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2024年5月14日 (火)

神事

5月9日
 とうとうはじまった。
 これが農繁期だと、気配でわかる。
 水に浸された種籾。積まれた稲用の培養土の袋。同じ大きさに切られた古新聞紙(これは苗箱の底に敷く)。
 そこから立ち上がる気配でもあるが、何より土がさわがしい。稲用にもとめた土も、田畑の土(いまは麦の海がひろがっている)も、庭の土も、あたりの土がみんな。さわがしいなどと云えば、土には文句もあろうから、ささやきとかさえずりと書きたいところではあるけれど、それでは足りない。もっとつよく迫ってくる。

 きょうは昼から土入れ。
 苗箱に土をすくって入れる作業。
 朝のうちに、この1週間水のなかで出番を待っていた種籾が筵(むしろ)の上にひろげられ、日を浴びている。
 長屋門の屋根の下が、作業場となる。
 まわりには苗箱が積んである。ことし、田んぼの面積が昨年までの倍となるから、箱も倍の220箱。とうとう稲作ができなくなったご近所さんから田んぼを借りたのである。
 そんなことを決めるとき、夫はわたしに相談しない。
 そのたびに「また、相談もなしに……」と目を三角にしてわたしは云ってみるのだが、ほんとうのところは相談されたって、困る。

 たぶん、決まったことなのだ。

 たぶん、決まったことなのだ。

 夕方萌がやってきて、土入れ本格的にはじまる。
 夫の2番目の娘である萌は、いつも田植えの準備のところを担ってくれる。萌がくると、土がひととき黙リ、伝令が波のように空気を揺らす。
「ア、モエガキタ、キタキタ」
「ハジマルハジマル、ハジマル」


5月10
 朝、納屋から、手動種籾まき+土かけ機を出して、門の下にならべて置く。
 古い古い機器。何をどうしているかがよくわかるから、鉄の塊ではあるが、仲間感があって、つい話しかけたくなって、「あなたたち、よろしく頼みますね」なんてことを云いながら、肩のあたりをぽんぽんとやる。

 昨日土入れが済んだ苗箱へ、種籾をまいて、そこへ薄く土をかける。中腰の作業だが、萌は「スクワット、スクワット」なんて笑う。また、土がざわっとする。
「スクワット、スクワット」

 わたしは午前中原稿1本書き、オンラインの打ち合わせ。

 黙ってそれぞれの務めを果たすのだ。

 黙ってそれぞれの務めを果たすのだ。

 午後は庭仕事。種籾まきが神事(しんじ)だとすると、わたしの作業は祭りの踊りみたいなものかもしれないなと思って、はずむ。

 夜、神事を司ったふたりに、ねぎま汁とまぐろの刺身を供す。
 久しぶりにねぎま汁をつくった。
 ねぎとまぐろ(さかな屋さんが、これでつくったらおいしいよと、選んで切ってくれた中落ち)をそれぞれ焼いて、汁にする。これがどうしたものか、美味しくできて、本日いちばんの役目を果たせたわたしは、安堵する。

Photo_20240514113501  
手動種籾まき+土かけ機

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「日記」カテゴリの記事

コメント

ふんちゃん皆様こんにちは。

お疲れ様です。

自然に携わることはご苦労も多いことだと思いますが、神々しいことですね。

ちなみに長男も今年から学校で
田植えスタート昔からの伝統行事です。

料理番長のようなふんちゃん

それはきっと心もお腹も満たします

投稿: たまこ | 2024年5月14日 (火) 12時03分

ふみこ先生、みなさま

こんにちは。
お疲れさまです。
「土がさわがしい」その気配なんだかわかります。
こちらは謎の生き物の穴掘り騒動が少し落ち着きました。
キャベツに網を張り、夏野菜には黒マルチで土をおおい、棒と米袋の行燈仕立ての囲いで
苗をかこみ、草置き場にしていた畑の草を始末し、謎の生き物へその場所を提供することにしました。
するとこの二日間やってきた気配がありません。

