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2023年8月15日 (火)

隠岐あらめ

8月13
 提灯を持って、お墓にご先祖さま方を迎えに行く。 
 ことしは、夫とわたしふたりの迎え盆である。
「それでは、まいりましょう。お線香の煙、提灯をしるしとして、ついてきてくださいましねー」
 とお墓で、叫ぶ。
 この世の添乗員よろしく、はきはきと。
 帰り道、もうすぐ家に到着というところで、隣家のトモサン(80歳代男性)と会う。
「トモサーン」
「おお、これはこれは」
 トモサンは昨秋、熊谷市内のサービス付き高齢者住宅に入居したが、週に幾度か車を運転してもどってきて、草刈り、庭仕事をしている。ひとり暮らしが長くなり、なんでもひとりでこなせるトモさんだが、あたらしい棲み方についてもひとりで考えて決めたのだ。
 いまでもこうして、会えば立ち話をする。
 ともに食卓を囲んだことはないし、ならんでどこかに出かけたこともない。思い返せばほんとうに立ち話だけの間柄なのだが、わたしは、立ち話友だちというのは、なかなかいいものだと思っている。

「暑いですね、ことしの夏は。あら、お顔の色がいいですね」
「だめだねー。なんだかぼーっとしてね。頭が働かんのよ」
「トモさんは、頭を働かせつづけてきたからそう云われますけど、トモさんがぼーっとするというくらいの調子で、わたしは日常生活をやってるんです」
「あはは、うまいこと云う。そうだ、このあいだいただいたパン、おいしかったですよ」
「まあ、うれしい」

 立ち話のトモさんの手にも、提灯がある。
 ご先祖さま方を家にお招きする。それでも、トモさんはすぐとまたいまの家に戻るから、ご先祖さま方はどうなるのだろう。家に残ってのんびり過ごす魂あり、トモさんにくっついて高齢者住宅を見学する魂もあり、というところだろう。

 わたしの実家にはお盆の風習がなかった。
 盆棚も、きゅうりの馬・茄子の牛も、わたしは熊谷の家で初めて見たのである。若き日の夫が「ぼくには信仰はないけれど、お盆信仰だけはあるかな」と云って笑ったのが、印象深かった。おもしろいな、と思った。
 おもしろいと云えば、母のやり方もそうだ。
 お盆というと、必ずおはぎをつくってくれたが、あとはすまして、ほんとうに何もしなかった。それぞれのやり方でいいのだ、と思う。そんな有りようを母から受けとっていたことを、この夏のお迎え盆のなかで気がついて、「おかあちゃま」と母を呼ぶ。
「おかあちゃまの、そういうところ、好きです」
 机の前の「こころを寄せる場所」のコーナーの前で、「わたし所縁の皆さんも、ご遠慮なくお遊びにおいでください。お待ちしています」と、宣言。父と弟の好きなお酒を盃に注いで、置く。おかずも。
 ふと、お赤飯を炊くことを思いつく。
 辛党のわたしのつくるおはぎより、よさそうだ。もち米がなかったから、うるち米で炊く。

「皆さん、どうかお好きなように。のんびりお過ごしくださいな」


814
 長女の梓から、もらった「隠岐あらめ」。
 彼女が仕事で島根県に通いはじめて、何年になるのだろうか。あらめ、同県の隠岐島(おきのしま)産である。
 黒黒とした、ごつくてつやのあるあなたは……。
「あらめって、何」
 わからないことは、食べもののことでも、法律、SNS系統のことでも、何でも聞くことにしている。「禁・知ったかぶり」が信条。
「島根特産の、海藻。歯ごたえはあるけど、やわらかくておいしいのよ」

 10分間水に浸してから水煮する。
 茹で汁を捨てて、よくよく洗う。
 油で炒め、油揚げ、砂糖、しょうゆほかを加え、水分がなくなるまで煮る。
 皿にもりつけ、胡麻をふるといっそうおいしく召し上がれます。

 袋に記されているとおりに、調理をすすめる。
 そうしてそれなりの煮ものができたけれど……、たとえばこれを隠岐島の母ちゃんたちが食べたら、どう評価されるだろう。
 いつか島根に出かけて、本場の隠岐あらめの煮ものを食べよう。日本じゅうのおいしいもんにこだわって、あれやこれやつくってみよう。
 この夏に生まれた、わたしの目標であります。

