冬眠風の日日
1月25日
精神(こころ)の働きがにぶい。ぼんやりしている。
ぼんやりしている場合じゃないぞと、自らを奮い立たせようとするが、うまくゆかない。
わたしのなかに棲んでいるちっちゃな虫が、いやに力強く抵抗する。
「やだよー」
「きょうは休みたいよー」
仕方がないから、長女の梓に頼まれていた薄手のセーターの「染め」にとりかかる。ベージュのセーターを黒く染める。
大きな大きなホーローの洗面器を出してきて、80度くらいのお湯を注ぎ、黒色の染め粉と塩(塩は色止め)を溶き入れる。
昨年軽井沢に出かけたとき、わたしも「いいんじゃない?」とすすめて求めたセーターだが、仕事先に着て出てみたら、ぴんと来ないというのだ。
「お母ぴー、染めてくれる?」
「よしきた、染めてあげます」
と引き受けたまま、しまいこんでいたものだ。
仕事が捗(はかど)らない日には、こういうしごとをしておくのに限る。1日が終わったとき、セーターを染めた!という達成感によって、仕事の計(はか)がゆかなかった情けなさから救われるのだ。
机の上で、分厚いゲラがこちらをじっとみつめている。
「いいのさー、きょうはセーターを染めたからー」
1月28日
夫が東京に仕事に出かける朝。
久しぶりに弁当をこしらえることを思いついた。
30分でできるだけのことをしよう。
隠れのり弁(玄米ご飯の下に、おかかと海苔が隠れている)
梅干し
豚の生姜焼き
卵焼き
ブロッコリのナムル
たくあんときゅうりの味噌漬け
たくあんときゅうりの味噌漬けは、熊谷市内のJAの等産物直売所「ふれあいセンター」で求めたもの。「ふれあいセンター」はたのしい。ときどきここで、おもしろいものをさがして、友だちに送ったりする。
小豆、ささげ、焼きそば、こんにゃく、ごま、切り干し大根など。
「あ、お弁当おいしかったです」
帰り道の電車からの連絡。
1月29日
結局今週は、ぼんやりしたままだった。
締め切りのある仕事は間に合わせたが、しておいたほうがいいに決まっている仕事を、いくつか仕損なった。来週を思うと、気が気ではないが、まあ、なんとかなるだろう。
「冬眠風の日日」
ということばが浮かぶ。
ムーミン一家の皆さんは、11月に松葉をお腹におさめて眠りについたら、4月まで目覚めない。11月がくるたび、ずいぶん長く眠るなあ……と思う。毎年毎年うらやましがるのである。
そんなに長くは眠れないけれど、わたしにだって、たまに冬眠風の日があっていいことにしよう。
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