最近の寒暖差に服の調節がうまくいかず朝の厚着の服のまま草抜き(何度もこれで失敗しているのに)
をしてしまい、ひさしぶりに目がまわり二日ほどダウンでした。
わたしもベッドの中で安住さんの「日曜天国」のおもしろまとめ編を聴きながら元気をとり戻し
ました。

最近、しばらく忘れていた人とくらべるという感情が時々おき、そんな自分にモヤモヤしてます。
これじゃいかん、いかんと思ってある女流俳人のエッセイを読み直しました。
「自分の無力を意識しながら、書けば書くほど自身の平凡が見えてきて、それを嘆きながら、
でもこれからも書くだろう」
老後を少しでも豊かに過ごしたいと始めた俳句とエッセイ、こんちゃんらしく学んでいくことですね。

ふみこ先生
お忙しいのはわかっておりますが睡眠はしっかりとってくださいね。
睡眠不足も熱中症につながりますよ

みなさま
わたしも五十代は、日々いろいろなことが起き目まぐるしく過ぎて行き、疲れに目を背けて
がんばりました。
そのつけが七十代の今きています。どうぞ体を休めながらがんばってくださいね。

投稿: 岡山のこんちゃん | 2024年5月14日 (火) 16時15分

ふんちゃんへ

はじまったのですね。
田植えまでの色々な準備があることも、知りませんでした。
熊谷での農業のお話、私にとって未知の世界…でした。
教えていただき
ありがとうございます。
倍の田んぼ…
220箱…
「たぶん、決まったことなのだ」と受け入れる逞しさ…。
パチパチ!!(拍手です)

明後日から娘のところへ行きます。
サラっと気軽に出掛けたい…そう思っていても、なかなか実現できずにいました。
初めての神戸空港。久しぶりの1人旅。
淡路島はどんなところかな…。
平日は家でリモートワークしてるので、邪魔にならないようにします。

この場をお借りして…
空色めがねさんへ
北海道はたのしめましたよ♪
札幌4年目になる息子との晩ごはんが何より楽しかったかな…。
函館山も30年以上振りでしたが、何度見てもいいですね。
そちらはそろそろライラックの頃ですかね?

投稿: ハチミツ | 2024年5月14日 (火) 16時48分

たまこ さん

子どもたちが、田植えほか、
土仕事にかかわれるのは、
ほんとうに大事なことですね。

どろんこの王子さんを、
想像するだけで、うれしくなります。

投稿: ふみ虫。 | 2024年5月14日 (火) 22時32分

岡山のこんちゃん さん

ご心配どうもありがとうございます。

のんきにやっております。
眠っています。
遊んでいます。

なまけています。

笑っています。

こんちゃんも、佳い日日を。

投稿: ふみ虫。 | 2024年5月14日 (火) 22時35分

ハチミツ さん

淡路島のお嬢さまのおはなし、
きっときっと聞かせてくださいね。

子どものころ、夏ごとに
淡路島に海水浴に行っていました。
なつかしいのです。
また、訪ねてみたいです。

投稿: ふみ虫。 | 2024年5月14日 (火) 22時37分

ふみこさま


おはようございます。

田植えの前の準備の神事おつかれさまでした~。
そういえば5月中旬に行われる三社祭なども
この夏祭りというのはやはり豊作を祈るいみも
あるのでしょうね。ふみこさんのねぎま汁おいしそうですね~。みなさんのほっとした笑顔がうかびました~。

みんなで力をあわせてというのはいいですね。
この時期5月はじめから娘の誕生日に父の命日と甥っ子の
息子の誕生日がごっちゃになっていつもわいわいできる
のがうれしいです。(すみません。こちらはただ食べたり
飲んだりするだけですが。。ふふ)(あ~~その前に私たち二人の誕生日のあるのにな~わすれられてるな~。)

この新緑の空ににぎやかな音がひびくと何かにまもられているような感じがします。中庭を歩くと緑のトンネルが日増しにこくなって迫力あります。薄暗いところなんかは「ここはどこ?」なんてね。
ではふみこさんもみなさんも今日もいい一日おすごしくださいね。

投稿: 真砂 | 2024年5月15日 (水) 06時54分

ふみさま~~みなさま~~こんばんは~~~

ようやっとようやっとこの広場に来れました!!

