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2023年10月の投稿

2023年10月31日 (火)

「熊谷 みんなのコロッケ」

1021
 北海道の芽室の友人からじゃがいもが届く。
 箱をあけると、男爵とメイクイーン、どちらも入っていて、眩しい。男爵と決めつけているが男爵系統、メイクイーンと決めつけているがメイクイーン系統の種類ということかもしれない。
 じゃがいもに関してわたしは、じゃがいもと、北海道のじゃがいも、というふうに分けて考えている。
 道産子だからさ、この「区別」を許しておくれ、と思いながら、どうしても分けて考える。

 北海道のじゃがいも。
 芽室の友だちの、じゃがいも便り。

 出合った途端、ごしごし洗って厚めに皮を剥く。
 実はポテトサラダに。皮はチップスに。
 北海道産のじゃがいもを贔屓(ひいき)して、皮のチップスをつくるのが決まり。揚げて、ぱらりと塩を振って食べる。


1030
 10日間、カナダ・バンクーバーから帰省していた三女の栞との最終回の晩ごはん。
 コロッケをつくる。
 芽室のじゃがいもで。

 小学生時代のこのひとと友だちのナッチャンと3人で、コロッケ店遊びをしていたことを思いだした。
 コロッケ屋ごっこ。
 ナッチャンのご両親、近所のひとたちも招いて、コロッケを食べてもらった。
 食べ歩き用に平べったいかたちのもつくったのだったなあ。
「東京 みんなのコロッケ」
 が、当時の屋号。

 と、すると、と思う。
「熊谷 みんなのコロッケ」
 に屋号変更だな、と。

 手間をかけてコロッケをつくったり、栞がバンクーバーに戻る翌日からぎっしり仕事の予定を組んだり。気弱になりそうな自分を、あの手この手で持ち上げている。

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①「熊谷 みんなのコロッケ」でございます。

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②皮は、こんな具合です。
 水気をとって、からりとゆきます。

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\うんたったラジオ27/
熊谷の稲刈りや柿の鈴生り。全員集合と栞さんのおことば。
お便りからの、わたしたちのこのところのこと。岩と対峙する。
かよさんのエッセイ。告知は約束できるからするんですよ、など。

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2023年10月24日 (火)

天使の梯子

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 土間の隅っこにあるわたしの仕事場のあたりに、カメムシがあらわれる。
 あ、また。
 お、ここにも。
 秋になると、越冬場所をもとめて、カメムシたちはなんとはなしに集まるらしい。地域によっては、網戸にびっしり集まると聞くが、ここはそこまでカメムシに人気はない。家のなかでの人気スポットが、わたしの机まわりである、というはなしだ。
 出遇うたび、わたしは手元のメモ用紙を使って、庭に運ぶ。
「臭いのを出さないでね、ね」
 カメムシのやっかいなのは、刺激すると、臭い液体を出して反撃するところだ。いまのところ、攻撃されずにすんでいる。
 カメムシはメモ用紙のなかからもぞもぞと這いだして、飛んでゆく。


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 ことしは、柿が豊作。
 庭に2本、畑の端に2本柿の木があって、どの木もたわわに実をつけている。
 袋に柿を5つ入れて、JAの直売所に出すことにする。直売所と販売契約を結んでいるから作物はなんでもならべてもらえる。ただし、売れなければ、戻されるし、柿のように短い期間に収穫が集中する作物には、競争が生じる。
 値段を安く設定するほか、シールに手描きで、柿が「富有柿」(果肉がやわらかく、糖度もあることから、柿の王様と呼ばれる)であることを表示することにした。

 夫のスマホにJAから売上状況の通知が入る。
「きょう出した20袋のうち、15袋売れた」


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 なんといううつくしい空だろう。
 澄んで、どこまでも高い。

 そうして雲。

 どこへ行っても、わたしは雲ばかり見ている。

 きょうの夕方は、「天の梯子(はしご)」を見た。
 雲の切れ間から放射線状に地上に太陽の光が射して、梯子のように見えるところからこの呼び名が生まれたという(気象現象としては「薄明光線」)。

 これを佳き兆しと受けとめることとする。

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手描きシール。
えへへ。

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2023年10月17日 (火)

俺たちの明日!