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コメント


ふんちゃん皆様こんにちは。

お盆の風習それぞれですよね。

ああなんかスカッとしました。

うちの実家自体にはそもそも
お盆の風習にお墓参りがなく

主人の実家はあります。


なんで私だけお墓参り?と若気の至りのようなことを思っていました。

でも家庭によってそれぞれですよね。


ちなみに今年気づきました。
御先祖に無事に過ごせてます、幸せです、と報告するのがお墓参りなのだと。

いやいはややっと気付くとは汗

そして子供達もそれぞれ思い出ができたようです。
私の嫌いを子供に押し付けない
それを目標にやりました。

あとは言いたいことを言うですね笑

投稿: たまこ | 2023年8月15日 (火) 11時17分

ふみこ先生、みなさま

こんにちは。
ただ今、台風接近中です。
まだ風は吹いてませんが雨は少しづつ強くなっています。
夕方頃、隣町となる兵庫県の町あたりを通るようです。
当地には中国山地から吹き下ろす「広戸風」があり大きな影響がなければよいのですが。

河原で行われる町内の施餓鬼供養はあしたに延期となりました。
わが家の送り火も義父たちにもう1日いてもらって明日にしましょうか。
義父を見送ってからの仏事ですが義母から教えられ、月2回の墓参りに始まりいろいろやることがあります。
わたしも老いるに連れ、時おり簡素化したいと思いますが、家に居られなくても義母の思いを大切にしたいと思っています。
ただ、私たちだけとなったら簡素化して王子たちに引き継ぎたいと夫と話しています。

「よさこい祭り」
8月9日
晴れの中、出発
瀬戸大橋、風が少しあり50キロ制限
夫、ひたすら前を向いて寡黙、時おり橋を抜けるまであと何分とわたしに聞く。
カーナビを見て「あと10分、がんばれ父さん」と声かけ。
おかげで橋から見下ろす瀬戸内の景色をわたしだけ楽しむのも気が引け、一緒にただ前を見る。
晴天の香川県を後に高知道へ
19のトンネルのおかげで雨を感じず高知へ。
高速を下りるともう断続的な大雨!わたしが王子に近づいたせいかしら。
夜には警戒アラートがなるほどの大雨。「明日のよさこいあるかしら」
緊急手術続きで二日間帰ってこなかった王子が夕食に間に合う。
食べ終わる頃、また呼び出し電話。大雨の中また病院へ。その日も帰らず

8月10日
よさこいは雨でもあるということで出発。
高知市内に近づくと曇り空(神がかり的な晴れ男の夫に感謝)
地元の人は多いが台風の影響で観光客は少なく「ひろめ市場」もすぐに座れて昼食。
最近何かをうらやむことがほぼなくなっていたわたしだが久々に踊り人の笑顔と気迫とふるさとの祭りへの誇りに圧倒され、土佐っ子を心からうらやましく思う。
いつの間にやら一緒に体は揺れていた。
私たちが家に着く頃また雨になり夜の部は雨の中の開催となる。
昼間の手術を終えて王子帰宅。お嫁ちゃんに忙しくても下着ぐらい売店で買って着替えなさいと指導を受ける。
8月11日
快晴。稲刈りと田植えの田んぼの並ぶ南国土佐をあとにする。
自分の患者さんは基本毎日声かけすることを信条としている王子は土日祝日も朝病院へ。
今日は子どもと遊ぼうと思っていたがまた緊急手術とお嫁ちゃんへ連絡あり。
王子も40歳を過ぎ母としては体のことも心配ではあるがたのもしくもある。
それを理解してくれる家族に感謝。

せんせい、みなさま
相変わらず、長い文章にお付き合いくださりありがとうございました。
少し風が出てきました。
みなさまも気をつけてお過ごしください。

投稿: 岡山のこんちゃん | 2023年8月15日 (火) 13時46分

たまこ さん

云いたいことを、
やさしく、とろけるように、伝える!ですよ。

(と、自らに言い聞かせつつ)。

投稿: ふみ虫。 | 2023年8月15日 (火) 19時05分

岡山のこんちゃん さん

こんちゃん、

「いつの間にやら一緒に体は揺れていた」
というくだり、素敵素敵、素敵。

うっとりしました。
こんちゃんの夏を、
齧らせていただきました。

どうもありがとうございます。

投稿: ふみ虫。 | 2023年8月15日 (火) 19時08分

ふみこさま


おはようございます。

お母様のこだわり、ふみこさんのこの夏のおいしいものへのこだわりいいですね。

今朝ベランダでは朝顔が30くらい色鮮やかに咲いてました。夫の母,父命日が7月、8月なのでこの時期に朝顔が
ずっと咲いていてくれるようにしたいというのが私のこだわりです。というより自分がそうすることによって
守られているようでほっとします。還暦を迎えた年には
70くらい一度にさいたとき(ちょっと10くらいおおすぎなんですけど~)プレゼントなのだろうなとびっくりしました。ふふ。

