓子付き)
場所:PEOPLE(埼玉県比企郡小川町小川197 玉成舎の石蔵)
小川町駅から徒歩8分ほど。
◎お申し込みはこちらへ
fumimushisha@gmail.com
https://open.spotify.com/episode/1TK4EudMFbjNjwyx0qLVun
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