なんだろ?今年は

軽やかに旅ができる自分になる

がめあてであったはずなのに、どっこもいけないままゴールデンウイークもとっくに終わっちゃいました。(笑)
 
そしてふみさまに
「ゆっくりしなさいよ~やすみなさいよ~」

と言葉をかけていただいておりましたのに、予想通りといえばそなのですが(;^_^Aバタバタとすごしておりました。
ゴールデンウイークに入ったとたん、親友のお母さまが急逝されご葬儀に参列させていただいり、自宅マンションのキッチンの床がなんとも汚てしまっていたのでだんなさんと床材を購入して張り替えていたり、娘たちが帰省してきたのでそれは乾杯しなけりゃいけないと結構頑張ってお料理したり、無事にのり切ったあと先週はなんと39年ぶりの高校の同窓会がありまして、本当は私の高校は卒業してから35年たつと開催される同窓会なのですが、コロナ禍になってしまったのもあり、4年分の卒業生たちが任意に出席できる会で久しぶりすぎる顔ぶれに懐かしさをかみしめて参りました。

どんどこどんどこ季節はながれていけますね。
私の空き家実家も草が草が、モリモリです・・・。負けないぞ~~

そしてふみさまもまさに神事、真っただ中でしたね。萌さまはじめみなさまにおつかれさまでしたと千葉からエールを送ります!!

先ほど夕飯をつくりながら最新のうんたったを聴きました。梓さん、お元気になられてよかった。\(^o^)/春はなかなか難しい季節です。焦らずゆっくりです。
あさっては、だんなさんと私と長女ペア、二女ペアといつのも6人衆で空き家実家でバーべキューしてきます。なるべく虫さんたちのおじゃまにならないようにでもこの6人も森の仲間にいれてもらえたらいいなあ~と
ふみさまのカメムシの恩返しの話を聞きながらクスクスわらいつつキャベツを切ってました。

春がくると灼熱の夏が待ってます。少しそれまで小休止。梅雨がありがたいなんてこれだけて生きてきてようやく思えるようになったかな(* ´艸`)クスクス
梅雨の間にゆっくり静かに過ごす日をちょっと心待ちにしています。ふみさまたちもね。

チューリップの球根がようやく掘り返せそうになるまで植木鉢で熟成できたのでいよいよスカーレットの子孫たちを今年も撒きますよ~~~

投稿: おきょうさん | 2024年5月17日 (金) 21時22分

ふみこさま、皆さま

長屋門の下、220箱の種もみ撒きは無事に終了されたでしょうか。

高く積み上げられた苗箱、赤い種籾撒き機と土かけ機、横のハンドルをぐるぐる回すのでしょうか・・・ちょっと触って使ってみたくなるような温かみのある機械ですね。


倍の220箱の作業、皆さんそれぞれの持ち場でやるべきことをやってらっしゃる様子に背筋が伸びます!ふみこさんのねぎま汁も最高ですね!


土のざわめきに続いてそのうち稲の赤ちゃんのおしゃべりも聞こえてくるのでしょう。
にぎやかな季節到来ですね。

こちらは3年半かかって初めてコチョウランの花が咲きました!

父の満中陰のお供えにいただいた鉢でしたが、花が終わったあとはそれきりで、去年はつぼみはついたものの開かずじまいでした。家の中で一番暖かい部屋の窓際に引っ越しして1年・・・薄暗い部屋に浮かび上がる白い花を見つけたときはぽかーんとしました。つぼみが順番に開いていくのを見れるのがしばらく楽しみです。

息子たちがそれぞれの場所で暮らすようになってから、さらに生き物の気配に喜びを感じるようになりました。

先週末、いとこの結婚式で3日間だけ帰省していた息子たちが嵐のように帰っていきました。
そして20歳になったエゾ息子(次男)は・・・酒豪になっておりました!
車の運転があるため飲めない私とギフ息子(長男)の分も合わせて、3人分のワインをうまそうに飲んでおりました。高校では陸を走っていましたが、今は水の上を・・・漕艇部で朝5時から乗艇する毎日だそうです。乗艇できる期間が限られる北国ならではの朝練なのかもしれません。ハチミツさんがおっしゃるように北海道は今はライラックの季節だそうですね。一度見て香りをかいでみたいものです。

皆さま、今週も佳き日々をお過ごしください。


投稿: 円 | 2024年5月19日 (日) 18時48分

真砂 さん

真砂さんと、 真砂さんのまわりの皆さん、
お誕生日ほか、おめでとうございます!