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 週に一度、東京に出かける。
 熊谷駅から、湘南新宿ライン、上野東京ラインに乗ると、1時間ほどで新宿駅、東京駅に着く。グリーン車を奮発(平日は1,000円、土日祝日は800円)。仕事をしたり本を読んだり、眠ったりするひとときは、日常のなかの「切り抜き」だ。
 きょうは、ふと思いついて、最近おぼえた英単語をスマホに打ちこんでみた。
「切り抜き学習」
 朝の便だったから混んできて、途中、2人がけの席のとなりに70歳代(たぶん)男性(たぶん)がすべりこんできた。
 英単語を打ちこみながら、わたしは呪文のようにぶつぶつ声を出していたらしく、怖がらせてしまったかな、おとなりさんは上尾駅で別の席に移っていった。

 おおっ、赤羽駅に到着。
 この駅の発車メロディは、わたしをはずませる。
 池袋、新宿方面(上り)は「俺たちの明日」、高崎方面(下り)は「今宵の月のように」。どちらもエレファントカシマシの楽曲である。
 エレファントカシマシのメンバーのうち3人(宮本浩次も)が赤羽の旧赤羽台中学の同級生であるという縁で、選ばれている(2018年〜)。
 行きは「東京でがんばってな」と背中を押され、帰りは「よくやった」と抱きとめられる。
 こういう合図みたいなたのしみを、いろいろ持っているのですよ、わたし。


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 新宿の教室での、講座の日。
 ホワイトボードを背に教壇に立つと、机に黒く動くものがある。ちっちゃなちっちゃな、それは、地蜘蛛の子どもだ。
 うちからついてきてくれたのかなあ。
 もしそうだとすると、蜘蛛の移動距離としては記録的なキロ数となるのではないか。65キロくらい?
 新宿在住の地蜘蛛だったとしても、出逢えたことをよろこびたい。


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 金木犀の花、香る。
 うちの庭のものではない。
 おとなりの家からの香りである。秋はこうして金木犀の花の香りが運ばれ、春には桜が見える。ありがたい借景ということになる。

 おとなりとの間には塀がある。
 役所には、そして、区画としてそれぞれの家の境界線が記録されているのだが、わたしのなかで、境界線、国境、県境……、つまりborderの感覚がどんどん、どんどん薄くなっている。
 たとえ、どんなboundary lineがあったとしても、それは縄張りくらいのことではないのか。この星(地球)の上に住んでいる人類というお互い。それがもっとも大事な意識だと思える。

 隣家から漂ってくる金木犀の香りを吸いこみながら、ものを思わされている。

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刈り取った稲株から伸びる「ひこばえ」。
田んぼは生きている、循環している。
11月中旬、この田んぼに麦を蒔きます。

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2023年10月10日 (火)

カエルー!

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 さあ稲刈り最終日。
 昨年夫とふたりで2日のうちに刈りとったのだったが、ことしは、結局4日かかることとなる。
 それというのも、雨のせいだ。
「夏のあいだ、ちっとも降らなかったのにさ」と毒づきそうになるこころを抑えるつもりでいても、つい、「オマエさんのせいだ」と決めつけるわたしだ。
 6反ある田んぼのうちの半分は、水路に面しているため、たとえ雨が降っても、堰板(せきいた)を開けたり閉めたりすることによって、水の調節が効く。ところが残りの半分は、水路に面していないから水の調節が効かず、雨水がたまると排出できない……。
 夫を手伝うかたちで田の仕事をするなか、稲作の鍵は「用水」が握ると考えるようになった。
 地方に出かけて、米作を営むひとと会って話すとき、用水のはなしをすると、突如として農業仲間に加えてもらえる。用水を奪い合う、用水の番をする、という歴史から聞かされることになる。

 ところで、稲刈りのはなしだ。
 刈るとなったら、田んぼは乾かさなければならない。
 うちの田んぼの半分は、水路がないのに等しいため、雨に降られると稲刈りができなくなる。できたとしても、どろどろの田のなかで作業がむずかしくなってゆく。

 前の日にやってきた長女梓が助っ人となってくれ、3人で刈ってゆく。コンバインを操る夫、稲を起こしたり、手刈りをする梓とわたし。
 昨年はコンバインのうしろをついて、ひとりで腰をかがめ手刈りしていたから、わたしは倒れた稲に「しっかりしっかり」と声をかけたり、コンバインに追われて逃げ惑うカエルに話しかけたりしていたのだったなあ。
 ことにカエルに向かって「カエルー」と語尾を伸ばして叫ぶことで、自らを励ましていた。ことしは、ヒトの助っ人がいてくれるおかげで、余裕がある。ひとりだと、うしろをついて作業しているうち、気がつくと、コンバインに追われるかたちとなっている。
 ひとりではないから、水はけのよくない田んぼで泥まみれになることさえ、愉快だ。

「顔に、泥ついてるよー」
「水分補給、水分補給」

 本日夕方、稲刈りを終えた。
 総出荷量3,100Kg
 これを3,tと呼びかえると、それを告げた相手が「え、t(トン)!」と驚いてくれる。
 ところであの無数のカエルたちはどこにゆくのだろうかなあ。
 カエルー!