その人のこだわりっていろいろでおもしろいですよね。
「え~何でかな~」なんて思うこともその人のこころに
ある大切なものを尊重するゆとりを大切にしたいです。

そういえば暑すぎるせいか今年は朝顔の種やフウセンカズラの実が少ないですね。風に揺れるフウセンカズラの
実を見るのも楽しみなのにな~。
ではふみこさんもみなさんもいい一日おすごしくださいね。

投稿: 真砂 | 2023年8月16日 (水) 06時41分

ふみこさま みなさま

なかなか気候が落ち着きません。
夕べは蒸し暑くて、床に転がってみたりしたくらい。
今は雷雨の真っ最中です。

今朝は雨の中、オットとふたり、朝ごはんを外で食べました。モーニング、というやつです。
うちの近くに、よさそうなお店があると聞いて、最初は1人で偵察がてらお茶に、きょうは傘があっても濡れるかな、くらい降る中をめずらしく大人しくついてきたオット。
ごはん炊きを忘れていたのをお互い相手のせいにしながら帰宅。
掃除や片づけ、家事をそれぞれやりながら話していると、いつのまにかひとりで喋っている、ということもしばしば。こりゃ末期だわ、といいつつ想像とは違う老後ってやつかなあとおもいます。

上の子から、いつもと違う中身の電話があって長話になったのもほとんど初めて、下の子は新しいデイサービスに行くことになりました。

世の中や時代はうつろうけれど、わたしにとっての日常は、この狭くて小さい、大きな目で見ようとしたら捉えられないくらいの場所なんだなとふと考えます。

暑くてたいへんなこの夏が終わったら、ほっとひと息の秋でありたいですね。

投稿: こんぺいとう | 2023年8月18日 (金) 11時05分

こんぺいとう さん

モーニング、いいないいな。

こんぺいとう さんの「日常」のうつろいも、
宇宙的です。

ひとりしゃべりというのは、
案外おもしろくて、
ときどきわたしは、
台所で「コウケンテツごっこ」
テレビの前で「大島育宙ごっこ」
をしています。

投稿: ふみ虫。 | 2023年8月18日 (金) 11時18分

真砂 さん

自分はこだわりがあるほうじゃないと
思いながら、
いくつかの「こだわり風」に関して、
バレませんように、と思っていたりします。

どこかに「過剰」が潜んでいるから、ね。

投稿: ふみ虫。 | 2023年8月18日 (金) 13時49分

ふみこさま。みなさま。
今日はこちらは33.5度です
この真夏の最中に冷蔵庫が壊れてしまい
3日、辛抱してやっと昨日
新しいのが届きました。
あー、よかった!
冷蔵庫のある暮らしに感謝です。
熊谷のふみこさんの家の
ナス馬とキュウリの馬の画像が
なんて、微笑ましくて
ほのぼのとしていることが
足の長さも、ナスのふっくらさ
キュウリはバッタみたいで
やはり、作る人のお人柄が出ていて
何度も眺めました。
家のはサラブレッドのような馬
足は細い竹、10センチくらいの長さ
シッポはネコジャラシの長めを使う
お盆の最終日がにこの馬さんに
数日前に階段で転んだ打撲の痛たい所を
治してねとナス馬でなでました。
お盆が来ると数日、家の中が空気や時間がいつもと変わります。
皆さん、仏さまは台風7号の中を無事にお帰りになりました。

夏になると、にほんこの美しさを感じます。
いつもより、ことばを意識します
迎え火、送り火
浜辺、胡麻の端が咲く
小豆を炊く、軒先によしずなどなど
暑いけれど、お気に入りのことばがたくさんあります
そして、暑くても食べたいのはカレーです。
今日はカレーです。
夏野菜、たっぷりのサラダも一緒に。
もー、冷凍室がきたから安心だ。

夜は虫の音が聞こえます。
暑さも、もう少しの辛抱でしょうか。
みなさまもスタミナをつけて乗り切ってください。

この場をお借りして
岡山のこんちゃんさま
ご自分の患者さまには毎日、声をかける
信条
こんな、お医者ざまがいて下さることを知っただけで胸熱くなります
ありがとうございます
家の王子は唯一、担当の医師が支えになっています