さらなる光が、射しますように。

投稿: ふみ虫。 | 2024年5月19日 (日) 21時19分

おきょうさん さん

ああ、おきょうさんさんのおたより、
元気が出ましたー。

それにそれに、スカーレット!
おお、わが友よー。

投稿: ふみ虫。 | 2024年5月19日 (日) 21時34分

円 さん

いつか、ギフ王子さま、エゾ王子さまと
呑みたいですねー。

なんて、夢みたいなことをね。
たのしい日日が、まぶしくて、つい。

うちの庭の3本のライラックの花は、
さかりを過ぎました。

投稿: ふみ虫。 | 2024年5月19日 (日) 21時40分

ふみこさん おはようございます。

田植えの準備のお話を聞いていると
子どもの頃の 
両親の姿が浮かんできました。

道北で 兼業農家をしていた両親。
父は 仕事に行く前と帰ってきてから、
休みの日が 田んぼ仕事でした。
改めて 大変だっただろうな・・と、思います。

農作業には馬が必要で
何処からか 借りてきた馬が
休憩時間にカボチャを豪快にボリボリ食べる音を
聞くのが好きでした。

ふみこさん 
エゾハルゼミがにぎやかに鳴き始めました。
初夏になりました。 

投稿: えぞももんが | 2024年5月20日 (月) 08時16分

ふみこさま。みなさま。
雨があがり、青空が広がりました。
農繁期、田植えの季節!
私まで、そわそわしてきます。
嫁いできてから数年、田植えをしていました。
義父は田植えの準備に目の前の海から
塩水をくんできて、もみをつけていました。
田植えの日には親戚のおばさんや 
近所の人が手伝いに来てくれて
義母は早朝から
お手伝いの人への食事作りの支度
何故か田植えとなると、クチナシで
炊く黄色の黄飯のおにぎり
フキの煮たもの、煮豆、たくあん
大きな、やかん。ポット。
玄関の土間近くの神棚には苗を飾りました。
田んぼには1日中、朗らかな笑い声が
会話がして、嫁いだ私はわからないだらけの体験でした。

新米を収穫すると
お金は沢山なくても、1年中、不自由なく食べられるお米があると思うと
これだけで、生き抜いていけると思ったりしました。

あの、当時のおばちゃんもおじちゃんも
今は誰もいなくなり
あの日の田植えの話しをしてもわかりあえる人もいなくなりました
でも、よい経験をさせてもらったと実感してます。

ふみこさんの家の前の田んぼに
水が流れ、小さな稲の苗が風にゆれ
清々しい景色を想像してます。
お近くなら、
お昼ごはんに干物を焼いて
黄飯のおにぎりでも、ご飯にしてーと
届けられるのになぁ。

田植え!
佳き日をお過ごし下さい。


投稿: ユリの木の花子 | 2024年5月20日 (月) 11時46分

えぞももんが さん

お父さまもお母さまも、
お忙しかったことと思います。

けれど、お百姓の仕事は、自然相手です。
お勤めの重荷や、辛さを
土は……、日差しは……、
虫たち、両生類たち、鳥たちは……。

ここ熊谷は、馬ではなくて、
牛が農業を手伝ってくれたそうです。
こうしてわたしが、パチパチパソコンの
キーボードを叩いているここは、
2頭目の牛の居場所でした。

わたしはだから、現代の「牛」なのです。
牛ほど働けていませんけれども。

投稿: ふみ虫。 | 2024年5月20日 (月) 18時48分

ユリの木の花子 さん

待って待って。

まだ田んぼは麦畑です。
麦を刈らないと、
田植えはできないのですよ。

たのしみです。

麦が、茶色く色づいてきました。

投稿: ふみ虫。 | 2024年5月20日 (月) 18時50分

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