106
『動物会議』を読んでいる。
 エーリッヒ・ケストナー。
 そのひとの話題になると、「あ、ケストナーね」と誰もが云い、『飛ぶ教室』『エーミールと探偵たち』『ふたりのロッテ』『点子ちゃんとアントン』そして『動物会議』といった書名をあげる流れとなる。
 が、ちょっと疑わしいぞ、とわたしは思うのだ。
 内容について語りあう機会は滅法少ない。書名を云えるくらいだから、読んでいない、ということはないだろうけれど、一度読んで、書名を記憶に刻むものの、そのじつ頼りない読書であったため、「あ、ケストナーね」となるのにとどまるのではないか。
 かくいうわたしも、そのひとり。
『動物会議』を読みながら、自分はいったい、いつこれを読んだのだろうか。ほんとうに読んだの? という疑いを抱いている。

 ケストナーは、それはそれは恐ろしい時代を生きた作家だ。
 ヒトラー率いるナチスの支配によって、自由主義者であるケストナーの詩集や小説『ファビアン』が公衆の面前で焼かれたり、危ういところで捕らえられそうになったり。ぎりぎりまでドイツにとどまるも、ソ連軍によるベルリン市街戦に及んでベルリンを脱出し、オーストリアのチロールに逃れて、その地で終戦をむかえている。
 しかし、ケストナーは絶望しなかった。
 常によりよくなってゆくことを信じ、創作をつづけたのだ。あらためて、いまケストナーを語るとして……、子どもを愛し、子どもを未来そのものと位置づけて活動したひと、と書いておきたい。


109
 ぼーっとしていたのだろう。
 麩とみつばの卵とじをつくろうとして、火を入れ過ぎる。……あらま。しかも、なんだか、味つけも濃くなった。……あらま。
 困ったなあ。
 ふと思いついて、フードプロセッサーにこれを入れて、ガーッとやり、豚ひき肉を加えて、こねてこねて、まるめて、焼くこととする。ハンバーグである。和風ハンバーグにしようと思いかけたが、ソースと粒がらしの風味に助けてもらったほうがよさそうだと、判断する。
 これがなかなか、美味しいハンバーグになったのですよ。

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2023年10月 3日 (火)

「転がりましたー」

9月27
 シェフをしているターケくんとお寿司を食べにゆく。
 東京・板橋にあるこの古い店で、ならんで寿司を食べたいという理由のほかに、相談したいことがあった。
 長く使ったオーブンレンジがいけなくなって、とうとうあたらしいのを買わなければならなくなったのである。オーブンと、電子レンジの合体型(=オーブンレンジ)ではなく、それぞれ別のものをそろえる、というのだけ決めて、電子レンジは自分で選んで、すでに買った。
 しかし、オーブンを選びきれないでいる。
 ぐずぐずしていると、クリスマスのチキン(お腹にガーリックライスを詰める)も焼けないし、アップルパイも食べられない。
「ターケ君、どんなオーブンを買ったらいいかしら」
「うーん、家庭用のオーブンを買ったことがないから、わからないな。……だけど」
「……だけど?」
「なんでもいいです。どんなものを選んだとしても、なんだって作れます」
 そうだ。
 ターケくんは、友だちの家でも野外でも、いつも工夫して料理する。わたしの還暦の誕生日祝いに、うちにきて、ごちそうをつくってくれたのだったなあ。

「どんなものを選んだとしても、なんだって作れます」
 は、わたしのこころを、ぱああっと明るくした。
 こういうことだから、わたしはターケくんを好きなのよ、というのもそうだが、何だってそうじゃないか! と気がつかせてもらって、はずむ。


9月28
 暑さがだんだんやわらいできて、今朝は北風も吹いた。
 それでも「アツイ」が口癖になっていて、つい「アツイ」「アツイアツイ」と云っている。
 同じ口癖にするなら、「アリガトウネ」「ナントカナル、ナントカナル」というようなのがいいなあ。
 それに、ひと月もすれば「サムイサムイ」が口癖になっていそうで、われながら恥ずかしい。


930
 おお、かゆい。
 こりゃ、「痛い」に近いかゆさだな。

 あわてて、蚊取り線香に火をつける。
「秋の蚊には注意!」
 そう亡きちちが、おしえてくれたのだ。
「夏の蚊とはパワーがちがうんよ。刺されたときのかゆさも、倍増するんだ」

 パワーアップした蚊があらわれると身構えるが、そのたび、「おとうちゃん、秋の蚊が出ましたよー」とわたしは小さく叫ぶのだ。


10月2日
 残り半分の稲刈りの朝。身支度をして、座敷から土間に降りようとしたとき、三和土の台を踏みはずした。

 あ“―。

 そのまま土間に転がる。
 あまりに見事な転がりようだったから、大声で夫を呼ぶ。
「転がりましたー」
「何してるの。いいから早く起き上がりなさいよ」

 転がったことが、どうしてこんなに可笑しいのか。
 転がったことが、どうして「吉兆」と思えるのか。
 あはは、あはははははは。

20231001blog
あ“―。

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