空色のめがねさま
ご心配をありがとうございます
あざはいっぱい
痛いけれど、骨折でなくよかったです
私も森田真生、散歩の偶然は好きです
近いうちに、数学の贈りものもよんでみますね。


投稿: ユリの木の花子 | 2023年8月19日 (土) 15時37分

追伸
冷蔵庫か来たから安心だでした

投稿: ユリの木の花子 | 2023年8月19日 (土) 15時40分

なんと‼︎
いま庭でツクツクボーシが鳴きました!
なんだか感動!単純です。
みなさまにご報告まで。

投稿: こんぺいとう | 2023年8月19日 (土) 18時01分

ふみこさま
日本中のおいしいものを料理するって、楽しそう! 私もやってみたくなりました。
はるくんの夏休みも、25日までとなりました。まだまだ甘えん坊のはるくんと夏休みを一緒に過ごせて楽しかったです。
蒜山からはわい温泉まで旅行したのは、最高の思い出になりました。
ひまわり畑で撮った、はるくんとさっちゃんの写真をスマホの待ち受けにして、るんるんです。
いつまでも暑くて、へこたれそうですが、元気にがんばりまーす!

投稿: こぐま | 2023年8月20日 (日) 17時16分

ふんちゃん

 わたしもお墓参りに行ってきました。
 あっちこっちへ。
 けれど、お盆のなにか……特別なコト……、
 な~んにもしてません(^^;)
 こんにちは~、掃除にやってきましたよ~
 ってくらいな感じのお参りでした。
 もうとにかく、暑くて暑くて……で、
 お墓参りのあとには、
 近くの本屋さんに寄って涼みながら本を眺める、
 と、やっていました。

 今は、岡潔の「日本のこころ」が読めています。
 まだ、そんなに読み進められてはいませんが、
 とてもとても、おもしろいです。
 
 お盆過ぎたら、とたんに涼しくなって、
 さみしくなる……というのが、
 いつもの感覚だったのですが、
 今年は、まだまだ暑いです。
 毎日、きゅうりとトマトを食べて、過ごしています。
 今年のきゅうりは、途中から、肌が荒れてしまうので、
 人にあげることがなかなかしづらく、
 皮をむいては、せっせと漬物にして食べています(^^)。
 5番目ちゃんの言う通り「カッパになっちゃうよ~」です。

 今日から、小学校は2学期。
 これまたいつもなら少し涼しくなっているのに、
 今年は暑いので、登下校がちょっと心配です。
 途中で、溶けちゃいそうだなぁ……と思って……。
 
 わたしも、夏休み気分は、もうおしまい。
 少しずつ仕事に戻っていこうと思います。
 ここのところ、カラダのむくみがひどくて、
 今朝は、少し涼しいうちに散歩してきました。
 久しぶりに近くの大きな公園に行き、
 ちょっとだけはだしになって歩いてきたら、
 と~ってもきもちよかったです!

 ふんちゃんとこのブルーベリーは、小ぶりなのですね。
 ウチのも、だんだん小さいのばかりになってきました。
 暑さで縮こまってしまってるのかなぁ……。

 ふんちゃん、みなさま、
 残暑厳しいですが、どうかお元気で!!

投稿: 空色めがね | 2023年8月21日 (月) 13時50分

ユリの木の花子 さん

再生の夏をお過ごしですね。

いいことがたくさん起こりますよ、
きっとね。きっとね。

投稿: ふみ虫。 | 2023年8月22日 (火) 08時49分

こんぺいとう さん

わお!

わたしも待ってるんですけど。
(頼んでくださいますか?
熊谷でもお願いって)。


投稿: ふみ虫。 | 2023年8月22日 (火) 08時50分

こぐま さん

たのしい夏を過ごされましたね。

子どもたちの夏を支えてくださって、
どうもありがとう!ございますと、
云いたいような。

はるくんとさっちゃんには、
ばあばの夏をたのしくしてくださって、
ありがとうありがとう!って。

投稿: ふみ虫。 | 2023年8月22日 (火) 08時53分

空色めがね さん

学校がはじまる!

みんなみんな、
溶けないように、
おもしろい2学期を過ごしてね。

つまらないことがあっても、
そんな機運はすぐ去るからねー。
うれしいことはきっとあるからねー。

大人の仲よしも、つくってねー。


投稿: ふみ虫。 | 2023年8月22日 (火) 08時56分

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