3月30日
卒業した自由学園の「クラス委員」を、行きがかり上3年間務めた。
卒業後の「クラス委員」にも伝統があり、規模は小さいがその分密度が濃くなるのだろう、それなりの役割が待ち受けている。
そも「クラス委員」を引き受けたのも行きがかりだったのだが、引き受けてみて実感したのは、この任務には、これまで自分が避けていた・逃げていた・目をつぶっていた、そんな要素が込められていることだった。
・卒業した学校への感謝不足。
・事務作業への不安——ことに数的作業(経理)。
を突きつけられた。
引き受けた数週間後、熊谷暮らしを突発的に決め、半年後、東京から88キロ離れることになり(地方在住の卒業生には、委員の義務がなくなるのですよ)、そのあたりにも運命的な試練が用意されていたようだった。
3年間務めることになったのには、役割に変革があって落ち着いてからでないと、とてもではないが引き継げなかったからでもあるけれど、ほんとうのところ、学友との交際が乏しかったからだった。
あ、乏しかったのにちがいがないが幾たりかはあった気心知れる友は、すでに近年同じ役目を果たしたか、海外に居住している……。
しかし、本日、ついに、とうとう、やっとのことで、引き継ぎをすることができた。
結局気心知れる友2人に、一肌脱いでもらった。
久しぶりに、サラダを羊みたいに喰み、パスタをくるくるし、珈琲とデザートを勝手にシェアしながら過ごした2時間は、3年間の重荷に見合うどころか、それ以上のひとときだった。
「ね、あれ憶えてる? ……」
「憶えてるよ」
の、連続。
忘れるはず、ないじゃん。
4月4日
二女の梢の家に泊めてもらい、朝から歩きまわる。
①ロイヤルホストのモーニング。
わたしの両親は、帝国ホテル贔屓(びいき)だった。
庶民であったのにちがいないのだけれども、帝国ホテルを愛していて、何かというと、帝国ホテルだったのである。
昔のひとには、そんなところがある。
母が、小声で「ここのパンケーキは、帝国ホテルに負けず劣らず美味しいのよ」と評したファミリーレストラン・ロイヤルホストのパンケーキ。
そんなことを思いだして久しぶりにロイヤルホストの客となり、パンケーキを注文。
「あ、モーニングのパンをパンケーキに換えられる!」
「オムレツにしよう」
と、ふたりではしゃぐ。
②神田明神のお礼参り中央線の車内で、梢が無言でわたしの腕をつかむ。
「……何?」
「古いお札を、持ってくるのを忘れた!」
昨年、梢は後厄だというので昇殿してお参りしたのだった。
「あらま。でも、近くまた行けるということよ」
③カーチェイス!
神田明神をあとにしたわたしたちは、湯島天神へ。
途中、ふたり乗りのバイクを追いかける2人組白バイに遭遇。
不謹慎まるだしで興奮する。
初め見たな、カーチェイス。
「あまりひとに云いたくなくて、あなたにも云ってなかったけど、どうも山本さんちは菅原道真の子孫らしいのよ。ほら、この裏梅鉢の家紋、うちのと同じでしょう?」
湯島天神に近づく道の上で、そっとわたしは告げる。
「それは偶然の一致じゃないの? 菅原さんとは別のウラウメバチなのじゃない?」
「……そだね」
その後、あちらこちら歩きまわって(27,000歩)、さいごはスーパー銭湯の湯船に浸かる。岩盤浴で芯からあたたまって、買いだしをして帰る。
お惣菜を選び、家で盛り上がる。
4月5日
「ここ、どこだろう」
そうだった、梢の家。
ときどき自分の家でも、こんなふうな思いが湧くが、それはなぜか。居場所が、わたしのなかで固定化されていないのかもしれない。
どこででも、眠れる。
枕が変わっても、草の上でも。寝ろと云われたら高速道路の中央分離帯でも、まるまって眠ると思う(してはだめだということは、知っています)。
①朝の映画鑑賞。
身支度をしながら何か観ようと、テレビをつける。
ディズニーチャンネルで「ソウルフル・ワールド」(Disney & PIXAR)を選ぶ。たしかこの春、「私ときどきレッサーパンダ」「あの夏のルカ」とともに劇場公開することになっている作品。
「ソウルフル・ワールド」は観たことがなかった。
イレギュラーな公開は、おそらくコロナ禍の影響を受けてのことだろう。ニューヨークでジャズ・ミュージシャンを夢見る音楽教師ジョーが主人公。思いもかけず、かぶりつきで堪能した。
②コミュニティ・センター
朝からてくてく。
娘たちのなかにもわたしのなかにも、「ごはん」と「歩く」があり、それに支えられてきたんだな、と思いながらしみじみ歩く。
家からほど近い「コミュニティ・センター」を見学。
図書室、視聴覚室、喫茶室、体育館がある。
「あ、浴室。60歳以上のひとが利用できるんだって」
「屋上にプールもあるよー。夏、泳ごうかな」
ロビーの棚に「特別養子縁組制度」と「里親制度」のリーフレットをみつける。この制度にとてもとても関心がある。ここであらためて出合わせてもらった。子どもをこの世に生みだす通り道の役割が親ということなら、そこに血縁以外の選択肢があるのはあたりまえだと思いたい。
③ランチバイキング
てくてく隣町まで歩き、ランチバイキング。
「バイキング・ビュッフェ」をいかにスマートにたのしむか、を近年ふたりで研究している。
野菜がたくさん食べられるのが、何よりうれしい。
遊びもある。
スープカッブにあらかじめオニオン(みじん切り/ほんとうはタコス用)やチーズを入れてから熱いスープを注ぐとか、デザートを工夫してきれいに盛りつけるとか。
夕方4時に解散。
2日間のてくてくは、小旅行のようだった。
4月7日
「かえるの初鳴き」
と、夫がつぶやくように云う。
「おめでとう」
そう云うのがふさわしいような気がして、云う。
二十四節気 七十二候では「立夏」の初候 5月5日−9日ごろが「鼃始鳴」(かわずはじめてなく)である。
かえるさん、ことしも元気で。
遠慮しないでいっぱい鳴いてくださいな。
どうぞよろしく。
梢さんの絵にダンボールで
額縁をつけました。
こんなところ、
ちょっぴり凝ってます。
〈公式HP〉
https://www.fumimushi.com/
〈公式ブログ〉
http://fumimushi.cocolog-nifty.com/fumimushi/
〈公式Instagram〉
https://instagram.com/y_fumimushi
最近のコメント